101話 アーク
「とりあえず当分動けないようにしておいた方がいいかな?」
「そうだね…。この先邪魔されても困るし、そうしておこうか?」
「チッ…。だから俺はまだ戦えるって言ってんだろうが…!」
「いやいや、無理しない方が良いと思うよ?少し面倒臭いけど、オレおじさん嫌いじゃないんだよね。だから、変に抵抗しないでね?」
そう言って風林火山おじさんに近づく大我。
と、そこへ…。
「大我!よかった無事だったか!」
「ジョナサン!?」
現れたのは大我の仲間であるジョナサンだった。
私はこのゲームが始まる前に少し話しただけだが、大我にしてみたら前回のゲームから協力している仲間だからね。
あんなに嬉しそうにしているのも納得だ。
まあ、正直少し妬けるが…。
「え?一体誰?」
「たしか、ゲームが始まる前に阿久津君と話してた人だったような…」
「大我が初めて参加したゲームで協力して、一緒に生き残った人らしいよ?たしか、ジャンとあの小姑の四人で生き残ったとか」
「つまり樹里愛とも顔見知り?ってことは味方ってことよね?よかった…」
まあ、たしかにその通りなんだけど…。
それにしては何かこう…。
「よかった、ジョナサンも無事だったんだな!」
「まあな。そっちはどうなんだ?」
「樹里愛とジャンも無事だよ。今はラウル…え~と、アロナクスって人と別行動取ってるけど…。そうそう!樹里愛のヤツ酷いんだよ!オレが気を失ってる間にジャンとラウルと一緒にいなくなっちゃってさ!一緒にいてくれるって言って…痛…!」
「おいおい大丈夫か?」
「あ、ああ、大丈夫…。えっと、どこまで話したっけ?」
「樹里愛たちが別行動ってとこまでだな。それで、お前はこのゲームのことをどこまで把握してるんだ?」
「石板型のアイテムを四枚集めるとクリア条件である宝へ辿り着くための地図が完成すると思うって話は聞いてるけど…。そう、これこれ」
そう言って大我は石板型のアイテムを取り出す。
その時、私は見逃さなかった!
ジョナサンの目が、まるで獲物を捉えた狩人のような目に変わったことを!
「大我!彼から離れるんだ!」
「え?」
その瞬間、大我は突如現れた(土や岩で出来たような)ゴーレムに殴り飛ばされた!!
「ぐっ…!な、なんだ!?え、これって…!?」
「悪いな大我…」
そう呟き、声の主は仰向けに倒れた大我の顔を踏みつける。
そして気を失った大我が持っていた石板型のアイテムを取り上げる。
「…!!」
私は怒りのあまり、周囲のことを気に掛けることなく声の主…ジョナサンへと斬りかかる!
が…。
「…!?くっ!?」
「悪いなローレンス」
何者かに攻撃を阻まれてしまい、後退を余儀なくされる…!
私はその声に聞き覚えがあった…!
「もしかして〈ラミアス〉かい?随分と久しぶりじゃないか!?」
「少々理由があってな…」
彼の名は〈マーリオゥ・ミカエラ・ラミアス〉。
少し前までデモンズゲームでよく一緒になっていたプレイヤーだった。
「噂では〈イーリス〉を殺して逃亡中って聞いていたんだが?」
「…君に説明する義理はない…」
「まあ、それはそうかもしれないけど…。だが、顔見知りとして一応、好奇心から聞いておきたいんだけど、どうしてイーリスを殺したんだい?たしか君、イーリスとは恋仲だったよね?」
そう…。
〈マーリオゥ〉と〈イーリス〉は恋仲…いや、たしか最後に会った時には夫婦になるとか言っていた気がする…。
そんな相手を殺すとか、なにかあったとしか思えないが…。
いや、そんなことより…。
「まあ、答えたくないなら別に構わないさ。そんなことよりもまず、大我を私へ引き渡してくれないか?彼は私の…」
「なんだ、見つけたのか?『運命の相手』というヤツを?」
「『運命の相手』?」
大我を不意打ちしたジョナサンが、マーリオゥへ問い掛ける。
何か理由(というか、自身の願いを叶えるためなんだろうが)があったのだろうが、大我を不意打ちした相手だ…油断はできない。
「ああ、ヤツは…」
「それを本人の了承を得ないまま勝手に他人に説明するのは、野暮ってものよ?」
「なっ…!?」
そこに現れたのは、死んだと噂されていた〈イーリス〉だった…。
だが、その姿は…。
「イーリス…君、その姿は…!?」
「久しぶりねレイラ…。少し醜いかしら?ごめんなさいね…。いろいろ事情があってね…」
その姿はまるで天使のようだった…。
なにせ背中から羽根が生えているのだ…。
まともな人間の姿ではない。
その姿はまるで…。
「まるで…〈モンスター〉のようじゃないか…。一体どうしたんだい?」
「『まるで』じゃないわ。私はあなたたちが言う〈モンスター〉…いいえ…〈アーク〉として生まれ変わったのよ」
「〈アーク〉?」
〈アーク〉とは今まで私たちが〈モンスター〉と呼んでいた連中の正式名称か?
まさかこんなところで〈モンスター〉…いや、〈アーク〉の情報が手に入るとは…。
「悪いが君たちを逃がすわけにはいかなくなった。いろいろと話を聞かせてもらおうか?」
そう言って戦闘態勢に入る。
状況は完全に最悪だったが…。
こちらには守らなければならない対象が複数いる上に、動けるのは私一人。
そしてもう一人の戦闘要員である大我は気を失っている上に、現在敵に捕らわれている…。
さて…どうしたものか…。
私としては、大我を救い出すのが最優先なのは変わらないが。
「ジョナサン、ここはその少年を大人しく差し出して、撤退するのが懸命だがどうする?」
「それでそこの戦闘狂が大人しく引くのか?」
「ああ、なんせその少年は彼女にとっては『運命の人』みたいだからな。彼女が見捨てることはあり得ないだろう」
痛いところを突いてくるね…。
そうだ、大我は私の『運命の人』…。
私が大我を見捨てることはあり得ない。
「ここから安全に離れられるなら、手段は問わない。さっさとやれ」
「了解だ。と、いうことだローレンス。彼を引き渡すから、ここは見逃してくれないか?」
「つまり、今回のゲームの優勝は諦めろと?随分な物言いだね?」
「あなたにとっては、最早優勝なんてどうでもいいんじゃない?だって、あなたにとっての『運命の人』は、もう手中にあるんだから」
本来ならその通りだ。
大我が私の手中にある以上、私が優勝する必要なんて本来なら無い…。
だが事情が変わった。
大我を救うためにも、私はもう一度優勝する必要がある。
「すまないが事情があってね、私には叶えなければならない願いがもう一つあるんだよ。だから、君たちを見逃すわけにはいかない」
「そう…。ならこうさせてもらおうかしら?」
そう言うとイーリスは、大我を掴み上空へと移動する。
「なんのつもりだい?」
「あなたが諦めないのならあなたの行動を限定すればいいだけでしょ?幸い、あなたが彼を諦めないのはわかっているのだから、彼を連れて逃げ回れば時間を稼げる…。なにかおかしいかしら?」
そういうことかい…。
目的のためには手段を選ばないのは、相変わらずみたいだね…イーリス…!




