表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/72

51、婚約継続

 王都にあるタウンハウスは、姉が出迎えてくれました。


「リーリア、急に戻ってきたから驚きましたわ。フィルリス殿下、リーリアをお送りいただきまして、ありがとうございました。少し休憩なさいますか?」


「うん。ありがとう」


 フェリスの無邪気な笑顔にお姉様が顔を赤くしております。



 ☆☆☆☆☆




 客間で二人、同じソファに深く座ります。


「「ふぅ」」


 そういえば、旅路はいくら道がきれいであっても殿下は一泊してからすぐに王都に戻ってきたのだから疲れているわね。私は婚約解消したっていいのに、連れてこられたのよね。


 紅茶が運ばれてきましたが、今日はさすがに疲れたから、砂糖たっぷりの紅茶にレモンを載せたいわね。


「レモンのスライスはある?」


「厨房へ確認してまいります」


 急なお出かけで一緒に来ましたエネミルが対応してくれました。レモンの砂糖漬けを作りたいわね。


「フェリス、結局婚約解消だけど」


「え?しないよ。わかったでしょ?鑑定にもリーリア大好きってあったじゃん」


 じゃん、って、開き直りですか。聖女様を好きになるかもしれない兆候も表示されたのに。


「ええ、だけど、他に好きな人ができたらすぐに解消させてね」


「…リリー。私が君の領地まで行ったことは、いくらお忍びでも、みんな気づいてる。逃げないでね。夏は予定通り行くからね」


 逃げないでって。別に逃げてなんかいませんわ。でもそう言うと領地に一人で返して貰えない気がするので黙っておきますわ。


「しかし、前世の記憶持ちか。このことは父上にも話しておかなければな」


「あの、前世の記憶を持っているのは珍しいことではないんですの?」


 もし珍しいことではなかったら、私も前世持ちとバレても問題ないのかしら?


「そりゃ、珍しいことかもしれないけれど、いないことはないからね」


 そうなのね。でも、陛下に報告?何故?


「いないことはないって、多くはないってこと?聖女様が前世の記憶持ちだと、問題があるの?」


「聖女は回復スキルや治癒スキルが高い者に与えられる称号だが、今回のロゼッタ様は女神様の慈愛を受け、予言をも出せるものであるから、特別な配慮が必要だろうな」


「確かに。他国にも狙われそうね」


「早めに婚約したいだろうな」


 くくくっと笑って、何を考えているのでしょうか。


 その時、階下から駆け上がってくる足音が響きました。多分お父様よね。


「フィルリス殿下、わざわざお送りいただきまして、ありがとうございました」


「大儀ないです。手紙は読まれましたか?急な訪問となってしまって」


「いえ、この度はうちのリーリアが婚約解消を手紙に書いたと家内から聞いております」


 ちらっと私を見ます。いや、悪くないし私。


「婚約は解消しない。そのために領地まで訪問し、誤解を解くために教会へも行ったんだ」


「さようでございましたか。それで、娘は納得しているのでしょうか?」


「私がリーリア嬢と婚約解消しない、というのはわかってくれた」


 ふんっと聞こえてきそうなフェリスの回答です。私は追加で


「今は、です」


 と言っておきます。あくまで“今は”です。人の気持ちは変わるものですから、もう少し大人になったら違うかもしれません。


「そうですか。婚約が早すぎたと思っていたから心配していたんです」


 お父様、本音が混じっております。


「今も、これからも王太子妃に一番近い人だと思ってくれて構わない」


 おうふ。それはなかなか重い発言ですわね。ここで話すことではなさそうです。


「ありがたきお言葉。妻も喜ぶでしょう」


 お父様はさらりと無難に返事します。


「リーリア、殿下を城までお送りする。挨拶なさい。領地にはまた戻るのかい?」


「もちろんよ。殿下が来るのであれば、領地で準備させていただきますもの」


「…今更。もう一緒に向かえば良いんじゃない?」


「領地で待ちますわ。歓迎しますから、楽しみにしてくださいませ」


「…ふふふ。頑固だなぁ」


 どっちが!婚約継続を譲らなかったじゃない。まあいいわ。こっちは婚約解消されても構わないように動いていきましょう。


「また領地で。大好き、リリー」


 お父様が止めるまもなくぎゅーっとされました。そうなのよね。鑑定では大好きって、私のこと、大好きって。今更だけど恥ずかしくなってきました。きっと私の顔は真っ赤です。


「…」


「リリーは?私のこと、ちょっとは好き?」


 そうね、政略的な婚約を許しているんだから、ちょっとは好きなのかもしれない。


「わかりません」


 プイッと顔を外らします。フェリスには赤くなっている首が見えてるのでしょう。また、笑われました。


「道中お気をつけて」


 夏までには解消されることは、ないわ。


 リーリア、さっさと戻って準備よ!


 お父様がフェリスを送っている間、お姉様と久しぶりに話していきます。


「…婚約解消かあ。やっぱり婚約って簡単にするものではないわよね」


 どきっ。はい。すでに婚約したことを少し後悔しております。お姉様の心に浮かんだのは彼でしょう。鑑定させていただきますわ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代物の軽い読み物です。恋愛なしでゆるっと1500字程度ですので、こちらもよかったらよろしくお願いします!
授業中に居眠りする彼の事情
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ