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56、朝の紅茶

 夜会の後の屋敷の朝はゆっくりと始まります。私ものんびりとこれから朝の紅茶です。


「紅茶をフィルリス殿下の侍女からいただきました。おもてなしでお疲れの様子ですので、朝飲むとスッキリするおすすめの茶葉ブレンドとのことですわ」


 エネミルが淹れたてを用意してくださいました。爽やか?というより酸味が強いわね。淹れ方失敗したのかしら。


「エネミル、これ、淹れ方に注意とかなかった?」


「いえ、特には」


 こんな時は鑑定してみましょう。


【紅茶:淹れたて、爽やかなレモングラスと胃腸に優しいオレンジピールをメインに組み合わせた王国御用達の茶葉専門店ミノから購入、商品名は’爽やかな朝‘、王太子殿下侍女が毒入りでプレゼント】


「毒入り」


「リーリア様?いかがなされました?」

 エネミルは私の呟きが聞こえていなかったようです。この人は毒入りとわかっていて淹れたのかしら。とにかく、飲まなくて良かったわ。あとは誰が。フェリスの侍女と言っていたわね。


「紅茶をいただいた侍女の顔は覚えております?」


「ええ」


「すぐにフィルリス殿下へ会います。いただいた茶葉を持って」


 ただ事ではないと感じたのでしょう。サンレーがすぐに茶葉を回収し、紅茶もそのまま運びます。


「お待ち下さい。せめてお召し物の羽織を」


 エネミルが追いかけます。この人は私の護衛もできる侍女として選ばれたと最初に聞いていたわ。侍女としてのスキルは確かにミールやジーナと比べたら劣るけれど、まさか毒入りを主人に届けるとは。


 彼女を思わず冷たい視線で睨んでいました。事情がわからない限り彼女を責めるのは違います。ただ、私が飲んでいたら彼女はすぐに犯人の一人として捕らえられたでしょう。なんらかの責はあるのでしょうね。


「歩きながら説明するわね。エネミル、サンレー。静かに落ち着いて聞いて。今サンレーが持っているのは毒入りの紅茶よ」


 サンレーはすでに察していたのかピクッと眉を動かすだけでした。エネミルは見るからに動揺し、せめて大きな声を出すまいと手で口を抑えました。屋敷はとても静かです。まだそれぞれの主人に夜会明けの朝の対応をしている時間なのでしょう。


「紅茶を渡したのが殿下の指示なのか、いつから毒入りになったのか、わからないけれど、私へのプレゼントなのよね?」


 エネミルは手を口で抑えながらこくこくと頷きます。


 私が狙われたのは間違いないと思いますが一応確認をしたほうがよいと思います。


 状況を判断したのか、ハムラとスッと目が合いました。

「至急お母様へ報告してほしいわ」

「すでに異常ありとの伝言しております。直に殿下の部屋へ向かわれるはずです」

「陛下の部屋も近いですもの。殿下にも毒見役はいるはずでしょう?」


 大丈夫よね?

 想像すると同じ紅茶を飲むかもしれないフェリスへの心配がどんどん大きくなります。自然と早足になりました。


コンコン

 軽くノックすると、すぐに返事がありました。

「おはようございます。リーリアです。失礼します」


 カチャッとドアを開けると先程の私と同じ様に紅茶を飲み始めようとする姿が。


「待って!!」


 口をつけるまえに、間に合ってほしいと走り出します。


「どうしたの?まるでクリスみたいじゃないか」


 そう言いながらゆっくりとカップをソーサーに戻しました。


「鑑定してますの?こちらの紅茶」


「いや、してないよ。毎日飲んでるものを持ってきたし。まさか」


「鑑定、表示」


【紅茶:淹れたて、爽やかなレモングラスと胃腸に優しいオレンジピールをメインに組み合わせた王国御用達の茶葉専門店ミノから定期購入、商品名は’爽やかな朝‘、毒なし】


 毒なし表示を見てホッとしました。急いで駆けつけて床に座り込むほどには気持ちが揺れていたようです。


「…よかったぁ」


 座り込む私と紅茶と茶葉を持つ護衛のサンレーを見て状況を想定できたのでしょう。険しい顔つきになり、鑑定士を呼びます。


「この紅茶を買って渡してほしいと命じたのは私だ。そうだな?ルシール」


 呼ばれた彼女はカタカタ震えて今にも泣き崩れそうです。彼女が買ってきて、おそらくエネミルにも渡したのでしょう。


「私が定期購入しているものに加えてプレゼント用にと買いに参りました」


「…誰に渡すものか伝えたか?」


 私は侍女エネミルを見ます。彼女はゆっくりと頷きました。渡したのは彼女なんですね。


「いえ、ただ、分かっているようでした。私が王太子殿下の侍女であり、婚約の話はでてましたから」


「ということは、リリーを狙ったものであるのは間違いないな」


「至急店の者を確認だ。ルシール、購入時に対応した者を覚えているか?」


「申し訳ございません。覚えておりません。でも、まさか、そんな」


 青ざめる彼女は今にも倒れそうです。


「失礼します。フィルリス殿下、事情をお聞きしても?」


 お母様、お父様、そしてブルー兄様が入室してまいりました。


「…場所を移しましょう。そして、陛下もお呼びください」


 フィルリス殿下の指示に従い全員が集合しました。


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現代物の軽い読み物です。恋愛なしでゆるっと1500字程度ですので、こちらもよかったらよろしくお願いします!
授業中に居眠りする彼の事情
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