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64、強者

 私の願いが叶ったのか、ついに鑑定表示で【リーリアに恋してる!】と表記された男の子を見つけました。


 しかも!殿下の睨みにも負けずにちらちらと私を見るんです。私も気になって見てしまいます。少し恥ずかしいですね。ドキドキします。これが恋かしら。ふふふ。


 彼の名前はリーガン・トーマス。アントリア様伯爵家の領地の子爵の息子と聞いております。くるくるのくせ毛の茶髪に黒縁眼鏡。背はそんなに高くないようです。かなりの勉強家で中等部では図書館の主と呼ばれていたそうです。


 私はよく知らないですが、鑑定表示は信頼しています。私は告白をしてほしいと思っています。そして、「はい、喜んでー」と勢いで言いたいです。好きになるのは後からでもいいはずです。そういう恋愛もありますよね。


 卒業したら、婚約から成婚の準備がいよいよ始まり、逃げられなくなります。リーガン・トーマス様に惹かれているわけではないのですが、いや、ちょっとキュンとしたかしら。とにかく、一時しのぎでもいいから離れたいのです。好きになるかもしれないですしね。


 正直、フェリスから逃げられるなら誰でもいいと思っています。恋愛相談をしてきた分だけ、“私だけ”を好きになってくれる人と一緒になりたいという気持ちは高まるばかりです。フェリスは自分の立場から、王妃として、私を求めていらっしゃるとはっきり言いましたもの。聖女ロゼッタ様に惹かれているのも表示されているのに、解消しないのひとつ覚えです。



 こうなったら、リーガン・トーマス様を手紙で呼び出しましょう。相談がありますと、こっそり呼び出します。体育館の裏、ではなく食堂の裏ですね。恋愛小説での学園あるあるネタの1つでしょう。そこで、鑑定の表示をしてしまって、婚約解消に協力してもらうのです!




「そんなに婚約解消したいんなら、自分がふさわしいと思う人を連れてきなよ。本当に眼鏡でいいの?リーリアが好き?はっ。彼はわたしと一緒の君が好きだと言っていたよ」


 リーガン・トーマスは権力の前にこくこくうなずくことしかしていません。情けない。表示も【殿下の横にいるリーリアに夢中】とよくわからなくなってます。それって殿下付きの私が好きってことかしら?嫌だわ。


 殿下を振り切ったはずなのに、撒けなかった私が悪かったのかしら。


「ごめんなさい。呼び出したのは放課後に一緒に行ってほしいところがあったの。でも、殿下に見つかったから」


「いえっ、お気遣いなく。失礼します」


 脱兎のごとく去っていく後ろ姿を見つめます。


 リーガン・トーマス様と放課後にティータイムでもして、次期王太子妃として相応しくないとかいちゃもんつけてもらおうとか、放課後デートとか考えていたのですが。ま、殿下に見つかった時点で諦めましたけどね。


 もう、逃げたい。逃げられたけど。






「リリーが結婚相手に望むものは何?」


 何?


 帰り道の馬車の中、もちろん隣に座るフェリス。いつの間にか、少年の背丈になりましたね。私も同じですけれど。高等部卒業後には成婚だということを身近に感じてしまいました。


「私を好きな人、あと、私も恋した人かな」


 両思いであってほしいのは政略結婚で苦しむ恋愛相談を受けてきたからでしょうか。


「…恋ね。私はリリーに恋してるよ。政略でもなく、都合がいいからとか、王妃にふさわしいとか、関係なく。リリーが好きだから」


「嘘。聖女ロゼッタ様とは公務以外でも会ってるじゃない?そんなこと言われたって信じないわ。ロゼッタ様が好きなんでしょう?」


 だったらなんで公務以外で会うことはなかったのよ!嘘よ。


「…ロゼッタは違うよ」


「なんで?嘘はつかないで。悲しくなるから」


「リリー、リリーも前世持ちだよね?しかも、ロゼッタと同じ世界からの」


「…なんで?」


 なんで知ってるのかしら?ロゼッタ様と同じって。もしかして仲が良いから?



「…まったく、ロゼッタは君にとっては鬼門かな。ふぅ。誤解しないでほしいんだけど、ロゼッタとはそんなんじゃないから。リリー、やっぱり前世持ちなんだね?」


 否定も肯定もする余裕はありませんでした。


「うーん。無言は肯定か。悪いけど公表するね。逃さないって言ったじゃないか。もう外側から認めてもらうことにする」


 熱の籠もった真剣な表情で、外堀を埋める宣言されました。もしかして、お怒りでしょうか。


 家に送ってもらった時におでこに唇が触れました。拒否することもできずに受け止める自分がそこにいました。


 部屋へ戻りベッドへ入ると、あの一連の流れが蘇ってきて震えてきました。リーガン・トーマスはあのあと消されていないかしら。大丈夫よね?公表されてしまったら逃げられないと感じます。もう、逃げるなら今が最後だと思いました。


 なんだか怖いです。加護と祝福を受けて、前世持ちが公表されたら、私は殿下と愛のない結婚をしなくちゃならなくなると思います。


 このままでは自分は恋することもないまま、人生を終えてしまうのかもしれません。前世では好きな人はできて、でも諦めて結婚しない選択をしました。今度は好きな人もできないまま、結婚です。王家に飼い慣らされることになるのでしょうか。


「逃げよう。もうすぐ夏休みに入るし。殿下は公務の予定が入っているはずよね」


「私の公務は聖女様でもできるはずだし」


「逃げなきゃ!」


 休学届を出して、急いで準備します。お兄様にお願いすると、外国へ視察と研修という留学許可で申請できました。あくまで伯爵家の娘が他国へ逃亡は格好がつかないとのことです。


「アレックスの国までいったら、ユーリースト共和国へ行こうかしら」

リリーは殿下から逃げられ・・・るのでしょうか。


逃走成功するも、自分から帰ってくる!

既に囲い込みされていて逃げられない!


どっちにしろ逃げられないやーん!と思った方、正解です。

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現代物の軽い読み物です。恋愛なしでゆるっと1500字程度ですので、こちらもよかったらよろしくお願いします!
授業中に居眠りする彼の事情
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