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13 インパクト

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「なぁ、皆は優勝したらどんな願い事をするつもりなの?」


 暇だったのでふと気になったことを聞く。


 命を賭けたゲームの報酬だ。

 どんな願いをするのか興味がある。


「そんなの聞いてどうするんだ?」

「だってさ、この作戦が失敗したら間違いなく死んじゃうでしょ?その時にさ、やっぱり聞いておけばよかった、すごく気になる、って思いながら死んでくのって嫌じゃない?」


 死んでも死にきれないってそんなの。


「まあ、たしかにそうかもな…。最後かもしれないし、いいか…」


 ジョナサンが苦笑交じりで話し出す。


「俺は若い頃に両親を亡くしていてな。俺が親代わりとして弟と妹を育てたんだ。でも、やっぱり金の問題で満足にやりたいこともやらせてやれなくてな…。弟と妹を苦労させないぐらいの大金持ちになりたい。これが俺の願いかな?」


 やっぱりジョナサンって苦労人だったんだな。

 まあ、そんな気はしてた。


「あなた、苦労してるのね」


 樹里愛も同感だったらしい。

 

「私はあなたと違ってかなり利己的な願いよ。私はね、幸せにならないといけないのよ」


 と樹里愛は言う。

 『幸せになりたい』じゃなく『幸せにならないといけない』か。

 

「だから色々努力してきたわ、幸せになるために…。医者になりたいって思ってたから勉強も頑張ったし、いいお嫁さんになりたかったから炊事、洗濯、掃除だって必死にできるようになった。綺麗に見えるように色々な努力も怠らなかった」


 スゲェ…。

 完璧超人じゃん樹里愛…。

 でも…。


「でもね……。何故か結婚できないのよ私…。結婚どころか恋人ができても長続きしないの…」


 返答に困るわこんな話。


「彼氏ができたら少しでもよく思われるように頑張るんだけどね、ダメなのよ私。毎回毎回君は俺を必要としてないとか、君と同じレベルを求められても困るとか、重いとか言われるのよ…」


 未来の記憶で会社の先輩たちに、美人でもこういう女ムリだわって言われてた要素、ほとんど入ってるぞ樹里愛……。


 「挙句の果てにね……。前の彼氏には、美人でも疲れるからムリって言われて浮気されたの……。私、こんなに頑張ってるのに……。どうしてなのかしらね?」


 どうしてってそれは……。

 

「いや……。そりゃあ……わかんないけど……」


 オレに聞かれても…。

 助けを求めてジャンとジョナサンを見たら、2人とも目を背けた。

 答えがわかってるなら助けてよ。


「結婚って幸せの象徴じゃない?だから私も結婚しなきゃいけないと思うんだけど、一向に結婚できる気がしないの……。だから、だからね……。もう悪魔に叶えてもらうしかないのかなって…」

「悪魔に結婚させてもらうとか最終手段過ぎない?まだ諦めるには早いと思うよ?」


 樹里愛も大概変な人、もとい面白い人だったんだな。

 でも、『幸せにならないといけない』っていうところは何か引っかかるな。


 でもあれだな、こんな美女でも結婚できないことで悩むとか世知辛いな。


「き、きっといい人に出会えるよ」

「ありがとう、優しいわね大我。その優しさ、大切にね?」


 さっきから思ってたけど、樹里愛って良い人だよね。

 オレみたいな子供にも対等に話しかけてくれるし、お礼も言ってくれる。

 しかも、怖いけど優しいっていうか、面倒見いいし。


「ジャンはどうなんだ?」


 ジョナサンがジャンに聞く。


「俺の願いか……。俺の願いは……」


 少し間が空く。


 言いにくいことなのかな?


 でも、大抵のことなら樹里愛の願い以上に言いづらい上に、インパクトあるようなことないよね?

 そんなことを考えていたらジャンが口を開いた。


「ある男を殺すことだ」


 十分インパクトあったわ。


「ある男を殺すのが願いって……。本気なのか?」

「ああ、本気さ」


 凄い、樹里愛の話以上のインパクトが来るとは想像してなかった。


「その男って誰?」


 気になったので聞いてみる。


「大我、こういうプライベートなことはあまり突っ込んで聞かないの。あなただってプライベートなこと聞かれたら嫌でしょ?」


 ふむ、そういうものなのか。

 ここは素直に従っておこう。


「ゴメン、興味本位で突っ込んだこと聞き過ぎた。気に障ったなら謝るよ」

「私からも謝るわ。この子には後で言い聞かせておくから」

「別に構わないが……。お前ら、今日初めて会ったんだよな?なんか、段々仲のいい姉弟にしか見えなくなってきたんだが…」

「それは俺も思ってた。なんていうか自由奔放な弟と面倒見のいい姉って感じだよな」


 たしかに樹里愛は面倒見いいと思うけど、そんなに姉弟に見えるもんなのかな?

 というか、オレは別に構わないけど、突然姉弟扱いされるとか樹里愛は嫌なんじゃないか?


 そう思って樹里愛を見ると、なんか動揺していた。


「え、えぇ、会ったのは今日が初めてよ」


 なんか様子がおかしいな?

 

「そうなのか。それにしてはかなり大我を気に掛けてないか?」


 ジョナサンが聞くと樹里愛はバツが悪そうにしている。


「え、えぇ、まあ。弟がいたのよ、昔…」


 これはオレでもわかる。

 突っ込んだらいけないヤツだ。


「す、すまない。気を悪くしたなら謝る」

「い、いえ…。構わないわ…」


 これこそ地雷を踏むってヤツだな。

 それにしても……


「……」

「……」

「……」


 空気が重い。

 が、オレだけがまだ願いを教えてなかったため、気にせず教えておくことにする。


「オレの願いは」

「「「素晴らしい人生を送ることだろ(でしょ)?」」」


 オレが伝える前に皆に言われる。

 そういえば皆には自己紹介の時に伝えてたね。


「ずっと思ってたけどやっぱり抽象的過ぎないかその願い?」

「どんな形で願いが叶うのかわかんないぞ、それじゃ」


 ダメ出ししかないじゃん。


 そんな変な願いじゃないと思うんだけど…。

 と思いながらふと画面を見てみると、アレックス爺さんたちはロビーからかなり離れたところにいた。

 チャンスだ。


「さて、それじゃ行こうか」


 ジャンに言われて皆立ち上がる。


 ここからが本番だ。

 失敗は死あるのみ。


 上等だ、ここまで来たらやってやる。


 覚悟を決める。


 この作戦の合否はオレに掛かっているのだ。

 

「緊張してる?」


 樹里愛が話しかけてくる。


「そりゃ、ね。オレが失敗したら全滅しちゃうだろうし」


 そう伝えたら、樹里愛が手を握ってくる。


「私たちもフォローする。気休めかもしれないけど、あなたは1人じゃないわ。だから大丈夫」


 手を握る力が強くなる。

 同時に震えていることがわかる。

 それでもこの状況で他人を勇気づけようと思えるとは…。


 素直に驚嘆する。


「樹里愛は凄いね」

「え?」

「だってさ、ゲームが始まってからずっと、自分のことよりもオレのことを気に掛けてくれてるし」


 何故か視線を逸らす樹里愛。


「そんなことないわよ」

「そう?まあ、オレは樹里愛が気にしてくれて助かってるからね。お礼に樹里愛がピンチになったり困ったことになったりしてたら、今度はオレが樹里愛を守るよ」


 樹里愛が目を見開いてオレを見る。

 なにか変なこと言ったかな?


「お願いだから……。お願いだから、そんなことしないで。自分の身の安全を一番に考えて。お願いだから」


 手を握る力が強くなる。


 強くなるというか、強すぎる。


 痛い、普通に痛いってレベルじゃない!

 握りつぶされるんじゃないかってぐらい痛い!


 なにか言ってたみたいだけど、そんなの気にする余裕もない!


「そろそろ行くぞ……。何してるんだお前ら?」


 ジャンに声を掛けられたことで樹里愛が手を放す。


 マジで握りつぶされるかと思った。

 折れてないよな?と、手を確認する。


 よし、折れてない。

 よかった。


「なんかあったのか?」


 ジョナサンが声を掛けてくる。

 作戦前だからな、あんまり心配させるのもよくないよな。


「大丈夫。片手が潰れても、もう片方の手があれば戦えるよねって確認してただけだから」

「こんな時にどんな心配してるんだお前は」


 なんか呆れてるけど、不安を与えるよりは全然マシだな。

 

「お前といると緊張してる自分が馬鹿馬鹿しくなるな。だが、おかげで助かった」


 何故かお礼を言われてしまった。

 なにかしたかな?


「気を取り直して、今度こそ行くぞ。皆、全力を尽くしてくれ」


 ジャンの言葉でオレたちは決戦の場へと歩き出した。


 樹里愛に握り潰されかけた手は、まだ痛かった。


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