7、王都へ
「もしかして、今私の語学スキルを確認されましたか?」
【ルーカン・モルデカイザー(男)66歳、語学スキル、抜け毛に悩み中、首フェチ、孫娘サリーナス・グランデスを溺愛】
【抜け毛に悩み中】に上頭部を確認する私を見て、先生はそう言いました。
「はい」
「よろしい。しかし、鑑定スキルとは。数学、計算スキルなしであのレベル。将来が楽しみです。しかも祝福持ち。王都へは明後日出発ですよね?」
「はい。おそらく王都にひと月ほど滞在するようです」
予定はスキルの詳細確認と王家との顔合わせ。祝福持ちということで王家との顔合わせが可能となったようです。
「馬車で2日です。あっという間に着きますよ。王都についてかるく復習しておきましょう」
「はい。王都は四つの高位貴族領地のおよそ真ん中に位置し、国王直轄です。貴族の交流の場となる王都は基本となる国代表としての運営、それぞれの特色を活かした領地経営ができるように適宜調整、監査の権利を持ち、四つの地域がトラブルにならぬよう調整する義務もあります」
現在の王家は国王陛下と王妃殿下、側室の産んだ王太子殿下、同じく側室が産んだ3つ下の妹です。私が生まれた頃に王弟殿下が公爵になり、隣国とトラブルの多いアルキメデス伯爵家の領地の一部分を管理することになったと習っておりますね。
「有力な王妃候補者はリーリア様を入れて今のところ3人です。高位貴族は貴方とサージェント伯爵家のアントリア様、王弟殿下の姫君は他国への輿入れとなるでしょうが、入っておりますね。他にも下位貴族が多く生まれておりますので、側近、王妃ともに熾烈な選抜戦となるでしょう。おそらく子爵家以上はあと5年はベビーブームが続くでしょうね」
「現在の国王陛下の側室は下位貴族からですか?」
「いえ、アルキメデス伯爵家からです。王妃にお子が産まれずに姉妹で輿入れとなりました。その際にも毒殺未遂など、凄まじい熾烈な争いがあったそうです。結局陛下の御心で決めたそうですが」
王妃様とのお茶会があるかもしれないと言われていましたので、その情報は入れておかねばならないものでしたね。側室と仲が良いかは王都へいって情報収集いたしましょう。
「ああ、そうです。次の課題は王都に売っている本屋で本を買うことにしましょう、タイトルはこちらです。『ユーリースト共和国へ行こう!これで大丈夫、貴方も安心旅行の巻』」
すっとお金を渡されます。これは、いわゆるおつかいでしょうか?お金の計算は教えてもらいましたが実際に見るのは初めてです。もちろん、買い物はしたことがないので楽しみです。
部屋に戻り、王都へ向かうために、ミール達が慌ただしく準備しているのを見ながら、自分自身を鑑定していないことに気づきました。
自分を鑑定、できるのかしら。自分は見れないパターンもありそうよね。とりあえずやってみましょう。鑑定。
【リーリア・オーキッド・クリサンセマム(女)5歳、鑑定スキル、料理スキル、創造神の加護、ロリータファッションを愛する者、転生者】
できました。が、目の前に広がる情報に混乱しています。【創造神の加護、ロリータファッションを愛する者、転生者】と表示されています。特にまずいのは【転生者】これは間違いなく今までの周りの態度が変わります。今度の詳細スキル確認で表示されるのかしら。困ったわ。表示されないようにすることはできるのかしら。加護は祝福に書き換えはできそうにないわよね。祝福は稀にあるようだし、加護も似たようなものとして、もう問題はないということにして、とにかく転生者だけでも隠したい。今まで聞いたこともないですし。
ロリータファッションを差別的な目で見られない世界に転生したのに、また差別的な目で見られるなんて嫌です。前世で思い出すのは、ちらっと服装をみたあと、一瞬訝しみ、何も触れずに話し出す大人の人々。
「先生可愛い!」と言う生徒もいれば、「いい大人が恥ずかしい」という大人びた生徒もいました。ロリータファッションは好きでしたから何を言われても止めませんでした。が、転生は私が選んだわけではないのです、晒されるのは。あれを耐えられたのはロリータファッションへの愛があったからです。転生者になりたくてなったわけでもないのに晒され、差別的な目で見られるなんて耐えられません。
―――どうか、転生者であることは見つかりませんように。
王都へ行くのが不安になってきました。詳細な判定とは、どの程度なのでしょうか。
「さあ、おやすみなさいませ。明日、最終準備をして、明後日の朝早く出発ですわ。私も行きますからね」
ミールが不安そうな私に気づいて声をかけます。
【ツアンへの恋心育成中】
勝手にツアンさんを思い浮かべてしまったからでしょうか。鑑定が表示されました。ちなみに彼は王都へはいきません。恋心育成中なら会えない時間が二人の愛を育てることもあるのかもしれません。
“会えない時間が愛を育てる“恋愛小説の醍醐味ですわ。王都へ行ったら恋愛小説の本も探してみようと思います。5歳児がまだ早いと笑われるかもしれませんけれど。
王都にはお兄様達もいらっしゃるので、会えたらいいですね。ミールのおかげで少しだけ気分が浮上しました。流石ですね。育児スキル。
読んでいただきましてありがとうございました。
次は朝アップです。