1:『階段を上りきって』
予防線を張る
前もって張る
期待されてしまわないように
がっかりさせないように
裏切られたと思われないように
人の目が怖い
人の心が怖い
人の言葉が怖い
どうか期待しないでください
不興を買ってしまうなら、始めから避ける
その為の予防線
捻れた性格
ひねくれた性格
拗らせた性格
もう治らない
治そうとも思わない
そんな年齢
諦念しながら
妥協しながら
自分に優しく
ぬるま湯に浸り
甘やかし
人も自分も、騙し騙し
この性格と生きている
自分が嫌い
自分は醜い
自分は汚い
綺麗なものに憧れて
物語の世界に逃避する
時にヒロイン
時に悪役
時に脇役
感情移入しながら
物語の世界に逃避する
綺麗な言葉で心を洗う
ゴシゴシ、ゴシゴシ
たまに擦り過ぎて磨り減って
それでも心を削るようにして、汚れを落とす
どうしようもない自分
我慢は出来ないから
淀みを文字に変え、体の外に
自分の中身を軽くする
減った分だけ補充する
綺麗なものを
楽しいものを
笑えるものを
キュンとなるものを
時々濁るから
だんだん濁るから
底が見えなくなるくらい
自分を見失うくらい
ぐちゃぐちゃになるから
頭も心も何もかも
だから文字に変える
さながら魔法
心を軽く
体を軽く
そうして日々を歩く
自分に呆れ
自分を諦め
自分を赦して
予防線を張りながら
それでも、差し伸べてくれる温かな手に
掛けられる優しい声に、救われる
嫌いな自分をほんの少し、好きになる
言葉に
文字に
人に
感謝を