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40、準備

「それで、有力な婚約候補だった、サージェント伯爵家の娘さんへのハンカチのお礼は?」


「商会から新しいハンカチを買いますわ。サージェント伯爵家のアントリア様に借りたハンカチをお返しする時に新しいハンカチとお菓子を添えてお渡しするの」


「では、商会へはそれも含めて来てもらいましょうね」


「お願いします」


 傘を奪われて泣いておりました時に優しくしてくださいました青髪の美少女、私より年下ですのにしっかりされております。


 お礼のお菓子は何がいいかしら。無難にクッキーかしらねぇ。カラフルなロシアンクッキーが喜ばれるかもしれません。フルーツジャムを乗せたらクッキーの中にフルーツの甘みや酸味が加わって味のバリエーションもいいですし、特に色合いが鮮やかになりますからね。この世界にはあるのかしら?見たことないですが。


「お母様、お渡しするお菓子はクッキーにしようかと思っています。お店の紹介もしていただけますか?」


「クッキー?そんなの同じ伯爵家に渡したら恐ろしい事になるわ。せめてもっと貴族の嗜好によせた流行のマカロンとか」


 クッキーはシンプルなものしかないのかしら。


「クッキーといっても、ジャムを乗せたり、チョコやクリームを乗せたカラフルなもの?華やかさがあるのでちょっとしたお礼にぴったりだと思ったのですが」


「…クッキーの美味しいお店を紹介してもらって、商品開発しましょうね」


 お母様の後ろでお勘定のチャリンという音がなった気がしました。ロシアンクッキー、知らないようですわね。マカロンの方が作るの大変でしょうに。そういえば、あのクレープ屋さんはいつくるのでしょうか。


「お母様、お礼は早めがいいと思いますので、家のシェフに作ってもらいますわ」


「そうね。商会は雑貨部だけではないわね、デザート部門を立ち上げましょう。リーリア、クレープの契約はあなたが」


「かしこまりました。伯爵家の名前を使うのは売上の何%の契約なのですか?」


「今回は貴方個人の名前でいくから、そうねぇ。純利益2割かしら」


 習ったところですと、貴族はあくまでお店のスポンサーであり、経営者ではないそうです。前世では当たり前のものが珍しさで一儲けできるなんて昔、生徒が現実逃避したいって話の妄想にありましたわ。私の個人の名前ですか。まぁ伯爵家の娘で加護持ちってことで、ネームバリューはありそうです。



「早く帰ってきたのですから午後からはお誕生会のお客様リストを確認しましょうね」


 2ヶ月後のお誕生会にむけて、貴族の総復習がはじまりました。名前と領地、特産物などをみっちりと覚えさせられます。


 おやつの干しぶどうのパンを温め直してもらい、残り半分ほどのリストを確認し、お母様の執務机の横で、ブツブツ呟いていますと


「ただいま戻りました」


 とお姉様が帰宅されました。が、漂白されたように顔色が真っ青です。間違えました、幽霊のようです。


「お母様、婚約の申し入れが近々ありますわ」


 いや、婚約って、おめでたい話では?そんなに絶望的な顔でって、そもそも失恋したばかりよね?一体何がどうなって婚約になったのかしら。


 お母様も急な話に困惑気味です。


「お相手は?年は?学生?あなた、お付き合いされている方がいたの??」


 鑑定では失恋とありましたが、どうなっているのでしょう。お姉様は報告のあと、お母様の執務机の近くにある私が座るソファセットへ近づき、斜め前の長ソファに倒れるように座りこみます。


「とにかく、相手はそうね。男性?よ。うん。年上ね」


 そこの疑問符はなんでしょうか。鑑定してみましょう。


【卒業前の公開プロポーズに困惑中】


「お姉様自身も困惑していますわ。お母様、わかりません」


 私を見ていたので鑑定した結果を知りたかったのかもしれませんが、困惑中としかないのです。


「相手のお名前は?」


「サントス・デュモン様です。あのイポメア様の弟君ですわ。騎士様です」


 何故に男性に疑問符がついたのでしょうか。


「まあ、あのイポメア様の弟?今年卒業って言っていたわね。まさかうちの子を見染めるなんて。あそこは男の子はみんな騎士団へ入っていたはずよね。トリーナス伯爵家との繋がりもできますし。良い縁談よ。おめでとう」


「お母様、本人を見たことありますか?体がとても大きくて、恐ろしいほど背が高いんですのよ。それに睨まれて怖かったですもの。強面の顔です。私、抱き締められたら、殺されそうでしたのよ。思わず頷いてしまって」


 あら、お姉様もう、抱きしめられたんですわね。そして、公開プロポーズとは、もう聞きたがりが止まりません。しかも、もしかしてこれは美女と野獣ではないでしょうか。見目麗しいお姉様とがたいの良い、決して美しいとは言えない騎士の。むふふ。


 おっと、妄想してしまいましたわ。とにかくお姉様の気持ちをしりましょう。


「お付き合いもしていないのに、いきなり婚約ですの?」

 私はお姉様がお似合いのカップルを見ながら憧れているのを知っております。いきなり婚約でこんなに真っ青な状態で帰宅するんですもの。婚約は嫌なのかもしれません。


「明日挨拶にくるそうよ。そういうの苦手だから、婚約して、結婚したいって、いきなりっ」


 今度は血色が良くなり、お姉様の背景にはピンクのバラが咲き誇ります。もしかして、嫌じゃないのでしょうか?


 とにかく明日、お姉様の婚約するかもしれない方を鑑定しましょう。

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現代物の軽い読み物です。恋愛なしでゆるっと1500字程度ですので、こちらもよかったらよろしくお願いします!
授業中に居眠りする彼の事情
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