67、王太子殿下の憂鬱
強く言い過ぎたかな。
リリーは気づいていないと思っていたのかな。前世持ちなんて、リリーをずっと見ていたらわかる。
リリーが発案したもの、リリーの考え方がロゼッタが話す世界と似ていると感じていた。自分から話してくれるのを待つつもりだったのに。そんな話をすることもなく、彼女に好意を持つものに彼女自身が興味を持つことに嫉妬した。囲い込みたくなった。我慢ならなかったんだ。
解消と言われるのは正直棘がささる。王政教育を学んでも、好きな人は特別なんだ。深く傷つく。
たしかに聖女ロゼッタは私にとって特別な存在ではあるが、リリーはもっと特別なんだ。分かってもらえるにはどうすればいいのだろうか。
ロゼッタに嫉妬しているから解消したいなんて甘えてると思っていたけど、ちがうんだろうか。
―ロゼッタからそう言われたわけだし。
結局本人の了承してない婚約なんだ。最初に婚約を申し込んだ時から、リリーはうなずいてくれなかった。
「はぁ。完全に逃げられちゃったかな」
リリーは逃げ足早く、夏休みになる前に、もっと言うと公表の話をしたあと学園で見ることはなく、視察と研修でアレックスの国へいくことが決まっていた。
暗部はつけているから大丈夫だとは思うが、フルールを今焚きつけるのは良い選択とはいえない。
だから、リーリアが暗部からの報告で定期便で行くと聞いた時には嘘だろと耳を疑った。
「よりにもよって、どうして北回りをするやつに乗ったんだ!」
わざわざ北回りをするのに乗せるなんて、わざとなのか?わざとだろう?手配は誰がしたんだろうか。
「急ぎ向かう!」
☆☆☆☆☆
結果、北国の奴隷制度に加担しているという公爵家等の現状が明るみにされた。国王である父上は落胆し、失意の中だったのが隙をつかれたのか、私の毒殺未遂についても公表された。世間の厳しい処罰が求められた中、公爵家は取り潰し、一生幽閉か毒杯を選んでもらうことになった。
叔父上と伯母上である公爵家夫妻は毒杯を選択し、公爵家の娘フルールはすでに自我を失っているとして毒杯を夫妻が選択した。
唯一肉親としてのクリスの気持ちはいかほどだろうか。
気がかりではあったが、聖女ロゼッタ様が支えてくれているようで、比較的穏やかに過ごしていたのは驚いた。公爵家取り潰しの後は教会の洗礼を正式に受け、教会に身をおくことになった。
この経験を踏まえ、もう、待てないと思った。リリーへの執着は今更だと思う。
逃げようとするならどこまでも追いかけてやる。毒矢を受けてから苦しむ彼女を見て、囲い込む決意が固まった。どろどろに甘やかして私がいないとだめと言わせてみせる。
ただ、情けないことに公爵家取り潰しに関する業務が多く、正直かまってあげられていない。まだ婚約解消は諦めていないのだろうか。
卒業したら成婚の準備を両家ですすめているというのに。伯爵家はリリーが私を好きだということが態度でわかるらしい。羨ましい。
私にも告白してほしい。ちゃんと言葉がほしい。
ざまぁ感は足りたのでしょうか。キーワードにざまぁを追加していいのか迷います。




