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105話 リスク

「ぐ…!」

「ね、ねぇ!ちょっと!」

「ラウル!?」


 あの男の様子を見て、さすがに止めに入る。


 人力で首を絞めるのとはわけが違う。


 あれでは酸素を摂取できないだけではなく、血の流れまでも完全に止めてしまう。


 いくらなんでも…!


「言葉で説得してもこういうヤツは絶対に口を割らん。痛みを持って思い知らせる以外の方法が無いのだよ」


 その目はやめるつもりはないと物語っていた。


「こういうタイプは単純な暴力では口を割らない。だが、私はこういうタイプの扱いには慣れているのでね。悪いが、この場は私に任せてもらおう。少し時間は掛かるが、必ず口を割らせてみせると約束しよう。なに、安心しろ。君たちと違って私はこういうことに慣れているのでね」


 そう言うと、彼はなにかが入っている瓶を取り出した。


 あれはアイテムかしら?


 って、そんなことよりも、今、彼は慣れていると言ったのかしら?


 こんな拷問に?


「まあ、アンタはそうなんだろうが…」

「どういうことジャン?あなた、なにか知ってるの?いえ、そもそも彼は何者なの?相当な強さを持つプレイヤーというのはわかっているけれども…」

「ああ、説明してなかったな。ラウルは…」


 ジャンは私へと振り向き、告げる。


「国連が秘密裏に作り上げた、対デモンズゲームプレイヤーの特殊部隊、そのトップらしい」


 は?


 国連が作り上げた軍?


 しかも秘密裏に?


「なにそれ?大我が聞いたら喜びそうな設定ね」


 あの子、秘密組織とか軍隊とか、そういうの好きだものね。


 そういえば弟もそうだったわね…。


 弟の場合は、特撮ヒーローの影響だったけど…。


 だからあの子はあの時…。


「いや、そうは言うがな、実際に…って、どうした樹里愛?」

「い、いえ…なんでもないわ…」


 あの子のことを考えると、周囲のことに目が向かなくなるのはダメな癖ね…。


「それにしても、国連が作った秘密の軍隊なんて…。正直、悪魔が本当にいたって事実よりも信じ難いわね。なんというか、こう…」

「まあ、国連とかって悪魔に比べたら身近なものだからな。それが裏で秘密の軍隊を作っていた…なんてこと言われても、嘘っぽく感じてしまうのも仕方ないことだよな」


 それだ。


 悪魔なんて信じられないものが存在していることを知ってしまったからなのか、本当にありそうなことに関しては逆に嘘っぽく感じてしまっているのだ。


 違和感の正体に納得したところで、本題に入る。


「それで?あなた、なんの証拠も無しにそれを信じたの?」

「俺だってそこまで馬鹿じゃない。証拠を見せられたんだ」


 ジャンはそう言うと、アロナクスと出会った時のことを話し始めた。



~ジャンSIDE~



 遡ること数時間前…。


「私の名前は〈ラウル・アロナクス〉。国連軍所属の特務中将にして、〈対デモンズゲームプレイヤー特殊部隊〉…その創設者にしてトップだ。そして…君にとっての義理の兄、〈マーリオゥ〉の実の父親だ」


 なん…だと…?


 マーリオゥの…父親…?


「父親…だと?貴様が…?」


 いきなりそんなことを言われて、信じるヤツなんかいるのか?


 そんなことを思いながらも、俺はなんとなくこの男の言っていることが事実であるのだと感じていた。


 なぜなのかわからないが、なんとなくそう感じたのだ…。


 と、その時。


「アロナクス、アンタ…。こんなデカい息子がいたのか?」


 さっきから意味わからんことに嫉妬して、ブツブツと呪詛を吐き続けていたシャドウが、あの男へと見当違いの疑問を投げかけていた。


「俺のことじゃねえよ!?」

「相変わらず話を聞いていないのだなシャドー…。どうせ私の気配を感じ取れなかったから、『新たな気配遮断を身につけたんだな羨ましい!!』…とでも考えていたのだろう?」

シャドウだ。気配遮断だけでなく読心術まで…。貴様、一体どうやって…!?」

「読心術に関しては恐らく身につけてないと思うぞ?シャドウが分かりやす過ぎるだけだろ」


 というか図星かよ…。


 ホント、コイツって俗物的だよな…。


 俺はこういうヤツ、嫌いじゃないけど。


「シャドウじゃない、シャドウだ」


 さっきから思っていたが、名前を毎回訂正するのはなんなんだろうか?


 発音にこだわりでもあるのか?


「面白い冗談を言うな戦友フレンドは?ははは!」

「いや、冗談じゃないんだが…」


 〈サバイバーズギルド〉の連中はいつもコイツの相手をしてるのか?


 同情するな…。


「気にするなジャン…。そいつはそういうヤツだ。それと、気配遮断の件だが、単にお前が勝利の余韻に浸ってたせいで私に気づかなかっただけだ。悪い癖だと前にも言っておいたであろう…?」

「ちょっと何言ってるのかよくわからないんだが?」

「もういい、お前と話していると話が進まん」


 それには同意見だ。


「なんだ?俺の高尚なシャドウトークに屈したか?まあ、仕方ない。今回はこれくらいで退いてやろう」


 あれは本気で言っているのか、狙って煽ってるのか、どっちなんだろうな?


 まあ、どちらにしても、言われた対象であるあの男には、そのシャドウトークとやらは効果が無かったようだが…。


 いや、なんか呆れたような、可哀想なヤツを見る目を向けているから、効果はあったのか?


 どっちでもいいか…。


「それで?貴様はこれからどうするのだ?今回も『今の〈サバイバーズギルド〉の連中は不甲斐ない』とか言って、俺たちの邪魔をするのか?」

「いや、今回はやめておこう。私にも目的があることだしな」


 ヤツはそう言うと、倒れていたミカエルの腹を踏みつける!


「ぐ…!」

「何をするんだアンタ!」

「気絶させただけだ。ヤツから話を聞くことが私の目的の一つだからな」

「なんだと?」

「聞こえなかったか?つまり君と私の目的は同じということだ。そこで提案なんだが、私と手を組む気はないか、ジャン?」


 手を組むだと…?


 俺の目的は、アンタの息子を殺すことなんだぞ?


 というかそもそも、何故俺の目的を知っているんだ?


「君の目的はとある筋から聞いて知っている。だが、それを果たすには、まずマーリオゥを捕まえる必要があるだろう?私も訳あってヤツを探しているところなのだ。つまり我々の目的は同じと言える。なら、手を組んだ方が効率的だろう?」

「だが俺は…」


 アンタの息子を殺そうとしているんだぞ?


「君の復讐は正当なものだ。なので私は止めるつもりはないさ」


 たとえ実の息子でも…か?


 正直、家族をそんな風に切り捨てられるヤツなんか信用できない…。


 だが、渡りに船なのは事実だ。


 ヤツは確実に、俺以上の情報を持っている…。


 ここは…。


「わかった…。手を組もう…」


 リスクがあるのは百も承知…。


 それでも俺は止まるわけにはいかないんだ…!

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