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5、料理スキル

 厨房へいくとちょうど3時のおやつの準備が終わって片付けに入っているところでした。


「少しお邪魔してもいいかしら?」


「はい!リーリアお嬢様、料理スキルですよね!」


 もう情報が流れているようです。歩くスピーカーがいたのかしら。


【ヴィユノーク・リットル(男)29歳 オーキッド伯爵家副料理長、新妻を溺愛、脇フェチ】


 鑑定スキルを発動させる。新婚さん。あと、スキルはなければ表示されないのね。なるほどです。


「今リーリアお嬢様のところにお菓子を持っていったところでした。すみません。入れ違ってしまったようです」


 ジーナがいなかったので取りに行ってたのでしょうね。後で食べることにしましょう。


 厨房には甘いお菓子の香りがまだ残っています。台の端に無造作に置かれたカゴに入っているのはゴロゴロしたじゃがいもです。


 ポティトチップス!


 前世で自分で揚げたてを好きな味にして楽しみました。思い出したらもう食べたくて仕方ありません。甘いお菓子にピッタリの塩っぱいお味に致しましょう。


「じゃがいも、夕飯で使いますの?まだ在庫はございますか?」

「あります」

「こちら、ひとかご使って作ります!」

「じゃがいものお菓子?聞いたことないです」


 ワクワクしてこちらを、見つめるのはミールと、副料理長、あとは会話を聞いてきて片付けが止まった3人の調理人達です。


 甘いお菓子の後にしょっぱい系のお菓子を食べたらまた甘いお菓子を、甘い、しょっぱい、繰り返して手が止まらないでしょうね。ああ。想像しただけでお腹が空いてきました。熱い揚げたてにふぁっとかけるのはやはり塩

 でしょう。油切りをしているポテトに絡む塩。


「スライサーはある?」

「スライサー、とは何でしょうか?」

「無いのね。分かったわ。包丁とまな板を借りるわ。あと、お鍋に油を入れてもらえる?」

「じゃがいもを揚げるのでしょうか?」

「そうよ」

「味付けはシンプルに、塩。あと胡椒もあるかしら?」

「はい」


 じゃがいもを剥いていきます。5歳の女の子に持たせるのって普通は躊躇いそうだけど、スキルがあるとわかっているからでしょうか、普通に使わせてもらえました。


「お嬢様は今まで料理されたことはなかったはずですよね?」


 私の手がスムーズに動くので副料理長は驚いているようです。


「料理スキルのおかげかしら。ふふふ」


 いえ、前世のおかげです。独り暮らしが長くて、ご飯作りには時間をかけておりましたから。


 前世ではロリータファッションを日常で着こなす女性と結婚なんて、奇跡に近いと感じておりましたから、もちろん生涯独身でした。現実の恋愛で上手くいかないと諦めてからは恋愛小説をとことん読み漁っておりました。役に立つことがあればよいのでしょうが。



「手伝いましょう」

 その副料理長の声で他の片付け途中の料理人達もお手伝いしてくれるようです。


「これくらい、薄く切ってもらえますか?」

「はい」

「あとは、表面の水気を取るために紙があれば」

「はい」

「高温の油の中にできるだけ一枚ずつになるように入れていくのよ」

「はい」


 パチパチと良い音がしてきます。薄いのですぐにパリパリになりました。


「揚がったらすぐに油切りをして」

「はい」

「塩をかけます、もう一皿分には塩こしょう」

「はい」

「混ぜます」


「リーリア様、お菓子をお持ちしましたら、すれ違ったようです。すみません」


 ジーナがやってきました。黒髪のショートカットが似合う護衛もできる侍女です。


「ジーナ!良いタイミングね!」

 さぁ、食べましょう。


「え、お嬢様、これで完成ですか?」

「ええ、そうよ。まずは試食をどうぞ」

 こんな単純な調理方法で美味しくなるのかという疑問の顔ね。


 料理人達も興味津々です。


「お腹、すきませんか?皆さんで食べましょう」


 私はもちろん、甘いお菓子と一緒です。

 まずは皆さんが躊躇っているポテトチップスからですね。


「パリッ」


「んー!」

 まずはこのパリパリよね。じわっと油味を少し感じたあとにくる、塩味。バッチリね。スライサーなかったのに、ほとんど同じ薄さに切りそろえて完璧だわ。


 おそるおそる、最初に手を出すのは副料理長。


「!!」


 食べた瞬間、目が輝いたのは気の所為ではないでしょう。


「止まらない味でしょう?」


 そう言いながら私は2枚目を口に入れます。


「ええ、素朴なはずなのにあと引くうまさ。これは美味しい。驚きです」


 ポテトチップスに手が伸びていきます。

 パリパリ食べながらそれぞれに話しはじめました。


「副料理長は新婚さん?」


「ええ、3ヶ月前に籍を入れたばかりでして」


「初恋の人だったの?」


「いいえ、え、もしかしてお嬢様、初恋?」


 ポテトチップスのせいでだいぶくだけた感じに突っ込まれました。お菓子は偉大ですね。


「初恋はまだですわ。たぶん、王都へ行ってから王太子殿下を見初める流れなんじゃないかしら」


 私もくだけて話します。


「たしかに王太子殿下はすっげぇ美少年って聞いてます。すでにスキルも発表されましたし」


 くだけて説明を加えるのは料理人の1人。


【ツアン・スワン(男)23歳、オーキッド伯爵家料理人 、リーリア侍女ミールへの恋心爆走中、うなじフェチ】


「私が王妃になるのかしらね。候補者はいっぱいいるみたいだけれど」


 危ない。うっかり表情にでてしまいそうになったわ。無意識に鑑定してたみたい。あまりにもくだけて話されたから気になってしまったわ。


「王太子殿下もリーリア様に一目惚れされますよ!きっと」


 ミールが励まします。その横にちゃっかり座っている料理人ツアンさんが気になります。


「ミールの初恋って?」


 さぁ。ツアンさんのためにも、ミールの初恋こじらせ理由を聞きましょう。

のんびりペースで、あらすじのネタまで時間がかかっております。お読みいただきまして、ありがとうございます。ポテチが食べたくなった方は下の評価をポチっとしてもらえたら幸いです。

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現代物の軽い読み物です。恋愛なしでゆるっと1500字程度ですので、こちらもよかったらよろしくお願いします!
授業中に居眠りする彼の事情
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