表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/72

35、お出かけ

『フェリス

 お手紙ありがとうございます。その壊れた日傘は急いで改良したいと思います。折れにくい強度のある木を探しに市場調査が決まりました。一緒に来てほしいけれど、空いている日を教えてください。リリー』


 私が送った手紙で、フィルリス殿下の誕生会の3日後にお出かけが決まりました。お母様も傘の改良は優先順位が高いそうで、お出かけもすぐに決まりました。手紙はとても悩みましたが、婚約については触れないことにしました。了承って言ったって私が決められるものでもないですし。すでに内定しているものですからね。



「リーリア?あなた、そんな格好でデートにいくつもり?」


「え?だってお姉様、聞き込みと言ったら街娘風の方が声かけてもらえるし、殿下もラフな格好で行くのよ。しかも、デートじゃないですし」


「それにしても可愛さが足りないわ!だって殿下の色がぜんっぜん入っていないんですもの」


 おっしゃる通り、薄ピンクのフリルなしのワンピースにシンプルなふたつおさげです。ブーツはこげ茶。殿下の色はございません。本日朝からお出かけの準備をしていると学園へ向かうお姉様と出発が重なりました。


「金色は私と合わせると平民風が薄れるのよね」


「…たしかに、キラキラだわね。瞳の色は?」


「えっと、青?」


「何故にそこは疑問形なんですの?婚約者の眼の色くらいは知っておきなさいよ」


「恋人同士は出かける時やデートでお互いの色を身に着けるものですの?」


「そうよ。学園では流行っているわね」


 お姉様はどうやらお互いの想い人の色を身に付けている恋人達に憧れているようです。そういえば、例のプリンスの恋人(女)への嫉妬はなさそうですわね。実はお姉様も納得してしまうほどのお似合いの二人なんでしょうね。


「青もいろいろあるだろうから、難しいわね」


「このままで行くわ。たぶん気にしないもの」


 そうです。たぶん気にしないと思います。我々の目的はデートではないのですから。市場調査です。壊れた傘の改良のために見つけなければなりません。柳のような、靭やかさをもち、強固な木材を。…そうです。柳なんかどうかしら?なぜ、思いつかなかったのかしら。柳!ただ、木材としては聞いたことがないわね。材質はお任せでしたから、パイン材と言っていたわね。餅は餅屋へ、プロへの聞きこみが大事よね。


 護衛はルマとサンレーです。お出かけには安定のルマです。


 待ちあわせは前回クレープを食べたところです。


 私が先についたようでしたので、先にクレープ屋へ挨拶です。朝の早い時間でしたので、お客さんもいないようでした。クレープは甘いのしか売っていないのかしら。色んな種類を出してほしいわね。


「こんにちは」


「あ、この間のお嬢ちゃんね。ありがとねー。フルーツトッピングで他のクレープ屋とまた差別化されて、もう売れにうれちゃってね」


 しょっぱい系のクレープもほしいから作ってほしいわね。ルーカン先生の言っていた、囲い込みでしたか。これはもしかして私の商会の運営で実践できるのかしら。


「ねえ、あなたにはスポンサーはついているのかしら?」


「いえ、ついてませんね。この通り、屋台の人達はスポンサーを求めて自分の店を持つのを夢にしてますから自分も同じっすね。もしかして、いいとこのお嬢ちゃんとは思ってましたが、お貴族様でいらっしゃったんですかね?幼いのにしっかりされていますし」


「私が提案、出資するから、新しいクレープ出さないかしら?スポンサーになるわ」


「お嬢ちゃん、失礼かもしれませんが、親御さんとも話しさせてもらえませんかね。さすがに」


 そうね。お子ちゃまがいくらスポンサーって言ったって、親の許可がもちろんないと動けないと思うでしょうし、何があるかわからないですから、詳細をつめて契約してからでしょうしね。


「そうね。オーキッド伯爵家、リーリアよ。訪ねてきてちょうだい」


 あ、鑑定しておかなきゃね。


【ミント・クルー(男)30歳、クレープ職人、修行先だった師匠の娘と無理矢理婚約中、くるぶしフェチ】


「ははは伯爵家ですかね。私はミント・クルーですね。よろしくですね」


 動揺して眼が泳いでますわよ。語尾にねがつくおもしろいしゃべり方になっておりますわ、くるぶしクルーさん。無理矢理婚約中ですか。これはどういうことかしら、気になりますわね。


「よろしくね」


 朝のクレープはやはり食事っぽいのがいいわね!ハムやベーコン、サラダ、タマゴも美味しそうよね。組み合わせて売り出しましょう!


 商会の運営も始まったばかりですから、お母様に聞いて見ましょう。


「リリー?ごめんね、遅くなって。フルールの護衛を撒くのに時間がかかったんだ」


 撒くって。フルール様、まだ公爵領地には戻っていないのね。私、あの方にはもう近づきたくはないですわ。正直面倒ですもの。人のものを壊したら謝ってほしいとは思いますけれど、むしろ身分をかさにして取り上げておいてのあれですもの。


「…心中お察しします」


「あ、敬語!だめだよ。丁寧な言葉なしで。今から行くとこは結構荒れたとこだから」

 そう言うと、さっと手を出しました。はい。わかってます。出発ですね。


「さ、行こうか」

お出かけ続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代物の軽い読み物です。恋愛なしでゆるっと1500字程度ですので、こちらもよかったらよろしくお願いします!
授業中に居眠りする彼の事情
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ