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24 親近感

「なんで昨日は電話に出なかったのか、納得のいく説明をしてもらえるかしら?」

「寝てました」


 正直に答える。

 嘘をついたら却って怒らせるだけだ。


「そう。私との約束忘れて寝てたんだ。ふ~ん、そう…。なら今は元気いっぱいってわけね?ちょっと付き合ってほしいんだけど。ゲームのことや、昨日のこととかについて」


 ヤバい、凄い怒ってる。


 でも、もう眠くて限界なのだ。

 できればさっさと眠りたい。


「そ、それが実は夜中に起きてから一睡もしてなくて…。実は今から寝るところなんだけど……」

「夜中に起きてたのに、連絡してくれなかったんだ…?」


 もう何を言っても怒られる気しかしない。


「謝るから許してよ。警察の事情聴取と愛衣の両親からの説教のコンボで精神的にも限界なんだよ…」


 もう情に訴えるしかない。


 とりあえず寝たい。


 今はそれだけだ。


「ちょっと、警察とか何の話?」

「昨日お年寄りを襲おうとしてた通り魔を捕まえたんだよ」

「通り魔!?だ、大丈夫だったの!?」

「まあ、 結構凶器を持ってた上に、老人は全てあの世へ送るとか物騒なこと言ってたヤバいヤツだったけど…。まあ、楽勝だったよ」

「凶器って……。しかもあの世へ送るって……」

「夜中外にいたらお婆さんを襲おうとしてるのを発見したから、止めに入ったら標的オレに変わって応戦しただけだよ。でも魔力あったから怪我なんかしなかったよ?」

「……!?なんで……!?なんであなたもそんな……!?」


 なんだ?

 なんか反応が変だけど。


「樹里愛?どうかしたの?」

「……いえ…。もっと自分の身の安全を第一に考えて。たしかに他の人を助けたり、庇ったりすることは美しい行為かもしれないけど、それでも……それでも自分から危ないことはしないようにして…。お願いだから……」


 なんか、樹里愛の様子が変な気がする。


 でも、そんなことより眠気がヤバい。


「ゴメン、起きたら連絡するから寝てもいい?そろそろ限界……」

「わかったわ……。起きたら連絡頂戴。今度は絶対よ」

「わかったわかった」


 適当に答えて電話を切る。


 あの反応…樹里愛にもやっぱりなにかあるのかな?。

 今度切り込んでみてもいいかもな…。


 そんなことを考えながら、今度こそ眠りに落ちた。



 目が覚めると昼過ぎだった。


 とりあえず樹里愛に連絡する。


 また怒られるのは避けたいし、魔力の鍛錬方法も教えておきたいし。

 樹里愛はすぐに電話に出た。


「無事に起きたみたいね」

「無事にってなにさ?」

「寝過ごすかと思って」


 樹里愛の中でオレへの信用度はかなり低くなっているらしい。

 まあ、考えてみると信用されるようなこと一切してないもんな。

 仕方ない。


「とりあえず会って話したいんだっけ?」

「ええ、今から教える場所に来て。そこで合流しましょう」


 樹里愛から合流場所の住所を聞く。


「ふむふむ。オーケー、大体わかった」 

「あなたのその返事は何故か不安になるんだけど…。まあ、いいわ。他になにか質問はある?」

「大丈夫そうではあるんだけど、一応…。オレ方向音痴なんだけどさ……」

「駅で大人しく待ってて」


 樹里愛に食い気味に言われてしまったので、言われた通り大人しく駅で合流することになった。



 指定された駅に着く。

 正直お腹が空いたけど、下手に動くとまた怒られそうだし我慢することにした。

 

「あら、ごめんなさい。待たせたみたいね」


 そう言って樹里愛は現れた。


「いや、今着いたばっかだし気にしないで」


 事実である。

 マジで今着いたばっかりだし。


「あら、優しいのね」


 なんか勘違いされてそうだけど、別に悪いことでもないので放っておこう。

 と、そこで。


 グ~…。


 お腹の音が鳴る。


「お腹減ったなぁ…。どっか店入る?」

「できれば他に人がいない場所で話したいの。というわけで、私の部屋に行きたいんだけど大丈夫?もちろん料理は腕によりをかけて作ってあるわよ?」

「行く。ちなみに何?」

「男子高校生ならたくさん食べると思ってカレーとハンバーグ、それとサラダも作ってあるけど」

「全部食べれる。ご相伴にあずからせていただきます」


 ご飯を作ってもらっているとなると、男子高校生にとっては神に等しい存在と言える。

 男子高校生の胃袋はそれほどまでにカツカツの状態が常態化しているのだ。


 ホント、愛衣といい樹里愛といい、感謝しかない。


「はいはい。それじゃ家に行きましょうか」


 大人しく樹里愛についていく。

 腹の虫は恥ずかしいくらい鳴りまくっていた。



「落ち着いて食べなさい!」


 樹里愛の部屋に着いてからすぐ、カレーとハンバーグ、サラダにスープが出された。

 一口食べてわかった。

 樹里愛の料理は美味い。


 理解した瞬間、全力で食べていた。


 オレはカレーが好きなので、カレーだけは人並みに作れる。

 そのため、いろんな市販のカレールーを使ってきたが、この味は知らない。

 ということはもしかして……。


「このカレー、もしかしてスパイスから作ってる?」

「ええ、よくわかったわね」


 やっぱりそうか。


 道理で食べたことない味だったわけだ。

 美味しかったけど。


「ハンバーグも肉厚な上、肉汁が上手く閉じ込められてる上に、このデミグラスソース。これも手作りでしょ?」

「そうよ。というかさっきからよくわかるわね……」

「そりゃわかるよ。今は両親が出張中…みたいなものだから愛衣が作りに来てくれてるけど、その前は両親が夜中に帰ってくるから、一人でカレー作ったりレトルト食品食べたり、惣菜で食いつないでたんだから」


 さすがにいつも愛衣に作ってもらうのも申し訳ないので、よく適当に言い訳してそんな食生活をしていたのだ。

 なので出来合いのものか、それとも手作りなのか、その違いはすぐ気づける。


「そう、あなたもいつも1人だったのね……」


 そう言う樹里愛の目は、何故か親近感を感じているような目をしていた。

 こういうのがわかるのも魔力を使えるようになった影響なのだろうか?


「樹里愛もいつも1人だったの?」

「ええ、父親はいつも仕事だったし…。いえ、違うわね。別の理由で帰ってこなかったの。私はそんな父親に反発して、1人で生きていけるって証明したくて、必死に料理や家事を覚えたわ」


 なんか大変そうだな。

 複雑な家庭環境ってヤツか?

 さすがに人様の家庭環境に関して口を出すのは憚られたので、軽く聞き流しておいた。

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