53、本屋と喫茶店
ハンカサイ商会へ向かい、ラックスへ説明すると、あまり良い反応ではないようです。貴族の利益なし事業と思われているようです。
「目的が本なら本屋へ行きますし、本を読みながらお茶なんて、汚してしまわないか不安で読めないかもしれません。ただの喫茶店にしては?」
「いえ、ちゃんと儲かるように工夫しますわ。本は売れなくても本があるということだけで、他のカフェとの差別化ができますし、カフェは私のオリジナルのレシピでいきますわ。本を購入頂いたら割引チケットがついたり、あとは、読書会なんてイベントもいいわね。特定の本が好きな読者を集めてファンの調べとか、作家さんのサイン会も素敵よね!」
ブックカフェならではの良さをアピールしていきます。前世の図書イベントの応用です。なんとかなるでしょう。
「…なるほど。そうなると、場所はどうでしょう。カフェとすると飲食街ですが、本屋となると雑貨側。カフェにオープンすると、本屋からクレームがくるかもしれませんし逆もありますよね」
「区画はざっくりと分かれているだけよね?本屋にある量を置いたり集めたりは厳しいから、カフェにオープンがいいわね。あと、本は月毎にでていてもうすぐ新刊がでたりするものや大量の売れ残りを安めで買い取りして最初はいきましょう。本屋にとっても在庫処分できるからそこまで不満はないかもしれないわ」
その本はもちろん定価で売ります。あとは少し高めの金額設定です。
「なぜですか?十分魅力的ですから他のカフェと同額のほうが間違いなく儲かると思いますが」
「先程話しました差別化です。ちょっと高いことで、特別感を演出するの。本を扱っているから、その分の運営費用として少し高めの金額設定とさせていただいております。とするの。あとは他の喫茶店から嫌がらせされないようにね。共存共益がいいじゃない?」
「なるほど。そうですね。確かに」
ブルー兄様は静かに聞いています。売れ残りの本に関しても特別感を演出して売ってみせましょう。読ませる工夫、本屋カフェへ足を運んでもらうための工夫は前世の図書館勤務の経験を活かしてまいりましょう。
「なるほど、では、カフェオープンとして考えて動きましょう。場所探し、仕入れ先との契約、人員募集、広報、となりますが、本屋とのやり取りもこちらでしましょうか?」
「いえ、自分で選ぶわ。本のチョイスも大事なことよ。おそらく同じようなお店ができたときに特徴をださなきゃいけないはずだから。最初からこだわります」
「ハンサカイ商会運営のカフェは現在王都にて2つございます。これまでにない本屋カフェ、きちんと利益も考えられているのですが、何分大きな事業となりそうです。担保がほしいのですが」
「例えば?」
ここでお兄様が発言します。
「傘の製造権です。デザイン料はお支払いいたしますので、もう少しお任せいただければと思いまして」
商会運営で学んだわ。今は製作順をお母様が伝えて順番に作成しているはずです。
「もちろん、お渡しする方の順番はお守りいたします。製作過程で量産も考えると効率も悪い部分がありまして」
「いいわ。お母様には伝えておくわ。順番を守るのであれば問題はないはずよ」
ほっとしたところに、
「そのかわり、デザイン料は収益の20%いただくわ。1回きりにはいたしません」
少し考えたようですが、十分に利益確保できると計算できたのでしょう。
「かしこまりました」
「30%でもよかったのに。こちらも担保の保険ということで」
お兄様が3割とあげて、担保はこれで問題ないでしょう。相変わらずの美声で、発言力があるわね。
場所が見つかったら連絡をもらうことになり、商会を出て、これから本屋です。
「さあ、買い取りしていきましょう!」
本屋巡りをして、安く買い取りしていきます。毎月買い取りしてほしいとのお話もありました。偶然にも、売れ残りが重なることはなかったのが不思議でした。本屋も他店との区別のために特徴を出したい感じなのでしょうか。絵本や児童書が多めのところ、図鑑の種類が多いところ、歴史本が豊富なところ、と様々に売れ残りがありました。以前に流行った恋愛小説も売れ残りがありましたので買い取りました。
あとは、人員募集よね。
帰りの馬車でお兄様に聞いて見ると、
「求人を出してもらえばいいよ。伯爵家が絡んでるってだけで募集するのがわんさかいるからね」
心配なさそうです。あとはいい場所が見つかればいいのですが。領地に戻る前に決められそうにはないですわね。
「お兄様、今日はありがとうございました」
「また行こうね。私も本屋カフェが楽しみだ」
「はい!」
明後日には領地へ戻ります。商会からの連絡を待ちつつ、お母様としっかり話して細かいところを詰めていきましょう。




