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11 天才と紙一重

~大我SIDE~



 気がつくと知らない天井が見えた。


 どこだここ?


 起き上がり辺りを見渡すと、樹里愛、ジャン、ジョナサンの三人がいた。

 三人へ近づき声を掛ける。


「やあ、三人とも元気そうだね」

「能天気な挨拶どうも。こっちは元気とはほど遠い気分だよ」


 とジョナサンが返してくる。

 なんか疲れ切ってるな。


「疲れてるみたいだね、なんかあった?」

「お前なにも覚えてないのか?」


 ふむ、何かあったっけ?

 そもそもなんでオレ寝てたんだ?


「ヤバい、何も覚えてない。オレなんで寝てたの?」

「あなた、あのお爺さんのゾンビに壁を壊すほどの衝撃で吹き飛ばされて気絶してたのよ?」


 壁を壊すほどの衝撃?

 ヤバい、覚えてない。


「どうしよう、覚えてない」


 マジで覚えてない。


「覚えてない?ちょっとゴメンね」


 樹里愛に顔を両側から掴まれ目を見られたりする。

 正直樹里愛の顔がすぐ近くにあるのは気恥ずかしいから早く終わってほしい。


「うん、恐らくショックで記憶が飛んでるだけね。脳とかには以上ないと思うけど、何か違和感とかあったらすぐに言うこと。わかった?」

「わかった」


 即答する。


「あなたが即答してくると不安になるわね」


 酷くない?


「で、オレなんで寝てたの?てか、他の人たちは?」


 まあ、いないってことはそういうことなんだろうけど。


「大量のゾンビ共に襲撃されたんだよ。で、俺たち以外は全滅しちまったってわけだ」

「絶望的じゃん、どうすんの??」


 率直に言って絶望的な状況じゃないか。

 ここから逆転できる方法、ある?


「俺たちも今必死で考えてるんだよ」


 ジョナサンが頭を抱えながら言ってくる。

 かなり憔悴してるみたいだ。


 まあ、そりゃそうか。

 だって生き残れる可能性かなり低いし。

 仮にここで生き残っても次のゲーム絶望的だし。


「はあ…。まあ、このゲーム勝ち抜いても次のゲームもヤバそうだしね…。正直、明るい気持ちになんてなれないよね」


 あれ?三人共こっち見てるけどどうしたの?


「次のゲームってなんのことだ?」


 やべ。

 オレは未来の知識で基本1つのシーズンでゲームは大体2つって知ってるけど、皆は知らないんだった。

 ごまかさなきゃ。


「だ、だって、これファーストゲームって言ってたじゃん。なら少なくともセカンドゲームはあるんじゃない?」


 よし、いい感じにごまかせたんじゃないか、これ?

 普通に考えたら信憑性あるよねこの説。

 まあ、実際あるんだけど。


「たしかにファーストゲームって言ってたわね…。絶望的ね…」


 樹里愛がやけになったように言う。

 まあ、初参加のプレイヤーだけでファーストゲームを生き残ったって話を聞いたこと自体ないしね。

 セカンドゲームなんて夢のまた夢な話だ。


 なので、


「で、でもさ。今はこのゲームを生き残ることを最優先にしないとさ」


 と、軌道修正を計る。


 とりあえず、このゲームを生き残らないとどうしようもないからね。


 てか、今気づいたけどこの部屋、大量の画面に明らかに監視カメラの映像がある。

 この部屋って……。


「ここってもしかして警備室?」

「ええ、そうよ」


 やっぱりそうか、それなら……。

 画面を操作して、目的のものを探す。


「何をしてるんだ?」


 ジャンが聞いてくる。


「勝利条件である魔法陣を探してるんだよ。あの爺さんがいる以上、次に戦闘になったら全滅確定だし。さっさと勝利条件を満たしてクリアするに限るでしょ」


 今度アレックス爺さんと戦闘になってしまったら確実に全滅する。


 ならオレたちにできることはただ一つ。


 アレックス爺さんに出会う前にゲームをクリアする。


 これしかない。

 そのためにも早く魔法陣を見つけなければ。


「待ってくれ、魔法陣を見つけたとしてどうするつもりなんだ?」


 ジョナサンが待ったをかける。

 どうするって破壊する以外ないでしょ?

 だって勝利条件が魔法陣の破壊なんだし。


 何言ってんだ?と表情で訴えかける。


「いや、だからさ、魔法陣を発見したとしても俺たちだけで破壊できるのか?あのゾンビ共は魔法陣から出てきてるんだろ?てことは恐らく今までより大量のゾンビが集まってる可能性の方が高いだろ?」


 ジョナサンに言われて初めてその可能性に思い至った。


 たしかにその通りだ。


 あのゾンビはオレたちプレイヤーが近くにいると察知して動いて来るが、基本はあまり動き回らない。

 実際、今見てる映像でも大半のゾンビはその場でじっとしていて動いていないし。

 ということは、魔法陣から現れてその場にずっと留まっているゾンビもいる筈だ。


 どれくらいの頻度でゾンビが現れるのかはわからないが、すでにゲームが始まってからかなりの時間が経過している。

 それなりの数はいるだろう。

 それを捌きながら魔法陣を破壊するのは至難の業であることは容易に想像できる。


「たしかにその線は考えていなかったな。ジョナサンの予想通りなら、正攻法で攻略はムリだ」


 オレもジャンと同意見だ。

 大量のゾンビと戦うのは危険すぎる。


「それに、あまり時間を掛け過ぎるとあの爺さんゾンビもやってくる」


 そう、その通りだ。


 アレックス爺さんのゾンビなら少しの戦闘音でも聞きつけて来る可能性が高い。

 大量のゾンビとアレックス爺さんの両方を相手にするとか無理ゲーだろ。

 オレとしてはそんな状況、たとえ1回だろうと経験したくない。


「なら……どうすればいいの?」


 樹里愛が震えた声で聞いてくる。

 どうすればいいのか、か。

 本当にどうしたらいいんだろう……。


「とりあえず魔法陣を見つけよう。それからのことはその時考えればいいよ。大丈夫、きっと未来のオレが何かいい案を考えついてくれるよ」


 皆にそう告げて魔法陣探しを再開する。

 任せたぞ、未来のオレ。


「なんだそれ…。まったく、能天気なやつだなぁ…」

「いえ、こういうのは能天気じゃなくて馬鹿って言うのよ。馬鹿は馬鹿でも天才と紙一重の方の馬鹿ってね…」

「天才と紙一重ってなんだそれ?結局馬鹿ってことじゃないのか?」

「ねえ、皆で馬鹿馬鹿言うの酷くない?」

「なら、もう少し自分の行動を改めなさい。さて、大我だけにやらせるのもあれだし、皆でさっさと探してしまいましょうか」


 手伝ってくれるのはありがたいので、オレは何も言わずに作業に集中することにした。

 断じて反論できなかったわけじゃないぞ。

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