17 家族ぐるみの関係
「本日未明、女優の本渡美空さんが…」
ニュースを見ながら愛衣が作ってくれた料理を食べる。
マジで美味い。
オレの家も愛衣の家も両親が共働きということもあり、よく愛衣が食事を用意してくれていたため完全に胃袋を掴まれている。
という背景はあるものの、それを抜きにしても美味しいと思う。
「うん、今日も美味しい」
「ありがとう。でもたっくん基本的に何食べても美味しいって言うじゃん」
「愛衣が作ってくれるもの全部美味しいからしょうがない」
本心だ。
実際美味いし。
「はいはい、ありがとうございます。それはそうと、ご飯食べ終わったらさっさとお風呂入って課題終わらせちゃおうね」
そうだ、デモンズゲームがあって忘れてたけど、今日課題が出てたな。
でも。
「今日金曜なんだし、明後日でもよくない?」
「しれっと明日もやらない宣言しないでよ…。さっさと終わらせてしまえば、明日と明後日は別のことに時間を使えるでしょ?」
正論である。
なにも言い返せない。
「わかったらお風呂入って勉強ね?」
勝手に予定を決められてしまった。
疲れたし、できれば早く寝たいんだけど…。
「私洗い物してから入るから先に入っていいよ」
「いつも洗い物までやってもらうのは申し訳ないから洗い物はオレがやるよ。
だから風呂はそっちが先に入っていい……って、風呂までオレの家で入ってくのか?」
「うん、そっちの方が早いし。ちゃんと着替えも持ってきてるよ?」
愛衣が家の風呂を使ったり、オレが愛衣の家の風呂を使ったりというのは、昔からよくあったことなんだが、今日からはオレ一人なんだぞこの家は。
おじさんたちよくOKしたな。
「ちなみにママは手を出されたらそれはそれで手っ取り早くていいって。パパは笑ってたよ」
「相変わらずだなあの人たち」
おじさんとおばさんはホント…。
昔から豪胆というかなんというか。
「あとおじさんとおばさんからは、たっくんはモテないだろうからさっさとくっついてあげてほしいってお願いされたよ」
ウチの親はホント…。
お節介というか余計なお世話というか…。
「ウチの親のことは気にしないでくれ。アホだからあの二人」
というよりも、二人とも愛衣のこと大好きだから自分たちの義理の娘にしたいだけだろ。
昔から言ってたし。
オレがモテない云々っていうのはホントはどうでもいいんだろう、多分。
「え?私はロマンチストなんで告白してくれるのを待ってるんです!って答えたらあのヘタレはって言ってたけど…」
それでか、今朝出発する前にヘタレだの甲斐性なしだの言われまくったのは。
というか冗談とはいえ、彼女いない歴=年齢の男子高校生にそんなこと言っていいのか?
少しからかってみるか。
「じゃあオレが告白したら速攻でOKするのか?」
「状況次第かな。シチュエーションが気に入らなかったらやり直しを要求するかも」
「めんどくさい……」
なんだそのめんどくささ。
「いいじゃない別に。女の子の憧れだよ?ロマンティックな告白って。それに本番でめんどくさいなんて言ったら確実に振られちゃうよ?」
告白なんてする前からほぼほぼ勝負がついてる、いわば形式的な儀式みたいなものじゃないか。
ならシチュエーションとか関係ないだろ。
「というわけで、私のDVDや小説を貸すからちゃんと勉強してね?」
勉強しなきゃいけない分野が増えた。
というか今更だけど、皆オレが愛衣のことが好きって前提なのやめろよ。
なんか恥ずかしいだろ。
食事が終わった後、愛衣が風呂に入りに行ったのでオレは一人食器を洗っていた。
まったく、ウチの親もウチのだが、愛衣の親も大概だなと思う。
まあ、ウチの親と愛衣の親は両親合わせて皆幼馴染の関係だったらしいからな。
4人とも昔から仲が良くて、結婚した後もお互い隣に家を買って交流を続けてきたというわけだ。
そして同じ日に子供を産むという奇跡が起きる。
それがオレたちというわけだ。
結果、オレたちは双子のように育てられた。
どちらかの親が忙しい時や、具合が悪い時は隣の家に預けるというのはまあまあある話だと思うが、お互いの母親が昼寝をする時間を決めて子供を預けあうってのは結構特殊なんではないだろうか?
学校に通い出した時に友達にその話をしたら普通じゃないとか色々言われた挙句、カップルだなんだとからかわれてめんどくさかったので、愛衣以外の人を無視していた時期もある。
だって、家族同然の愛衣と〈自分たちの普通〉を押し付けてくる不特定多数のよく知らない人たち。
どっちを優先するかなんて自明の理だろ?
話は逸れたが、要はオレと愛衣は家族ぐるみの関係なのである。
ウチの父親が写真を撮るのが趣味だったため、リビングには小学校くらいまでのオレの写真だけではなく、愛衣の写真もいっぱいある。そのため、知らない人が見たらオレと愛衣は姉弟に見えるのだろうなと思う。
そんな事情なので、親は互いの子供すら自分の子供のように溺愛しているというわけだ。
そうなるとどうなるか?
親としては子供を手放したくないのか、2人が結婚してくれれば自分たちにとっては都合が良いと考えついたらしい。
というわけで、アンタたちも満更じゃないだろうし、くっついちゃえば?という口撃をいつも受けているというわけだ。
親にそういうこと言われると気恥ずかしいからやめてほしいんだけどな…。
まあ、愛衣はうまく捌いているようなので、オレが不甲斐ないだけなんだろうけど…。
「そんなことより、デモンズゲームのことをどうにかしないとな。次のゲームどうしよう…」
このままじゃ全滅待ったなしだ。
「魔力が使えるようになってもちゃんと操れないと意味がないから、ちゃんと訓練しないと」
そう、魔力というのは要は道具と同じ。
使えるだけの人と、使いこなしている人では強さの次元が違う。
なので訓練が必要なのだ。
「大切なのは、魔力の制御って言ってたな…」
未来のオレがアレックス爺さんともう一人、クソ強かった人から教えてもらったことだ。
あの2人が言うのだから間違いあるまい。
時計を見ると愛衣が風呂に入ってからそれなりの時間が経っていたが、愛衣は長風呂派だから、まだまだ時間が掛かる筈だ。
なので食器を洗い終わったオレは、早速魔力制御の訓練を始めた。




