48、聖女、ロゼッタ
閑話でしょうか?
聖女様目線です。
あたしの名前はロゼッタ・ブロッサム。
『ロゼッタ』という漫画の主人公だ。
しがない薬屋の娘に生まれたが、回復スキルと治療の方法を改善させていき、聖女と呼ばれる人間になるらしい。という成り上がりストーリーだ。
物語のスタートは薬学スキル持ちの姉が薬屋を継ぐのが決まっており、5歳のスキル鑑定を受けるまで穀潰しとののしられながら生きてきた。
スキルが発覚したと同時にこの世界が前世で読んだ漫画、『ロゼッタ』とそっくりであることがわかった。正直びびった。転生したのが漫画の世界とかありえないと思った。
スキルの定着後に具合が悪くなる子供もいると、自然に受け入れられる時間が合ったのは幸いだった。教会へ売るために生かしておくため、比較的人間らしい生活も送ることができた。ちなみに漫画の中の彼女、今はあたしがロゼッタなんだが、ロゼッタはこれから教会へ行き、様々な治療の中で王太子殿下と交流を持ち、助け、ともに戦うのだ。
誰と戦うのか?
それは王太子殿下の婚約者のリーリアである。
この人が恐ろしいほどの悪役令嬢で、鑑定で人の弱みを握り、王弟殿下の息子クリスと毒を用いて王太子を追い詰めていくんだ。振り向いてくれない王太子への拗らせた想い、王弟殿下の息子クリスはリーリアへの想いを拗らせてる。二人は後戻りのできないほどの悪事へと向かっていく。
リーリアは結局振り向いてくれないからって、王太子と一緒に死のうとするとこをロゼッタが助ける。そのあと彼女は自死しちゃうんだけど、本当の聖女として、王太子と結婚してめでたしめでたしっていう話だった。壮絶な駆け引きと王妃を巻き込んだ戦いはなかなかの展開で最後はあっと思わせた。
ただ、実際に毒で人が死ぬのは寝覚めが悪い。確か最初から王太子殿下の周りではぞろぞろと人が死んでたはず。物語の中で悪いことしたのは婚約者リーリアだけど、ここは現実。5歳までの記憶と身体が理解している。人が周りで死ぬのも現実。
実際に毒にも薬にもならないとされて5歳のスキル判定までとりあえず生かされてきた今のあたしがいる。
リーリアはまだ悪事を働くことはないはず。でも、小さい悪事は重ねているかな。素質は十分あるはずだし。物語通り、私は育ってきたわけだし。
そもそも王太子殿下があたしに惚れちゃうのが悪い。そこから死ぬ人もでてくるんだ。うん。あと、あたしが王太子殿下を好きにならなきゃいい。
正直、この漫画は王太子殿下より、王弟殿下の息子の方が好みだったんだ。あたしは金髪碧眼の王子然としているより、すこし影のあるタイプに惹かれるタイプなのだ。いわゆる腹黒メガネで賢いけど私には甘々な優しい人とか最高。
物語の強制力で王太子殿下は私に惚れちゃうかもしれないけど、あたしは王弟殿下の息子、クリスの方が好きだからそっちにいこう。んで、その腹黒キャラとラブ。これでハッピーエンド。拗らせるのもあたしにしちゃえばいける気がする。
そうと決まれば王太子殿下には会わないようにしなくちゃ。あとは王弟殿下の息子はどこで会えたかなー。たしか、物語では初めて会うのは鑑定した教会。
私が稀有なスキルがあることがわかって、両親がお金をもらって教会へ寄付して、毒親っぷりを見せつけられたあと、うん。ちょうど今ここ。
王弟殿下の息子が教会の庇護下にいるからそこで会えたはず。
人気のない廊下をこっそり移動して、ここ、知ってる。リーリアが打ち合わせする部屋。
「いた!」
漫画よりだいぶ幼いクリス。
やばい、かわいい。幼なクリスに会えた。ありがとう、神よ!ダークな感じはすでにあるわね。漫画の世界といっても、これは原作よりかっこよくなるんじゃない?楽しみ。ぜったい捕まえる!好き!好みどストーレート!
「はじめまして。クリス殿下」
いきなり漫画と違う展開でいくぜ。押せ押せ女子!。肉食系女子?なんと言っても関係者たちの命かかってますから。実際身近な侍女が死んだりしたら知っている分なんとかできるんじゃないかなと思ってる。死ぬの身近に感じたことがないから怖いし、絶対後悔するはず。
「あなたは?」
「治癒スキルと回復スキルで教会に売られたこどもです。ロゼッタといいます。突然ですが、私をお助けください。お願いします」
たしか、指導スキルを持っていたはず。この世界について教えてもらっていなかったから、教えてもらって、ついでに仲良くなる作戦!
私はこれで図書館へ通うことができ、勉強を教えてもらえた。やはり前世の記憶が残ったままだったため、簡単な読み書きはすぐにできるようになった。
「すごいな。ロゼッタは、これで治癒スキルも高いんだろう?すぐに聖女に認定されるんじゃないか?」
ええ、漫画では聖女ですから。漫画とは違ってクリス殿下が私に惚れてくれるといいんだけど。これだけ親しくなったらイケるんじゃない?
「聖女様に?リリーに鑑定してもらいたいなぁ」
でも強制力か、すでにフィルリスに会って、興味を向けられている気がする。これは好意なのか?でも、リーリアへの話題がつきない。幼いときにはこんな感じだったのかな。
「でた。フィルリスのリリー推し。いつの間にそんなに仲良くなったんだが。抜駆けして先に婚約しているし」
「そのほうが都合が良いだろう?クリスにとっても」
「…まあな」
私が漫画と違っている気がすると感じたのは殿下に会ってからだ。こんなに彼女リーリアのことを話すキャラだったかな?別にあたしもクリス殿下とこんなに親しくなかったから話は変わっているとは思ってたんだけど。強制力なのか、私とは会って話して少なからず好意を持っているみたいだし。
話の流れとしてはここかなと思いつつ、もっと後からでもいいようなと迷いつつのアップです。
読んでくださりありがとうございます。




