63、いつから執着?
あっという間に月日は流れ、私は15歳になりました。
出会いがあれば、恋してしまえば誰だって構わないのですが、中等部は試験中心のところでしたし、交流というものもありませんでした。あったかもしれないけれど、キュンとくるのはなかったのです。恋愛相談も、もともと想い人がいるわけだから、惹かれることもなく、むしろ恋愛のスペシャリストとして色んな知識がついたと思います。
高等部は王都にしかありません。特徴のある中等部をそれぞれ卒業したあと、社会へ出ていかずに一般教養、礼儀作法、社交の総仕上げを行ない、他国ともやり取りできるように育成する国の最終教育機関です。
王国を支えるにふさわしい人材を育成する、国の随一として選ばれた人だけの学校と言われています。
貴族の中でも特に際立った人だけが通えるので“フェニックス高等部へ通ってました”は1つの評価の対象になるそうです。
さらに、ここで生涯の伴侶を見つけることが貴族子女には求められております。高等部では貴族との交流、いわゆる顔つなぎがひとつの目的でもあります。
神様、出会いを誂えてくださいまして感謝いたします。そして、いたるところに、恋愛ネタが転がっていますわね。聖女様の話していた前世の漫画も、ここからスタートです。私にも変化が訪れるのかとドキドキしておりました。
そうです。私もこの学園で素敵な男性に出会い、恋しちゃえばいいんじゃないかしら?と思って期待していました。
殿下は漫画原作の強制力なのか、聖女様と行動を共にすることが多くなってきました。最近は聖女様が王妃候補と言われてしまうこともあるそうです。一部の聖女ファンは私が王太子殿下へ断っていないから婚約できないという風に思われているそうですわ。困ったものです。
婚約解消できないのは私のせいではないのです。むしろ婚約解消はこちらからお願いしていました。今も解消の交渉が継続しているのかはわかりません。王家と伯爵家とで、どうやらうやむやにしてしまったらしいし。ただ、中等部ではほとんど関わらなかったので、このままフェードアウトしてしまおうと思っています。
あとは、好きな人ができたと殿下に話して婚約を解消してもらえればいいのですが。キュンとしないのです。まぁさすがに想い人がいたら破棄かもしれません。でも、もういいのよ。疲れちゃったのも正直あります。誰でもいいから私をときめかせる人はいないのかしら。
高等部はもちろんフェリス殿下と同じ学校です。でも、近づかないようにして、新しい出会いを探すのみですわ!と意気込む高等部の廊下です。今ここですわ。
「「リーリア様、次の授業、一緒に」リリー、次も一緒だよね?」
「ええ」
私を誘ってくださったのはサージェント伯爵家のアントリア様です。ハンカチのあとから文通が続いて、純粋にお友達としてお付き合いしてもらっております。彼女は今留学生のアレックス様に夢中です。アレックス様は紫の髪の細長イケメン、青と紫、爽やかカップルになるかしらね。ふふふ。実は隣国の第二王子と聞いたらアントリア様はどんな顔をするかしら。
隣はフェリスで2人の様子は見えません。というか、誘われたところに被せなくてもいいんじゃないかしら。一緒にいくのも同じ方向に行くだけですし。ほら、聖女様もこちらを見ていらっしゃいますわ。
「女子にも嫉妬って、やばくない?っていうか、そうか。アレックス様がリーリア様に惚れないように牽制しているのかしら」
通りすがりに聖女ロゼッタ様の独り言がぼそっと聞こえてきました。
聖女ロゼッタ様は次の講義の移動はないので席を立ちません。本人も原作とは、異なる選択をしようと、薬学科へ進むようです。
高等部、意外にも出会いがありません。男子と話すこともできておりません。話しかけようとすると怯えられます。気配を感じて振り向くと殿下がにっこり笑っております。つけられているわね。そちらはクリス殿下がいない時に聖女様とお二人でいらっしゃると聞いています。私には新しい出会いを求めるチャンスもないのでしょうか。
服毒未遂事件以降、護衛も増えたらしく、特に何事も起こりませんでした。聖女ロゼッタ様いわく、高等部からのスタートですものね。できれば高等部までに婚約解消したかったのですが、その話題にもさせてくれませんでした。わざとでしょうか。いえ、ゆっくり会う暇もなかったですね。
私の隣に殿下、アントリア様、殿下の後ろにアレックス様、側近候補が囲みます。制服があるところが、漫画の原作の強制力を感じます。水色のジャケットに学年毎のネクタイ、私達は黄色です。
入学当初は女性たちから羨まれ、声をかけられました。恨み言ではありません。殿下の周りの側近の中に想い人がいるので、助けてほしいというお話です。恋愛相談室が有名過ぎて想い人への相談が後を立ちません。
「アレックス様、次の講義のウワー先生は、出身が同じとお聞きしましたが」
「そうですね。まさか教員になっているとは思いませんでした」
「お知り合いですの?」
「はい。私自身、小さい頃に宮廷楽士の彼に会ったことがあります」
少し苦手な授業ですので、先生のリサーチはきちんとしたいところです。
「私、音楽は不得意ですから心配で。ウワー先生が母国で好んでいたものなどお聞きになったことは?」
「いえ、私もあまりこの分野は得意ではないので、ぜひ知りたいところです」
ええ。鑑定ですでに知っております。仲間ですね。アントリア様との交流のきっかけをさせていただきますわ。
「アントリア様は、先生とは長い付き合いになりますわよね?ぜひ授業のコツをを教えていただきたいですわ」
「もちろんです。ウワー先生は中等部の担当の先生でしたわ。兼任されていらっしゃるんです」
「心強いですね。アレックス様」
フェリスの後ろを歩いているアレックス様へそう声掛けしながら後ろを向きました。
「リリー?君には私が教えるから大丈夫だよ」
またです。私はアントリア様とアレックス様の2人の想いを繋げてあげたいだけですのに、フェリスが私を見つめてぐっとアレックスとの話に入ってきます。
「はぁ、ありがとうございます」
高等部に入る前は公務でしか会っていなかったからか、ちょっぴり煩わしいとすら感じてしまいます。
まるで俺のもの扱い?というのでしょうか。嫌です。聖女様とは、高等部からはあまり関わらないようにしているようです。
殿下の囲いを抜けて、私へアピールする男性はいらっしゃらないのでしょうか。
せっかく生まれ変わったのなら、恋愛小説のような、キュンとする恋がしたいです。ドキドキしたいですわ。
やっと殿下のヤンデレ溺愛要素が強まって参りました。
え、もう十分?
そんなことないですよね!!
まだまだ溺愛イケると言う方、もっとやれ!と言う方、★いただけましたら嬉しいです(笑)




