52、姉の恋人
【サントス好き、卒業パーティで告白の返事すると気合入れ中】
もちろん、件の彼ですわね。うまくいっているようで何よりです。卒業パーティーはせっかくだから美女と野獣風に仕上げてほしいですが、もうドレスは決まっているのかしら?
「ふふふ。あの大きな殿方は確かに結婚したいっておっしゃっておりましたものね。婚約はもう?準備中?」
「準備中よ」
嘘です。私はお姉様が告白の返事を返していないことを鑑定してますわよ。お付き合いで何度もデートしているはずです。相手を待たせているのでしょうか。
「彼の卒業後、婚約するつもりよ」
ふふふ、と美女の微笑みです。幸せそうですね。
「卒業パーティーは何色をお召しになりますの?」
「彼から送られてくるのよ。卒業パーティーだけでもと言ったことをまだ後悔してるみたいで、ずっと一緒にいたいって、最初にドレスを贈る男になれて幸せですって」
嬉しそうに破顔して、その後真っ赤になりました。思い出しているんですね。
「お姉様も恥ずかしがらずにその時にお返事差し上げたらよかったのに」
「…え?見てたの?いや、えーっと、そうね。気持ちをちゃんと伝えるわ」
そうです。相思相愛ってそういうことですよね。
私はフェリスへ好きってまだ言えないです。だってちゃんと好きかまだわからないもの。
「何色のドレスが送られてくるのかしら。卒業式まであと2週間でしょう?」
「その前に試験があるわ」
スッと現実に戻った表情になるお姉様です。芸術関係は心配ないですが、他は良くも悪くも平均と聞いています。伯爵家としては平均以下をとることは避けねばならぬことのようです。
「夏休み、楽しみにしてます」
少し冷めてしまいましたが、爽やかなレモンティーと砂糖たっぷりの紅茶の残りを飲み干します。
「ふう」
「今日はゆっくりお休みなさい。夜ご飯はビーフシチューときいてますわ」
ビーフシチューは私が前世で拘って作っていたので、レシピは完璧に覚えておりました。
「…楽しみですね」
☆☆☆☆☆
お父様の帰りと一緒にブルーお兄様も帰ってこられました。
「リーリア、フィルリス殿下がリーリアを追いかけて領地へ向かったと聞いたけど、本当だったんだね。すでに城では話題になっているよ。どういうことかな?」
ブルーお兄様、少し怖いですわね。お母様のようですわ。微笑みながら怒っていらっしゃるのかしら。こうなったら先に言ってしまったほうがいいです。怒られることはしてないはずですが。
「婚約解消を申込みしましたら殿下により領地から連れ出されました」
「本人に?直接?婚約解消を?はははっ。なるほど。リーリア、そういうのは外堅めをしてからがいいんだよ。そういう意味ではフィルリス殿下は上手いな。すでにリーリアを本命と定めていることを見せつけている。逃げられないくらいにはね。ま、リーリアが本当に本気で婚約解消したいなら手伝うからこれからは先に言ってね」
逃げないでって言われたことを思い出し、王太子妃とお父様の前ではっきり言ったこともリフレインされました。意味が分かり、こくりと頷きます。
もしかして、詰んでませんか?しばらくは婚約解消の話はしないほうが良いでしょう。まだ6歳ですもの。これからよね。
とりあえず、婚約解消の時に困らないように、何か自分で稼ぐことをしておかなきゃね。前世の時も結婚しない選択をした時、仕事に支えられたもの。
「お兄様、わかりましたわ。相談します」
前世でしたかった職業といえば、カフェの店員よね。でも、カフェはこの世界にもあるし、何か珍しい組み合わせとすれば。
“ブックカフェ“
そうよ。この世界では本を読みながら過ごすブックカフェがないのよね。
「お兄様、本屋と喫茶店を合わせたお店はありますか?」
まずは確認よね。本屋にカフェを併設するにはどこに申請すればいいのかしら。
「無いかなー。また市場調査してみる?領地に戻る前に」
ええ、王都でしっかり調べてから準備しましょう。ブックカフェ。想像してきたらわくわくしてきました。楽しそうです。
そうと決まったら、商会とお母様に相談よね。お母様にお手紙を書いて、明日、市場調査で商会にも寄りましょう。
ビーフシチューはお肉がホロホロで私のレシピ通りに作ってくれています。メインランチはこれにしましょう。後はカフェメニューも開発です。
「リーリア、明日出かけるの?ちょうど休みだから一緒に行くよ」
商会への伺いやり取りしているとブルー兄様が一緒に行ってくださることになりました。ブックカフェの利益がどれほど取れるのか仕入れ含めて考えるために、お兄様はかなり心強いですわ。助かります。
さあ、出発よ!
予想通りでしょうか。
年度末進行にてストックが減ってます。




