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104話 強プレイヤー

~樹里愛SIDE~



 大我たちと別れた私たちは、アロナクスの案内でアイテムを持っているであろうプレイヤーの元へと向かっていた。


「それで?その〈セイジ・キングダム〉の…〈クリス・セイジ〉?ってヤツはどういう人なの?」


 これから戦闘になるのは間違いないので、今の内に情報を得ておいて損はないだろうと思い聞いてみる。


「クリスは私やアレックスさんと同等の戦闘能力を持つ、所謂いわゆる強プレイヤーというヤツだ。なにより異能が強力でな。応用力がある上に何種類もの能力を持つ。その上それを扱う本人は常識に囚われないクレバーさを併せ持つ厄介な男だ…」


 それは…たしかに厄介な男ね…。


 戦闘能力が高いのに、それを扱う本人が独特な感性を持っているせいで行動が読めないということでしょ?


 というか…。


「なんか話を聞いてる限り、大我を彷彿とさせるな」


 そう、ジャンの言う通り、なんというか大我と類似するイメージなのだ。


「それはそうだろう。クリスもまた、転生者だからな」

「え!?」


 クリス・セイジも転生者!?


 まさか、そんな偶然があるとは…。


「なんというか皮肉ね…。転生者である大我を救うために、転生者と戦うことになるなんて…」


 もしかしたら、そのクリスという男も転生者として苦しんでいて、自分を救うために戦っているかもしれないのに…。


 いえ、もしそうだとしても、わたしがやるべきことは変わらない…。


 大我を救うためなら、たとえ他の人を苦しめることになろうとも、私は…!


「安心しろ。ヤツはもう転生者としての末路を回避するための願いを叶えている。そもそも、ヤツの場合は前世がかなり年代が離れている時代の者だったみたいだしな。前世の記憶を思い出しても、彼ほどの影響は無かったようだぞ?」


 そうか、前世が生きた年代が離れているということは、それだけ長く霊脈にいたということ。


 つまり、それだけ魂の強度が強くなっているということだ。


 だから、前世の記憶を思い出しても耐えられたということか。


「そうか…。ん?ってことは、そのクリスってヤツも体を変化させてくるってことか?」

「ああ、そういうことだ。そして、それがヤツの異能の厄介なところでもある。いいか?ヤツと戦う時は、できるだけ近接戦闘は避けるのだ。下手をすると、一瞬で戦闘不能にさせられるぞ」


 一瞬で戦闘不能にさせられる?


 つまり、なにかしらのネタがあるということなのか?


 それとも、単純に近接戦闘の能力が高いということなのか…。


 どちらなのかによって、戦術も変わってくる。


「ねえ、もうちょっと詳しく…」

「話は後だ。目的の場所に着いたからな」

「え?ここにセイジって人がいるの?」


 私たちが今いるのは、なんてことない、普通の公園だった。


 こんなところに〈セイジ・キングダム〉なんて名付けた軍団を待機させておくかしら?


「ここに寄ったのはコイツを回収するためだ」


 そう言って男子トイレから一人の男を引きずって来る…。


 誰かしらこの人…?


「いてて…少しは丁寧に扱えよ!って、そこの姉さんはたしか…」


 その男は私に見覚えがあるようだった…が、私にはやはり見覚えがない…。


「申し訳ないけど、私はあなたに見覚えがないの。一体どこで…」


 私と出会ったのかしら、と聞こうとしたところで、向こうから答えを言ってくれた。


「おお!エントリールームで銀髪の姉さんとキャットファイトを繰り広げそうになってた姉さんじゃねえか!いやぁ、あれは緊張感があってよかったぜぇ。でもどうせなら、血沸き肉躍る女同士の戦いってヤツを見せてほしかったぜ!」

「なにこの不愉快な男?とっとと止めを刺して、そのセイジって人のところへ行きましょう?」


 こんな悪趣味で品性下劣な男のために費やす時間なんて一秒ですら勿体ない。


「随分と塩対応してくれるねぇ…。もうちょっと付き合ってくれてもいいんじゃねえか?」

「黙れ。貴様には聞きたいことがあるから生かしておいてやっていることを忘れるな」


 聞きたいこと?


 事情がわからないので説明してほしいところだが、正直な話をすると、一刻も早くこのゲームを終わらせたいので、何も言わないことにする。


 なによりも大我が最優先。


 これは絶対だ。


「すまない樹里愛。だが、コイツは俺や義姉さんを襲撃した実行犯の一人なんだ。なんとしても情報は手に入れておきたい」

「実行犯!?っていうと…」


 たしか、物を操作するヤツと体を液体にするヤツがいたとか…。


「ああ、前に説明しただろ?体を液体化するヤツを見たって。それがコイツだったのさ」

「体を液体化…。それって…」


 大我と同じ、転生者…?


「あ?俺が転生者ってこともわかってるのか?そうだぜ?珍しいだろ?」


 自分が転生者であることを把握している?


 ってことは…。


「お前もデモンズゲームで優勝したことで、精神崩壊を免れた一人ってことか?」

「ああ?そんなことまで把握してやがるのかよ…。まあいい。その通りだからよ」


 やっぱり、デモンズゲームで優勝すればあの子を救えるのだ…!


 最初はこの男と話すことなんて時間の無駄と思っていたが、今はその情報が手に入っただけでもここに来てよかったと思えた。


「せっかく転生したのに、前世の記憶を思い出したら精神が崩壊するとか、あんまりだと思わないか?」

「アンタみたいに戦場が大好きなんてヤツにとってはそうなのかもな?」


 戦場が大好きなんて頭おかしいんじゃない?


 と、思ったが、それを言葉にするとまたあの男に絡まれかねないので黙っておくことにした。


「そんなことはどうでもいい。我々が聞きたいのは、誰がマーリオゥとイーリスを襲うよう指示をしたのか。それだけだ」


 そう言ってアロナクスは、砂を操って謎の男の首を絞め出した。

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