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10 まるで地獄だ

いいね、ありがとうございます!これからも頑張ります!

 明らかに正気ではない目をしたそいつは、信じられない速度でこちらへ突っ込んできた。

 ジョナサンが前へ出て突進を止める、いや、正確には止めようとした。

 ジョナサンが構えていた盾にそいつ、アレックス爺さんがぶつかった瞬間、まるでトラックにぶつかられたようにジョナサンが吹っ飛んだ。


 マジかよ、ガタイのいい上に盾でガードしたジョナサンがあんなに吹っ飛ぶとか、オレなんかがまともに受けたら一撃で死ぬんじゃないか?


 背筋に冷たいものが走る。


「イ、イヤァァァッ!!」


 バカカップルの女が叫んで腰を抜かす。

 しかも自警団の女の足にしがみついたまま。

 あれじゃあ、自警団の女は動けないだろ。


「た、助けてくれ!」


 振り返るとさっき逃がした奴らが戻って来ていた。

 なんでだよ?!と思ったが、理由はすぐに理解できた。

 彼らの後ろから大量のゾンビが現れたからだ。


「悪いことは重なるらしい。見ろ」


 ジャンの声に従い、アレックス爺さんの奥を見る。

 

「最悪の展開だな……」


 ついつい笑ってしまう。


 アレックス爺さんの後ろに見えたのは、こちらへ向かってくる大量のゾンビ。

 しかも自警団ゾンビも混じっている。


 最悪だ、最悪の状態だ。


 ジョナサンの状態を確認していた樹里愛が叫ぶ。


「早く逃げないと!あなたたち2人で皆を追ってきたゾンビをどうにかできない!?」


 たしかにあの二人なら異能を使えるから、あの大群を片付けることができるかも。

 最悪倒しきれなくても、一時的に動きを止められればそこから逃げられるかもしれない。


「任せろ!」


 自警団の男がゾンビの大群へ向かう。


「ちょっと!離して!」


 自警団の女が叫んでいる。


 バカカップルの女が自警団の女の足にしがみついているので動けないようだ

 アイツ、文字通り足を引っ張っているな。


 その時、先程から動きを止めていたアレックス爺さんが動いた。

 狙いは……。


 「あ……。ゴフ……」

 「レイー!!」


 今まさにゾンビの大群へ異能を放とうとしていた自警団の男だった。

 腹に風穴を開けられ絶命する男。


 マジかよ、アイツこっちがどうすれば困るのかわかってて、あの男を狙ったのか!?

 だとすれば知能高過ぎだろ!

 

「イ、イヤァァァ!」


 自警団の女の叫びが聞こえる。


 自警団ゾンビに組みつかれ、噛まれていた。


 オレにも自警団ゾンビが襲い掛かる。


 ヤバい、迎撃が間に合わない。


 そう思った瞬間、自警団ゾンビが態勢を崩す。

 ジャンがボウガンで迎撃してくれたらしく、その足には矢が刺さっていた。

 あれならすぐには動けそうにないと判断し、その隙にロングソードを一閃、首を落とす。


 厄介な自警団ゾンビを一体片付けたところで後ろを見る。

 後ろから迫って来ていたゾンビの大群は、すでに食事を始めていた。


 阿鼻叫喚の地獄。


 一言で言うのならこの言葉がピッタリだな、とつい思ってしまうような光景が広がっている。


「い、いや。来ないで、来ないでぇぇぇ!!」


 バカカップルの女が叫んでいるが、周囲は大量のゾンビに囲まれていた。

 あれはもう助からないだろう。


 少し離れたところには自警団の女がピクピク動きながら倒れていた。


 まだ生きてるみたいだが、遠くない未来にゾンビとしてオレたちに襲い掛かってくるのは想像に難くない。


 ならば、と彼女の元へ走る。


 許してくれとは言わない。


 だが、ここでやっておかないと後々オレたちがやられる原因になる可能性がある。

 彼女の元へたどり着いたオレは、その勢いのまま彼女の首へロングソードを振り下ろした。


 

~ジャンSIDE~



 俺、ジャン・ルイージ・アガッツィには果たさなくてはならない目的がある。

 その目的を果たすためなら命なんて惜しくない。


 そんな俺にとってこのデモンズゲームは、とても都合のいいものだった。


 しかし、そのデモンズゲームのせいで俺は今、命の危機を迎えている。

 目的を果たさずに死ぬわけにはいかないのに、だ。


 俺たちは現在進行形でゾンビに囲まれており、全滅の危機に瀕している。

 

 どうやってこの状況を打破すればいい?、と必死に頭を回転させていると、

共にゲームに参加している阿久津大我が、自警団の女の首へと剣を振り下ろした。


 オレが見た限り、あの女はまだ生きていたのに、だ。


 俺には、今のうちにあの女を殺しておいた方がいいなんて考え、思いつきもしなかった。


 いや、生きている人間を殺すという発想さえなかった。


 あいつを見ていると、こんなことで目的を果たすことなんてできるのだろうか。

 そんなネガティブな考えが頭に浮かんでくる。


 そんな俺を現実引き戻すように、大我が話しかけてきた。


「どうしたの?大丈夫?」


 いかん、余計なことを考えて上の空になっていたみたいだ。

 そんな場合ではない。


「すまん、大丈夫だ。それよりもこの状況をどうにかしないとな。このままじゃ全滅だぞ」

「わかってる。そこで提案なんだけど、やっぱりあのゾンビの大群を抜けていくしか逃げる方法はないと思うんだ。だから……」


 大我はそこまで喋ったところで突然黙ってしまった。

 大我の視線を追ってみるとあのアレクサンダーとかいう爺さんのゾンビがこちらを凝視していた。



~ジョナサンSIDE~



 俺はジョナサン・ミラー。

 しがないタクシー運転手だ。


 今日も家族を養うために汗水垂らして仕事をしていたら、突然変なゲームに巻き込まれてしまった。

 悪魔が開催しているゲームに参加させられるとか、正直頭が追いついていない。


 そんな俺だが、現在本当に死ぬかも知れない目に遭っている。

 ゾンビに囲まれてる上に、超強い爺さんのゾンビに吹き飛ばされたのだ。


 昔タクシーに乗っている時にトラックに当て逃げされたことがあるが、その時と同じかそれ以上の衝撃だった。

 人間大なのにトラックと同じくらいの衝撃ってどういうことなんだ。


 そんなことを考えていたら、同じくこのゲームに巻き込まれた樹里愛・スペンサーという女性が駆け寄ってきてくれた。


「大丈夫!?」

「あ、ああ…」


 声を掛けられたので、返答しながら周囲を見渡す。


 状況は最悪みたいだ。

 大量のゾンビが生存者を襲っている。


 まるで地獄だ。


 正直この状況から生き残るのはムリじゃないか?と諦めがちらつく。


 そんな時だった。


 一緒に行動していた阿久津大我とジャン・ルイージ・アガッツィを見つめる存在が目に入った。

 俺を吹き飛ばした爺さんのゾンビである。

 マズイ。

 アイツの攻撃をまともに受けてしまったら、一撃でやられてしまうだろう。


 痛む体に鞭を入れ、立ち上がる。

 しかし、間に合わない。


 大我に向かって爺さんのゾンビが突進する。

 速いが大我も反応している。

 体の前に剣を出して盾代わりにしたうえで、攻撃の瞬間に後ろに跳んでいた。


 よく反応できたなと思ったが、それでもものすごい衝撃だったらしい。


 吹き飛ばされた大我が壁にぶつかったと思ったら、そのまま壁を壊して外へ投げ出されてしまった。


 大丈夫かアイツ、壁が壊れるぐらいの勢いで吹き飛ばされるとか普通に考えて致命傷だろ。

 樹里愛と二人で大我の安否を確認するため、壊れた壁から外へ出る。

 

「おい!大丈夫か!?」


 大我に声を掛けるが反応はない。

 樹里愛が脈を確認している。


「脈はあるわ。でも気絶してる」


 よかった生きてはいるらしい。


「お前ら大丈夫か!?大丈夫ならすぐにでもここから離れるぞ!」


 いつの間にかジャンも俺たちのそばに来ていたらしく、声を掛けてくる。


「ここから離れるって言っても、どこへ逃げればいいの!?」


 樹里愛が叫ぶ。

 たしかにどこへ逃げろって言うんだ。

 正直、この調子じゃどこへ逃げたところで……。


「どこだっていい!とりあえず少しでもここから離れるんだ!」


 壁の向こうを見ながら俺たちへ言う。


 そこに広がっていたのは地獄のような光景だった。


 目に入る色はほとんどが赤色、聞こえてくるのは悲鳴と咀嚼音。


 先程まで樹里愛相手に言いたい放題だった女が悲鳴を上げながらたくさんのゾンビに群がられ、咀嚼されている。


 あまりの光景に吐き気がこみ上げてくる。

 急いで視線を外す。


 これ以上は耐えられそうになかったからだ。


「行くぞ。ジョナサンは大我を運んでくれ。樹里愛は悪いが俺と一緒に道中のゾンビへの対処を頼む」

「わかったわ」

「わ、わかった」


 ジャンに指示を出され、夢現のまま動き出す。


 正直現実感がないが、これ以上ここにいたら、遠くない未来に彼らと同じ末路をたどることになる。


 なにより、これ以上は精神が耐えられそうにない。

 俺たちは安全な場所を求めて逃げ出した。

 後ろから聞こえてくる、悲鳴と助けを求める声を置き去りにして。


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― 新着の感想 ―
[良い点] Twitterから来ました。蛙鮫です。未来視系主人公とは。良い未来が見えれば良いですけど,まぁなかなか災難ですね笑  文章も読みやすくても,良いですがなんと言ってもキャラクターが良い笑 …
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