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44、手紙

『拝啓

 フィルリス殿下

 レターセット、ありがとうございます。早速書いていきますね。あの日は馬車で眠ってしまい、帰ってから他のプレゼントを開けるつもりが翌朝になってしまいました。しばらく領地に戻ります。夏頃には会えると聞きました。楽しみにしています。かしこ オーキッド伯爵家リーリア 』


『リリー

 殿下呼びにしたのは理由があるのかな?これからは公私ともにフェリスと呼んでほしい。私達の親しさアピールにもなるからね。私達の婚約に関して、教会からお祝いの言葉が届いた。あと、同時に、近々教会から発表されるけど、どうやら聖女の認定があったらしい。クリスが教会で聖女と認められる方と婚約する方向で進められているみたい。夏に会えることを楽しみにしている。安全な帰領を〜フェリス』


『フェリス様

 今まではお忍び仲間として書いていたけれど、やっぱり婚約者としてちゃんとしなきゃと思って殿下と呼ばせていただきました。いつも通りの手紙で大丈夫かなと不安だったので。これからは公私ともに呼ばせていただきますね。

 聖女様とクリス殿下の婚約、おめでとうございます。お二人に会うのが楽しみです。領地へ向かう馬車の中より〜リリー』


「リーリア様、おはようございます。フィルリス殿下よりお手紙が届いております」


 先に領地に戻っていたミール(結局少し早く帰しただけ)が優しい声で起こしてくださいました。


 って、手紙が届くの早すぎると思います。私は出発する直前に出しました。もしかしたら、私の手紙を受け取る前に送ったのかもしれません。急ぎでしょうか。


『リリー

 もう領地に着いたかな?来月には会えるから待っていてね。あと、教会で聖女に会ったよ。とても可愛い子だった。それに、聖女としての治癒スキルの高さに驚かされた。彼女も女神の加護を持っているそうだよ。婚約披露は小学部入学後らしい。優秀らしいからもしかしたら平民だけれど試験を受けて中学部からかもしれない。試験で会えるかもね。楽しみだ。リーリアのところに行くのも楽しみだよ。側近も決まったんだ。小学部の試験が終わったら紹介するね。会える日を待つ〜フェリスより』


「…とても可愛いって。婚約者に向かって他の女の子のことを話す言葉は選ぶべきだと思いますが、何も感じないのかしら」


 はっきり言って不快な気持ちになりました。思わず声に出すほどにはもやもやしています。

 あとは‘聖女‘ですか。疑っているわけではないけれど、鑑定してみたいわね。フェリスが夢中になっているのは文面で感じられます。国と教会のバランスを鑑みての婚約なら、クリス殿下よりフィルリス殿下のほうがより強固な関係を築けるから、都合がいいかもしれないわね。そもそも政略的な婚約です。ああ。フェードアウトしちゃおうかしら。なんだか自分が彼女に負けたようで、とてももやもやするけれど。フェリスがあちらに夢中なら仕方ないわよね。


 ──殿下は別に好きで婚約したわけじゃないし。都合が良かっただけなんでしょうね。


「「はあ」」


 ため息が重なりました。


 ミールはどうしたのでしょうか。先に領地に戻ってから楽しく過ごしていると思ってましたが、心なしかお疲れ気味のようです。さらに私の前でため息なんてミールらしくありません。


「申し訳ございません」


「いえ、ミールは領地に戻ってから何かあったの?ため息なんてついて。私はこの手紙へのため息よ。はぁ。他の女性を褒める男の方へ、婚約者としてどのように対応すればよいのでしょうね」


 前世は婚約なんてしたことなかったですし、お付き合いする以前の問題で、告白なんてしたこともなかったですし。


「きっと相手の気持ちなんて考えていないんですよ。リーリア様は側室にとでも考えているのかもしれません」


 ちょっと棘がある言い方です。珍しいですね。鑑定してみましょう。


【プロポーズされたが将来が不安で返事できずに悩み後悔中】


 プロポーズされたのね。生で見たかったわ。まあ…確かに結婚となると躊躇うこともたくさんあるわよね。けれど、前世で話を聞いているところだと、結婚を決めた人は、迷いや不満を口にしても、‘やっぱりこの人と一緒に‘って思って飛び込んでいるのよね。


 ミールは自分の不満や不安を話しているのかしら。そんな不安を受け止めてくれないような男にはミールは任せられないわ。


「側室」


 ミールの言葉の中に出てきた言葉を繰り返します。確かに王妃教育をしている私が側室としてサポートして彼女が王妃になる、王家から見ると理想的かもしれません。


「すみません。殿下のお気持ちは存じ上げませんのに憶測で発言いたしました。大変失礼いたしました。夏に訪問予定とお聞きしております。その際に思い切ってお聞きになってはどうでしょうか」


「…そうね」


 聞いてから判断ですか。むしろもう会わないほうがいいとさえ思います。手紙でさえ、聖女様へ惹かれているのがわかるので、実際にみるなんて、傷つくのは間違いないです。正直逃げたいです。会ってからまた聖女の話をされたら気持ちが落ち込んでしまい、結局疎遠になってフェードアウトしちゃうんだと思います。すぐには無理かもしれないけれど、小学部への試験の後ならタイミングがいいかもしれないわね。発表されたといってもまだお子様よね。それに、状況は変わるわ。聖女として認められている方との婚約ですもの。誰も文句言わないわ。そうよ。今は大々的に公表されたばかりだから何もできないけれど、いつか


「婚約解消を打診するわ」


「…え?」


「だって、聖女に夢中なら婚約解消したほうがいいじゃない?いつか裏切られるかもと思いながら過ごすのは辛いじゃない。それに、殿下もうっとおしいと思っているからこんなに早く手紙が届いたのよ。」


 ミールは少し驚いた様子を見せたあとに何か言おうとしましたが、ためらって言うのをやめたように見えました。


「あとポテイトチップスはどう?」


「こちらが資料になります。あと、厨房へご案内いたします」


 ちょうどあなたに夢中な彼の様子を見れるってことね。楽しみですわ。私の中では貴方達はポテチカップルなのよね。






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現代物の軽い読み物です。恋愛なしでゆるっと1500字程度ですので、こちらもよかったらよろしくお願いします!
授業中に居眠りする彼の事情
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