表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/72

46、前兆

「婚約解消?リーリア、何があったの?」


 ミールの契約と結婚したい相手がいることを話し、概ね気づいていたらしいお母様に私の方の本題を投げます。


「聖女様に夢中なお手紙をいただきましたの。いずれ解消されるならこちらから」


「だからって、聖女様はクリス殿下と婚約するはずよね?」


「私が先に解消したら、殿下は聖女様を選びますわ。好き同士の方がいいじゃない。というか、やはり早かったと思いますの。すでに発表してしまったので、解消の申込みをして、中学部入学の頃には殿下の想う方ときちんと結婚を見据えて婚約すれば良いと思います」


「婚約で、早めに繋がりをもっておきたい政略的な思惑は無視?貴族の娘として考え直しなさい」


 お母様に冷たく返されました。()()()()、わかっています。私が嫁ぐことによる家の発展も、前世が平民であることで考え方が平民になりがちなのも。


 でも、前世は好きな人と結婚することはできなかった分、今度は好きな人同士で結婚するのを叶えたいと思ってもいいじゃない。殿下だって好きな人ができたとき、婚約者がいたら迷惑だと思います。


 そして正直、好きでもない男の側室にされる人生は嫌です。婚約解消を殿下へ伝えてみようと思います。直接交渉です。殿下は聖女様に惹かれているんですもの。


 手紙に書いてもいいかしら。直接伝えて、喜んで解消しようなんて言われたら私に政略結婚さえも価値が無いようで、辛いわ。会うのは怖いから手紙にしましょう。



『フェリスへ

 突然ですが、私は婚約を辞退させていただきたいと思います。婚約を解消してしまったほうが、殿下にとっても都合が良いはずです。夏はいらっしゃらなくても結構です。優秀な聖女様とお聞きしましたが、試験前ですからお教えすることも多いと思います。どうぞよしなに。試験で会いましょう。リーリア』


 こんな感じかしら。前にいただいた手紙から特に返事が必要な感じもないものね。領地に戻るとわかると課題の話もしてくださらないのかしら。もう用無しなのよね。課題も聖女様とやらとすでに一緒に取り組んでもらっているのかもしれないわ。


 私達だけが読めるように封をして、届けてもらいましょう。


 侍女のミールへと手紙を渡し、速達で指示をだします。


「リーリア様、契約内容の変更手続き、ありがとうございます。結婚に関係してお休みも配慮いただいたこともお聞きしました。ツアンともしっかり将来設計について話すことができました。本当に感謝してます」


「そう、良かったわ。式はいつになるか教えて。婚約解消のタイミング次第だけれど、絶対出席したいわ」


「婚約解消、本当にされるんですか?」


 ミールは自分が好きな人と結婚できると安心したからか、今度は私の婚約が気になるようです。


「ええ、政略結婚より、好き同士、まではいかないかもしれないけれど、惹かれ合う者同士が結婚したほうが幸せになるわよ。女神様もそう鑑定されるはずよ」


「…そうですか。もしかして、先程の手紙には婚約解消を書かれましたか?」


「そうよ。だから領地へ遊びにくる必要もないと伝えてるわ」


「…リーリア様が婚約解消の手紙を送ったり、王太子殿下に交渉をはじめた時には直ちに報告せよと、契約に書き加えられています。失礼いたします」


 スッと退室していきました。お母様へ報告へ行くのでしょう。流石です。お母様は裏番長として、内情を抑えておきたいのでしょうね。


 その4日後、報告の理由が別のところにあるとは全然考えておりませんでした。



『リリー

 ごめん。よくわからないから今から会いにいく。この手紙が先に到着していればいいのだけれど〜フェリス』


 え?何で来るのでしょうか?来ないでって言う手紙を出したはずです。届いた手紙に混乱です。


「お母様!!フィルリス殿下が領地にいらっしゃると連絡がありましたわ!」


 さすがに王族が領地に来るとなれば対応も変わってきます。間に合うかしら?


「やはりね。リーリア、あなた、婚約解消の意思は変わらないのかしら?」


「はい」


「そう。フィルリス殿下の領地訪問は予想外?」


「ええ。お母様は予想されておりましたの?」


「ええ。もちろん。あなたが手紙を送った時点で準備したわ。むしろ来なかったら本当に解消しなければと思っていたのよ。ほほほ」


 お母様、予想していたら教えてくださいませ。私の心の準備はできません。


 手紙の届いた午後には先触れで殿下がいらっしゃいました。


「ようこそ、オーキッド伯爵家、クリサンセマム領へお越しくださいました」


 ありきたりなセリフでお母様と私の二人で出迎えます。


「出迎えありがとうございます。急な来訪となり、すみません。リーリア様と話をしたいのですが」


 皆さんでチラッと私のほうを見ないでください。私、悪くないですもん。


「夕飯まで少し時間がございます。こちらへ」


 お母様が客間へ殿下を案内します。私はお母様に見えない紐でくくられて、連行されて行くような気持ちで、後を付いていきます。


 心の準備はできていません。殿下は何のためにわざわざこちらへ来たのでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代物の軽い読み物です。恋愛なしでゆるっと1500字程度ですので、こちらもよかったらよろしくお願いします!
授業中に居眠りする彼の事情
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ