41、姉の婚約者?
「ートレミエール様へデートのお誘いにきました」
大きな声で玄関フロアで挨拶されております。
会うなりお母様とお父様にかくれたお姉様です。私は姿が見える2階の階段のところでこっそり覗いています。
現れたお姉様の婚約予定の彼は、銀色の短髪で眉毛がキリッとして、目のほりが深く、それでいて鼻立ちはスッキリとして、シャープな顎です。黒目をギョロッとさせておりますが、なかなか整った顔だと感じます。が、
「大きいわね」
思わず呟くほど大きい方です。もうすぐ卒業とあれば、ブルー兄様と同じくらいの年齢だと思います。お父様の頭2つ分はあるでしょうか。お姉様が男性に疑問符を付けたのは、人間?という枠なのかもしれませんね。
びくびくしてお父様にかくれているお姉様をみて、とてもしょんぼりしているように見えます。気の所為か、ぺたんと床についた尻尾が見える気がします。
「本当は、卒業パーティーへせめて一緒に来てほしいとお願いするだけのつもりだったのですが、すみませんでした。ただ、あなたと結婚したい気持ちは変わりません。俺はあなた以外考えられないんです」
隠れたお姉様が見えるようにしゃがみ、片膝を立てて見つめております。騎士の誓いをする時の体勢に近く、ドキドキします。まあ目の前にいるのはお姉様ではなくお父様ですが。
「結婚はまだ早い」
お父様がピシッと伝えます。おびえるお姉様に困惑気味ですが、本人が怯えているなら守ろうというところでしょうか。昨日の段階ではお母様と同じく様子を見ようとの判断だったはずです。
「そうねぇ。ただ、今日は単純に挨拶とデートのお誘いでしょう?」
「はい。お互いまだ知らないことが多いんだ。と仲間たちにも説教されまして、私がどれほどトレミエール様を好きなのかお伝えするためにもデートしようと本日伺いました」
堂々たる告白にさすがの両親もタジタジの様子です。ここで赤のバラの花束を持ち、今にもプロポーズしそうな妄想が映像化されました。お姉様は黄色いドレスがいいわね。今日は濃いめのピンクでしたわ、残念。は、有名な美女と野獣のシーンを妄想してしまいましたわ。
お父様もお母様もチラッチラッとお姉様の様子をうかがっております。鑑定してみましょう。
【サントス・デュモン(男)17歳、デュモン家の三男、第3騎士団所属、胸フェチ、一目惚れから一念発起で当たって砕けろで告白するも砕けなかったことで混乱中】
「鑑定されました?デュモン家の末っ子は猪突猛進って聞いているけど」
ルマはどうやら知っているようです。そして、本人も混乱中とはなかなか面白、いや、滑稽なことになってますわね。心配ですわ。
確かに怖いくらい大きいですわね。お姉様の鑑定は?
【告白された大男とのデートで緊張最高潮】
お姉様って、あれほどの美少女なのに、告白されるの、慣れていませんものね。高嶺の花扱いで、あまり男性と関わっていないようでしたし、あの男装の令嬢も防波堤になっていたのでしょう。ストレートが響きますわね。まあ、相手も慣れておりませんから、ぎくしゃくは否めないと感じます。
さて、お姉様はデートなら、相手の色のものを付けてもらいましょうよ。
この間、私に言っていたことの意趣返しで、お姉様につけてもらおうと思います。
「お姉様!今日はデート?まぁ、大きな人ね!!」
「リーリア!」
お母様がたしなめます。がこれはきっと本気で止めておりません。振りです。睨まれて低い声ではないですものね。初対面のお客様ですから失礼のないようにという配慮でしょう。お子様パワー炸裂させていただきます。
「はじめまして、トレミエールお姉様の妹、リーリアと申します。お姉様とデートなら、お姉様の色を身に付けていらっしゃいますの?」
「んな!」
無邪気、無遠慮で聞いてみます。お姉様、憧れておりましたものね。そんな変な声出さなくても私がペアにして差し上げますわ。
「はじめまして、リーリア様。デートでなくてもトレミエール様の色はいつも身に付けています。まさかお付き合いできるとは思っていなくて、とても緊張しているんだけどね」
お茶目な笑顔で答えてくださいました。子供が好きなんですね。微笑んだ表情は柔らかく、しゃがんでいることで怖い雰囲気は一掃されました。お姉様もそう感じたのでしょうか。お父様の後ろからスッと出てきました。
「お姉様も緊張されていますわ」
膝立ちしたまま待ってますよ。お姉様、頑張って!
お姉様はそろりとサントス様の前に出ました。仔ウサギが虎の罠に捕まるように見えます。手を取ったら最後、離してくれないように見えるのは気の所為だと思いたいです。
「あの…よろしくお願いします」
お姉様はおずおずと手を取りました。サントス様は先程以上の笑顔でお姉様を見つめます。
素敵なデートになりますように。
「いってらっしゃい」
難しい。書きたいことがまとまらない回。伏線含めて修正するかもです。




