50、殿下と聖女(下)
【ロゼッタ・ブロッサム(女)5歳、女神の慈愛、治癒スキル、聖女、転生者、前世で読んだ漫画と酷似した世界に困惑、クリスが好き、押しキャラは腹黒インテリ眼鏡】
【クリス・フォン・ザイデルバルト(男)10歳、指導者スキル、耐毒性スキル、スワンツィード王国王位継承権2位、尻フェチ、聖女に夢中、フィルリスとの共謀中】
【フィルリス・フォン・スワンツィード・マルシス(男)6歳、為政者スキル、武術スキル、スワンツィード王国王位継承権1位、リーリア大好き拗らせ中、聖女に好意あり】
「…何、この表示」
「…転生者?ロゼッタはどこか違う世界の記憶を持った人なの?」
「ほら、ちゃんとリリーが好きでしょ?わかった?」
フェリスのとこだけ見ないようになんてできません。鑑定して、ほっとする自分もいます。聖女に好意ありの表示に傷つかないわけではないですが、拗らせるほど大好きの表示に思わずこくんと頷くと、
「良かった。わかってもらえて。大好き、リリー」
フェリスにぎゅっと抱きしめられました。
「…仲直りしているところ悪いけど、ロゼッタの転生者について、説明してほしいんだけど」
「…そうだ。あたしの知っている内容と鑑定の表示も違うのよ。こんな表示じゃなかったわ」
「そもそも貴方が知っているとは漫画の世界?」
「そうよ!この世界と似ている作品があるのよ。そこでリーリア様はこの世界と変わらず殿下の婚約者で、毒の鑑定が得意な設定で、人の秘密を握って活躍する悪役令嬢なのよ!なんで?こんな恋愛ネタみたいなことしか書いてないの?」
すいません。恋愛脳で。私の恋愛小説の読み過ぎかもしれません。確かに人の秘密(主に恋愛や性癖)を知ることはできますが、弱みを握って?そもそもどうしてそんなことをしたのでしょうか?
「えーっと、ちょっと待って、転生者に驚かないの?」
と、クリス殿下。
あ、しまった。私が漫画を知っているのはおかしいわね。漫画って、もしかして、私と同じ世界の記憶がある人なのかしら。
「私は事前に見てましたから」
これでごまかせるかしら。
「私は驚いているよ。しかも漫画?でリーリアが悪役?何で?」
フェリスが私が悪役の理由を尋ねます。それは私も気になります。
「あくまで漫画の話です。あ、漫画というのは私の前世での本です。その本の漫画の中ではリーリア様は聖女であるロゼッタが憎くて、彼女の周りの人を巻き込んで毒殺したり、転落死や事故死させるんですよ。ただ、自分では手をくださないんです。鑑定で人の弱みを掴んで、操り、実行させるんです。最後は毒で王太子殺害を企み、自殺します。クリス殿下は」
「ちょっと待って、何で聖女であるロゼッタが憎いの?」
そこは私も気になりました。漫画のリーリアは怖いですわね。
「それは、えーっと、嫉妬?聖女ロゼッタに惹かれてる王太子を見て、聖女何誑かしてんの!みたいな?」
みたいな?って何でしょうか。
「そもそもこの世界では王太子殿下がめちゃくちゃリーリア様推しだし、なんとなくキャラが違うと思ってたんだよね。しかも婚約解消したいってリーリア様からくるし、よくわからないなぁって」
「貴方は漫画とは違う行動をとっていませんの?」
おそらく私がリーリアになったことで間違いなく不具合がおきていると思います。漫画で予想されたことをしないのですから。まぁその漫画の展開を知らなかったので、偶然ではありますが。彼女自身も漫画とは違う行動を取っているのでしょうか?
「えーっと、そうね」
急に目が泳いでおります。確実になにかありそうです。
「ええ。あの漫画は好きだったけれど、実際に人が死ぬのは嫌だし、個人的にクリス殿下のほうが見た目がどストライクで好きだったから、最初からクリス殿下に近づいたの!」
じっと見つめていたら、白状しました。鑑定されてると思ったのでしょうか。
「―ロゼッタ!!」
二人はまたお互いを見つめ合い、ピンクのバラが咲き始めました。また始まるのかしら。
「と、いうことは漫画ではクリス殿下は?」
と、思ったらフェリスがさっき言いかけていたクリス殿下の情報を聞き出します。
「…クリスはリーリアへの思いを拗らせているの。リーリアに協力したとして生涯幽閉される」
「フィルリス殿下は?」
「聖女様と婚姻。ま、前世の話よ??」
クリス殿下の黒いオーラに慌てるロゼッタ様。
「…私にはロゼッタだけなんです。お願いします。お慕いしております」
「…漫画と同じセリフだわ。ロゼッタになってるけど」
呟くロゼッタ様はクリス殿下の肩に触れ、擦りながら
「もしかして、物語の強制力があるのかな」
と不安そうな顔になっております。
「…登場人物が変更されてイベントが進む可能性ね。あるかもしれないわね」
前世の悪役令嬢系にあったかもしれないわね。もちろん生徒情報なのであまり覚えていないけれど。ただ、言えることは
「どちらにしろ、自分の意志で漫画と違うようにはなるようだから、知っている知識活かして生きるしかないわよね」
「うん」
「…あと、貴族社会で生きるのであれば、目上の人への言葉遣い、マナーに気をつけたほうがよろしいかと思いますわ。余計な目の敵にされちゃうかもしれませんし。ここではもちろん誰もいないから大丈夫ですけれど」
「あ、はい。ありがとうございます」
あ、大人ぶって伝えちゃいました。私も前世に引っ張られないように気をつけなければなりません。
今のところの変更点から考えれば、
クリス殿下が心変わりして、ロゼッタ様が悪役令嬢になるか、
ロゼッタ様への嫉妬からリーリアでない他の女性が悪役令嬢となる可能性があるだろうという話になりました。
「リーリア様、お会いできて良かったです。誤解も解けたみたいですし」
「私も聖女様に会えて嬉しかったわ。誤解?うーん。フェリスが聖女様に惹かれているのは鑑定にあった通りだから、もし強制力で変わったら受け止めてあげてくださいね」
「リリー?」
フェリスと繋ぐ手が“離さないぞ”というふうに強く握られます。帰りの挨拶の後は馬車でタウンハウスまで送ってもらいます。
お読みくださりありがとうございます。夏の領地ネタがまだ残っておりますが、その後は高等部のメインまで駆け抜ける予定です。




