25:エッセイ→下ネタ有りのゆるいホラー?『ヤギの首』
ショウモナイ話です。
先日開催された、とある個人企画。
タイトル名を『牛の首』(ひらがな、カタカナ、丑や之、頸などに漢字を変えるのは可)とし、ストーリー内容も「牛の首」絡みのジャンル:ホラーの作品を投稿するというもの。
その為、企画期間中は『牛の首』という作品タイトルをよく目にした。
沖縄県の八重山諸島、日本の有人島としては最南端の波照間島。
自分が今よりももう幾らか若かった頃、何度か旅行で訪れたことがある。
泊まった民宿のおばあからだったか息子さんからだったか聞いた話で、たとえば島民が結婚するだとか、何か目出度いこと、祝い事があった時、島では食用に飼っているヤギを捌くのだという。
島内を散歩したりレンタサイクルで自転車を走らせたりしていると、放し飼いにされているヤギに出会うことがある。
で、そのヤギを捌くとなった場合、肉は当然調理して食べるのだが、頭部は川(川から海)に流すのだという。
その話が「昔は」だったか、「今も」だったかまでは覚えていないのだが、川をヤギの首が流れていくという話だった。
豚は鳴き声以外全部食べる、というのは沖縄ではよく耳にする言葉。顔はチラガー、耳はミミガー、足はテビチ、その音の響きだけでも美味しそうに感じられ、沖縄料理がとても恋しく、食べたくなる。
自分の父親がまだ独身だった頃、父親は2年ほど仕事で沖縄に住んでいた。その影響で、実家ではソーキ汁がお袋の味というくらい定番料理化していた。母が父に頼まれて、圧力鍋で煮て、そこそこな高頻度で作っていた。スペアリブ、冬瓜、昆布などの具材が入った食べ応えのある汁。圧力鍋が大きいので沢山作り過ぎてしまい、また、鍋が大き過ぎて冷蔵庫に入れられず、少しずつ酸っぱい味になって傷んでいく。経験上、美味しいけれど、腹具合的には割と要注意な汁。ちゃんと冷蔵庫に仕舞えれば問題無いのだろうけれど。
豚からヤギに話を戻して、ヤギの首。
豚とは違い、食べないのだろう。ヤギの頭部が川(海へ繋がる用水路的な?)をどんぶらこ、どんぶらこと流れていく。
さあ、皆様。
ここからは、ご一緒に想像してください。
「おっす、オラ成人男子。
急に尿意を催したぜ。
駄目だ、もう我慢出来ねぇ。
そこちょの川で、ちょっくら立ちションしてくるぜ」
どんぶらこ、どんぶらこ
どんぶらこ、どんぶらこ
川に体を向け、ズボンの社会の窓からある物を取り出そうと、男はチャックに手を掛けた。
どんぶらこ
どんぶらこ
流れてくる何かと、目が合った。
濁った双眸は底なし沼のように、男の視線をとらえて離さない。
じょじょじょじょじょ
ズボンの前面は大きな染みとなり、両手が濡れる被害に合った。
視線を外すことは出来なかったが、底なし沼の2つの瞳は次第に小さくなり、やがて見えなくなった。
どんぶらこ、どんぶらこ
どんぶらこ、どんぶらこ
ジャブジャブジャブ
ジャブジャブジャブ
どんぶらこ、どんぶらこ
男が汚れたズボンとパンツを川で洗濯していると、上流から大きな桃が流れてきた。
どんぶらこ
どんぶらこ
男は洗濯物と桃を家まで持ち帰ることにした。
まな板に乗る大きさでは無かった為、玄関のタタキの上で桃を切ることにした。
メェ~、メェ~
真二つに割れた桃の中には、濁った双眸をした生首が入っていた。
ピーンポーン
「ごめんくださぁーい」
玄関戸を開けると、警察官がいた。
「公然わいせつ罪で、駐在所までご同行願います」
男はしょっぴかれる。
玄関では生首が「パパ行かないで」と切なげに鳴いていた。
メェ~、メェ~
モォ〜、モォ〜
メェ~、メェ~
モォ〜、モォ〜
桃。
(終)




