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59、飛び級制度試験

 飛び級制度試験会場へは早めに着いたはずでしたが、意外と混んでいました。


 ただ、この制度は貴族が使用していると聞いておりましたが、早く来る貴族の方は少ないようです。平民の裕福な家庭の子供でしょうか。あまり見ない顔が多いようです。ハンカサイ商会の息子ビオラさんにも会いました。逆に王都から遠かったりする下位貴族は来ないのかしら。思ったほど多くないようです。


「お久しぶりです。リーリア様」


「ビオラさん、お久しぶりです。試験頑張りましょうね」


「はい。小学部に入るとその間、商会の手伝いや勉強もできないんですよ。受からなきゃ」


「私も本屋カフェのオーナーになったのよ。受からなきゃね。ふふふ」


 上位貴族は飛び級試験クリアが絶対条件なのよ!とお姉様がさんざん脅してきました。ビオラさんに会えましたので、自分がやりたいようにするために受かろうと気持ちを乗せることができました。いいです。やる気をもらえた感じですね。


 座席はカンニング防止のため、当日までランダムです。身体検査を受けていると後ろからざわめきが聞こえてきました。


「聖女様よ。王太子殿下と一緒にいらっしゃったわ!」

「聖女様も受験されるのかしら。すごいわね」

「なんだか2人仲睦まじい様子ですわね。お似合いじゃない?」

「しー。婚約はそれぞれ違う人よ。ほら、あそこのオーキッド伯爵家リーリア様が王太子殿下の婚約者よ」

「ああ、あの方ね。きっと政略的に無理矢理婚約をねじ込んだのよね。聖女様と王太子殿下が仲良さそうで心中穏やかではないでしょう」


 聞こえています。そして、無理矢理婚約をねじ込んだのは私ではありません。だから早く婚約解消したいのです。させて貰えないのはこちらですと言いたいです。目立ってますわね。面倒です。


 会場は殿下がきてから急に混み始めていましたので、さっさと会場へ入ってしまおうと前を向きます。苦笑いするビオラさんと目が合いました。これは、聞こえていましたね。


「行きましょう」


 私が声をかけて2人歩きだそうとすると


「リーリア様!」

「リリー!」


 呼びかける声がします。聞こえなかったことにしていいかしら。試験前に面倒だわ。歩きだそうとしたら、


「…呼んでるよ」


 ビオラさんがまた苦笑いしながら、今度は足を止めました。

 …ですよね。はぁ。


「先に行ってくださいませ。目立つので余計な事件に巻き込まれてしまいますわ」


「…ありがとうございます。ではまた商会で」

「ええ、お互いの試験の健闘を祈りましょう」


 お互いに頷き合い、私は留まり、彼は歩き出します。


「リリー?今のは誰?」


 追いついた殿下はすぐに先程の男の子について問いただします。自分は聖女ロゼッタ様を婚約者ばりにエスコートしてきておいて、どうして私がすぐそこで会った人に挨拶してるだけでそんな顔してるのかしら。おかしいんじゃない?


「殿下には関係ない方ですわ」


 棘のある言い方になってしまったのは致し方ないです。フェリスは明らかにムッとした顔になり。


「リーリア様、あの、これは」


 険悪な空気を察したのか聖女ロゼッタ様が説明しようとします。


「試験前に、たまたま知り合いに会っただけですわ。殿下もロゼッタ様にたまたま会っただけでしょう?」


 嘘です。教会へ迎えに行って連れてきたんだって、さっき話している方がいらっしゃいましたもの。


「…聖女様は初めての公の場だから目立つだろうと護衛も兼ねてクリスに頼まれた」


 …正直ね。

「では、最後までエスコートなさっては?私は先へ試験会場へ向かいますから。失礼いたします」


 ここにいるとむしゃくしゃして来るのでさっさと逃げようと思いました。


 去り際にも、聞きたくない、ひそひそ声が聞こえてきます。


「冷たい方ね。やっぱり政略的な婚約なのね」

「でも、婚約者を取られて怒るのもわかるわ」

「殿下は聖女様を選んでいるんだ」


 私語厳禁の試験会場へ自然と早足になりました。

 どうして私がこんな目に合うのでしょうか。婚約解消したい気持ちは強くなるばかりです。


 試験が終わったら本屋カフェに集中して殿下のことなんて忘れましょう。


 いろいろと忙しくなりますしね。最後の手紙はいつだったかしら。会ったのは夏の領地だったものね。聖女様とは毎日のように会っているのかしら。はぁ。


 気分が乗らないままの試験となりました。帰りは話しかけられそうになるとわかっていたので逃げるように試験会場を後にしました。むしゃくしゃします。帰ったら甘い物を所望しますわ。



 試験のご褒美にシュークリームタワーを作ってもらいましょう!たっぷりのシュガーを乗せたクッキーも!


 帰り道は甘い物だけを考えておりました。


 だから、殿下が馬車で追いかけてきていたのを知りませんでした。


「逃げるってわかってたよ。リリー」


 家の前に止まった馬車から降りたら、同じく馬車で追いかけていた聖女様とフィルリス殿下に捕まってしまいました。


「試験おつかれさまでございました。私、これから予定がございますの。失礼いたしますわ」


 家まで追いかけてきた人ですが、そもそも勝手に付いてきたのですもの。構う必要なんてないですわ。予定はあります。ご褒美シュークリームタワーです。


「それは私よりも大事?」


「ぇ、ヤンデレ?こっわ」


 聖女様、言葉遣いが乱れ過ぎでございますわ。前世でヤンデレという言葉が流行ったのはいつだったかしら。生徒がヤンデレキャラを紹介してくれたのが、最初でしたわね。


 …現実逃避しておりました。真剣な表情が怖いですわ。


「…わかりましたわ。どうぞ」


 さすがに王族を門限払いするのは世間体が悪過ぎですからね。殿下の怖い顔に負けたわけではないです。

お読みくださりありがとうございました!!完結まで書けたので嬉しくて連投してます。


もしお時間ありましたら、下のブクマや評価、よろしくお願いします。


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現代物の軽い読み物です。恋愛なしでゆるっと1500字程度ですので、こちらもよかったらよろしくお願いします!
授業中に居眠りする彼の事情
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