61、本屋カフェ
「本屋カフェゆり、オープン記念です。本日書籍お買い上げのお客様、ドリンク半額チケットプレゼントいたします」
「お待たせしました。本日のエーセット、唐揚げ定食です。ドリンクのフレッシュジュースは後ほどお持ちします」
いよいよオープンです。本屋カフェは前世の名前を使わせていただきました。
三日前から研修されたウエイターがテキパキ対応しています。
ごはんメニューは結局ビーフシチューを定番とし、日替わりランチのエーセットとビーセットです。家族の中でもビーフシチューの評価が高かったので、ここにくれば食べられるという、目玉商品とするとブルー兄様が決めました。
ランチセットではコーヒーと紅茶とフレッシュジュースが選べます。フレッシュジュースはフルーツショップでの旬のものでシェフお任せにしています。
初日の今日は日替わりエーは唐揚げ、ビーはグラタン、フレッシュドリンクはオレンジジュースと、入り口に貼りました。
まずまずの盛況っぷりです。
食後のコーヒーは前世では定番でしたが、調べたところ、苦いイメージが先行して普及していないそうです。
これはドリンクメニューにホイップクリームを乗せたコーヒーを流行らせたいところです。私はあれが好きでした。ホットコーヒーにホイップクリームを絞り入れるだけですが、苦味と甘味とふわふわが絶妙なハーモニーを奏でているのです。
「ありがとうございました。またのご来店お待ちしております」
今日は初日ですので、私もオーナーとして店頭に立ちました。
「ランチセットにドリンクセットの理由がわかりました。デザートを追加で頼むんですね」
ジーナが納得の顔をして頷きます。
「でも、ドリンク半額サービスって、ランチでもないので使いづらいのではないでしょうか?」
「あら、もらったら使いたくなるのが人間の性よ。貴族には話題として提供よ。そして、ドリンクの半額なので、一番高いタピオカドリンクを選ぶことが予想されますわ。ドリンクは回転が意外に早くて飲み物だけでも利益がでるから問題ないのよ。次の来客の起爆剤になれば十分と考えているわ」
デザートメニューは日持ちのするお菓子を用意し、あとは日替わり2種類にしました。
「あの、リーリア様?」
「はい、私がリーリアです。ご要件をお伺いいたします」
呼びかけられたのでお茶目に振り向くと、茶色の髪で細目のエメラルドグリーンのドレスの女性が立っておりました。が、知らない方です。てっきりお母様のお知り合いや、傘の発注での関係者がお祝いに来てくださったのかと思いました。
「本屋カフェオープンおめでとうございます。予約したいのですが」
「ありがとうございます。ご希望のお日にちございますか?」
「リーリア様にあわせます」
「???」
私にあわせる?どういうことかしら。首をひねって考えていると、
「鑑定していただきたいのですわ。その、夫婦の悩みや、男女のことの相談をされて、解決したとお聞きしまして、相談したいのですが」
恥ずかしそうに答えるご婦人。私の中でそんなことしたかしら?と疑問は増えましたが、人の恋愛事情やフェチは見るだけなら面白いですし、鑑定して何か変わるのであればお手伝いしますわと前向きに答えました。
「イポメア様のおっしゃる通り、来てよかったですわ!」
予約をして帰られました。なるほど。社交界の華がお話しされたのですね。これは私への予約も増えそうですわね。
個室を確保しなければなりませんね。ブルー兄様に頼んで準備してもらい、リーリア恋愛相談室もオープンすることになりました。恋する女神様達は喜ぶでしょうね。
また王妃殿下から「あら、私達も鑑定してもらって、充実した夜を過ごせたわ」という、とある夜会での意味深発言により、予約が殺到することになりました。
もちろんご夫婦やカップルで鑑定の表示をお願いにいらっしゃるのですが、時には浮気相手と来ることもあり、なかなか奥が深いです。
王太子殿下もお祝いに来てくださいましたが、あいにくすでに予約がいっぱいの私は御礼状をおくるだけになってしまいました。
王太子殿下の婚約者が社会勉強でカフェを経営されているとの物珍しさでお客様は貴族も多く、二階の個室はつねに2か月先の予約まで満杯となりました。2時間ごとの予約で、個室利用料を追加したのも良かったのでしょう。経営は黒字の右肩上がりです。
飛び級制度試験はもちろん合格で、中等部からの入学ですが、この予約状況を見ると試験のみだけの自由な校風のところへ行きたいですわね。儲かります。ほほほほほ。




