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27 さすコン

 次の日の朝、愛衣と2人で家を出た。

 いつもはオレの家からだが、今日からは当分の間、愛衣の家からになる。


 早く元の生活に戻りたい。


「今日の夜は何を作ろうか?」

「オレも手伝わなきゃならないしなぁ。正直簡単なものの方が助かるかな」

「簡単なものかぁ」


 今日の晩飯のことや1週間の家事の当番のことなどを話しながら歩いていたら、思ったよりも早く学校に着いた。


 校門に入った瞬間にクラスメイトを発見する。


 無駄にデカい声で自分の存在をアピールしながら肩で風を切るように校舎へ向かっている。

 簡単に言うと彼、〈門倉義彦かどくらよしひこ〉はこの時代でも絶滅危惧種になっている不良なのだ。

 いや、正確に言うと不良ぶってるだけなのだが。


 なんか実家が結構いいところらしく、あんまりガチなことはできないらしい。

 やってることと言えば気が弱そうなやつを大声で馬鹿にするぐらいだ。


 しかも取り巻き数人で囲んだうえで。


 小物オブ小物って感じで、実に可愛い……もとい、面白いヤツだと個人的には思っている。

 話したことはないけど、遠巻きに見てる分には最高に楽しいヤツだと思う。


「おい、阿久津!!昨日のあれはどういうことだ!!」


 いきなり後ろから怒鳴られる。

 朝からうるさいな。


「昨日のあれってなんだよ。というか朝からテンション高過ぎだろ、オールでもしてたのかコンチ」


 そこで叫んでいたのはコンチだった。


「ああ、そうだよ!!お前に対する嫉妬で全く眠れなかったんだよ!!」

「本当にオールしてたんだ……」

 

 愛衣がドン引きしてる。

 そこへまた1人クラスメイトが通りかかった。


「おはよう、常盤さん。それに阿久津君も。それと……コンチはなんで怖い顔しながら泣いてるんだ?」


 現れたのはザ・イケメンこと〈禅院皆人ぜんいんみなと〉だ。


 学年どころか学校一、いやこの地域一のイケメンだ。

 そのうえ性格も成績も運動神経すら良いという、まさに完璧超人だ。


 そんな完璧超人でも今のコンチにはドン引きしている。


 そりゃそうだ。


 憤怒の表情、目のしたには隈、そして大量の涙を流しているのだ。


 こんなの見たら普通にドン引きだろう。


「で?コンチはなんでオレに嫉妬してるんだ?愛衣と出かけていたことが原因か?そんなの今更だろ?」


 そう、中学からの付き合いのコンチなら、オレがほぼ毎日愛衣と一緒にいることなんて知ってて当然だし、土日に一緒に出かけていたところに偶然会うなんてことも初めてではない。


 ってことは別のことか?


 心当たりが無さ過ぎる。


「愛衣ちゃんと出かけていたことじゃない。いや、それもそれでむかつくし羨ましいけど、そうじゃない!」

「また2人で出かけてたの?ホント仲いいね。ちなみにどこ行ってたの?」

「映画とショッピングだな。映画はともかくショッピングの方は大変だったよ。買うまでが長くてさ」

「試着とかしちゃうと、どうしても長くなっちゃってね」

「ははは。服とかだと仕方ないよね」


 3人で話しながら歩いて校舎の中に入る。

 オレたちの教室は2階なので階段へ向かう。


「おい!ナチュラルに無視するなよ!!」


 なんだついてきてたのか。


「それで?なんでそんなに怒ってるんだよ」


 話しながら一応聞いてみる。

 教室に入ったところでコンチが叫ぶ。


「お前昨日めっちゃくちゃ美人な外国人と歩いてただろ!!誰なんだよあの人は!?」


 コンチの叫びが教室中に響き渡り、オレは全員の視線に晒された。


 ホントなんなんだよコイツ、オレに恨みでもあるのか?

 凄い居心地悪いんだけど。


「昨日一緒に歩いてた美人?」

「そうだよ!遠目からでもわかるくらいの美人だったぞ!西洋風の顔立ちで金髪の大人のお姉さんって感じの人だよ!」


 まあ、間違いなく樹里愛のことだろうな。

 大方、樹里愛の家に行くところでも見られたんだろう。


「ああ、まあ、知り合いというか友人というか」

「なんだよそれ!愛衣ちゃんだけじゃ物足りず、あんな美人なお姉さんにまで手を出したのか?!なんなんだよお前ばっかり!不公平だろ!ズル過ぎるだろ!」


 必死過ぎて周りの皆はドン引きしている。


 オレとしてはコイツのこういうところ、好きだけどな。

 面白くて。


「まあまあ、落ち着きなよコンチ。いつかコンチにもきっといい出会いがある……筈だよ……多分」

「そこは断言しろよ!?」

「禅院、存在しない希望をチラつかせるのは時に残酷なんだぜ?」

「そうそう。コンチにモテ期が来るはずないしな」

「というか、俺たちより先にコンチに出会いが来るとかもう世界がバグってるレベルだしな」

「コンチを恋愛対象として見るのはちょっと、ね……」

「なんなんだよお前ら!さすがに酷すぎるだろ!」


 クラスメイトからの容赦のない言葉がコンチに突き刺さる。


 皆、オレへの追求よりコンチをイジる方を優先するとかさすがだな。

 これもコンチの人徳のなせる業か…。

 

 その時、教室の扉が開いて担任である〈石川葵いしかわあおい〉先生が入ってきた。

 見た感じは大和美人って感じなのに性格は大雑把なので、そのギャップから男子女子問わずに人気のある先生だ。


「みんなおはよ~。ホームルーム始めるから席に着け~」


 皆先生の言葉に従い各々席に着く。


「じゃあ点呼取るぞ…、って近野どうした?なんで泣いてるんだ?」

「この世の理不尽に対して泣いてました…」

「なんだ、いつも通りか」


 教師にすらいつも通りって言われるとかさすがコンチ、略してさすコンだな。


「あぁ、あと今日はこの後抜き打ちで持ち物検査するからな~。点呼終わったらカバンの中の物全部机に出せよ」


 なんと。

 まさかの持ち物検査とは。


 先週なら危なかったな。


 だが今日のオレは愛衣の家から通っているため、学校に持ってきてはいけない物なんて何もカバンに入っていない。


 何も問題なんてない。

 そう思って前方を見ると、コンチが頭を抱えていた。

 アイツまたゲームとか漫画とか持って来てたのか。

 さすコン。 

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