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18 人生に必要なもの

 なんだこれ無理ゲーだろ。


 どれだけの期間鍛え続ければ、あんな簡単そうに魔力の制御ができるようになるんだよ。


 全然魔力がうまく操作できない。


 昼は全力で魔力をぶっ放せばなんとかなったが、普段からあんなのやっていたらすぐに魔力が枯渇してしまう。


 なので、継戦能力をあげるためにも、なにより異能の発動速度をあげたり、威力を制御したりするためにも魔力の制御は必要不可欠なのだ。


 だというのにこの有様…。


 なにより悲しかったのは、魔力制御の訓練とか面白そうだったので、実は若干楽しみにしていたことだった。


 それがこんなことになるとは…。


 現実と言うのは非常なものなのである。

 

 ヤバい…。

 早くも心が折れかけている…。

 

「はぁ~…。これは継続して続ける以外に攻略法はなさそうだな…」


 つい考えていたことが口から零れてしまう。

 愛衣がここにいなくてよかった。


 それはそうと、これはマズイ事態である。

 なにがマズイって、このままじゃ次のゲームで勝てるビジョンが見えないことがだ。


 今残ってる人数は4人。


 少ない、あまりにも少なすぎる。

 このままじゃ次のゲーム、まず勝てない。


 となると、対策を立てるしかないのだが、オレでは足りない人数を個人の実力で埋めるぐらいしか思いつかない。


 昔のアニメで、戦いは数だよ!と主張していたキャラクターがいたが、その主張を覆す以外にオレたちが生き残る道は現状ないのである。


「たっくん、お風呂空いたよ」


 愛衣に声を掛けられ我に帰る。

 結構集中していたらしい。

 愛衣が近くに来ていたのに気がつかなかった。


「じゃあ、オレも風呂入ってくるわ」


 そう言って愛衣の横を通り過ぎる。


 集中し過ぎたのか、ちょっと頭も痛いし風呂でリフレッシュしよう。



 風呂から上がってリビングに戻ると愛衣が勉強をしていた。


 オレの勉強道具をテーブルの向かい席に並べて。


 準備はしておいたから一緒に勉強しろ、拒否は許さない。


 そう言われた気がした。


「めんどくさい、勉強なんてしたって将来役に立たないだろ」

「学校の勉強は知識を身につけること以上に、将来に向けての訓練としての意味合いが強いんだと思うよ」

「訓練?」

「そう訓練。好きなものって意識しなくても身につくけど、好きではないものって意識しないと身につかないでしょ?だから大半の人が好きじゃないだろうけど、一般常識である数学とか英語とかを使って好きじゃないものを身につけるっていう訓練をさせてるんだと思うよ」


 なるほど、好きじゃないものを身につけるための訓練か。


 たしかに未来のオレは社会人になった後、会社の命令でクソどうでもいいことをわざわざ勉強して身につけていた。

 あれも学生時代に勉強という名の訓練を受けさせられていたからできたことだったのだろう。


 でもそんなこと言われたら勉強したくないとか言い出しづらくなるじゃん。


「これで勉強したくないとか馬鹿なこと言えなくなったでしょ?ほら、早く終わらせちゃお?」


 付き合いが長いからか、考えてることを全部読まれてしまう。

 反論しても言い負けるのは間違いないので、大人しく愛衣の向かいの席に座る。


 こんなんだからすでに尻に敷かれてるとか言われるんだろうな。


 そんなことを考えながら課題に目を通す。


「ふ~。わからん」


 お手上げだ。

 速攻で白旗を上げる。


「さすがに諦めるの早すぎだよ……」


 愛衣が呆れたようにオレを見ていた。

 仕方ないじゃん、わかんないんだもん。


 学校から出された課題をやろうとしたら、全くわからなかった件。


 ラノベのタイトルみたいだな。


「もう、仕方ないなぁ…。どこがわかんないの?教えてあげるから」


 ちなみにいつもオレに勉強を教えてくれている愛衣は、成績5位圏内常連である。


 オレの順位?半分より上とだけ言っておこう。

 こういうところでも力関係がはっきりしているとか言うな。


「どこがっていうか、どこもわかんないんだけど」

「一番最初の問題、昨日教えたのと完全に同じ問題なんだけど」

「ほら、オレって過去を振り返らない生き方を目指してるからさ…」


 残念なヤツを見る目から可哀そうなヤツを見る目に変わる。

 お願い、そんな目で見ないで……。


「はぁ~…。仕方ないなぁ…」


 そう言って隣に移動してくる愛衣。


 いつも通りの湯上りの愛衣の匂い。


 落ち着く。


 オレの大好きな匂いだ。


「ここはね……」


 愛衣が教えてくれる。

 ふむふむ…かなりわかりやすい。

 すらすら解けると勉強も楽しい気がしてくるなぁ。

 まあ、気がするだけなんだけど。


「よっしゃー!終わったー!さーて、ゲームしようぜ愛衣!」

「さっきまでのテンションとは大違い…。まったく、たっくんは調子いいんだから…」


 そう言いながらもオレの隣へ座ってくる愛衣。


「とか言いながら、愛衣だって楽しみだったんだろ?」

「それはまあ…。ゲーム好きだし…」


 だろ?

 やっぱり人生に必要なものは楽しさなんだよ。


 勉強とか楽しくないものなんて人生に必要ないってのがオレの持論だ。


 愛衣に論破されるから、最終的にはやることになるんだけど。


「あ、そうだ。明日買い物付き合ってね?」

「え~…また?愛衣の買い物長いんだもん…」


 世間では女性の買い物は長いとよく聞くが、オレはそれが事実であると知っている。

 なぜなら、よく愛衣の買い物に付き合わされているからだ。


「仕方ないでしょ?服に化粧水、それにメイク道具とかも買わなきゃいけないんだから」

「メイク道具ね…」


 そういえば今日出会った樹里愛は薄い化粧だったな。

 個人的にはあれぐらいの自然なメイクの方が好みだ。

 現にオレが知ってる女の人の中で、1番美人だし。


「そう、女の子にとっては結構メイクって大変なんだよ?今度たっくんもやってみる?」

「遠慮しておく」


 それにしても買い物か…。

 今日のゾンビの大群を思い出す。

 あんまり人の多いところには行きたくないけど、仕方ないか…。


「というわけで、明日は荷物持ちお願いね。あ、あと新しくクレープ屋さんができたらしいから、ごちそうしてね?」

「ちょっと待て。なんでオレが奢ることになってんだよ?」

「昨日も今日も勉強教えてあげたでしょ?あぁ~、たっくんに勉強教えるために頭使ったから糖分が足りないなぁ~」

「どんだけ食べたいんだよクレープ…」

「これくらい!」


 そう言って大きく腕を広げる愛衣。


 仕方ないなぁ…。


「わかったよ…。まあ、たまにはいいか…。いや、待て。オレ先週もなんかスイーツ奢ったような…」

「やった、勝った!というわけで、次のラウンド行こうか!」


 なんか誤魔化された気がするが、まあいいか。

 2回連続で負けたら、さらに奢る物を増やされそうだし、ここからは本気でやらせてもらう!!


 結論から言うと、明日はオレの財布がいつも以上に軽くなるのが確定した。

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