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32、婚約内定

 帰宅するとブルーナス兄様とトレミエールお姉様が壊れた傘をみて暗い表情になりました。


「何があったんだい?」


 ブルー兄様が聞きます。フルール様に取られて兄弟喧嘩で壊されたと簡単に説明します。

「ひどいわね。今度から中等部に入るから噂で聞いていたけれど」


「そんなに有名なんですの?」


「周辺の領地の子供達はどんな無茶を言われるか戦々恐々としているそうよ」


「元王族だしな。公爵家は貴族の中では特別枠だし。前公爵があったのって確か50年前?扱いに困っているのも聞いているな。本人には罪がないが、兄は王族として残されたままの扱いにも複雑な思いがあるのだろう」


「…でもねぇ。人のものを奪って結果的に壊すなんてねぇ。鑑定したの?」


「王城で人気急降下中ってありましたわ。本人は王妃になるために公爵に降りたと考えていらっしゃるようです」


「…婚約者はリーリアに内定している。こちらにはすでに打診されていたが、今日、フィルリス殿下が指名されて、近々正式な申込みがくるだろう。教会よりも先に王家が逃すまいと動いた。まぁ、リーリアを見初めた王太子が強くでたのかもしれないがな」


 お父様が頭をポンポンしながら会話に入ってきました。


 って、お父様、さっくり重要なことを言いませんでしたか?


 婚約者?私が?フィルリス殿下の婚約者に決定?


「まぁ!フィルリス殿下を射止めたのね!さすがうちのリーリアちゃん」


 お姉様、喜んでいるところ悪いんですが、私、殿下とはお忍び仲間でしかないんです。婚約者って、公の場に二人で出るのでしょうか?今の殿下の課題を私も?


 不安そうな私の顔を見て


「大丈夫だよ。少しずつ仲良くなっていけばいいんだし。それに、リーリアは別に無理に嫁ぐ必要はないんだ。我が領地の発展のためには近くにいてもらったほうがいいかもしれないしな。婚約といっても、解消できるはずだしな」


 私は生まれた時から会話を理解していたので、お父様もお母様も私に王妃を希望していたのを知っています。が、お父様はどうやら私の意思も尊重してくれるようです。というより、祝福と加護で、さらなる領地発展を企んでいるようです。


 親の望むように生きるのもまた人生ですが、前世に私は親が進める人生のレールに乗っていることに疑問を感じて道を変える若者も多く見てきました。逃げるように違う道を選んだ子も、強い意志をもって選んだ子も、その人生の道は砂利道でした。


 今、婚約に対して親のレールに乗ることに不満はありません。婚約解消もできるそうですし。なるようにしかならないことを知っています。選択肢がある時に考えればいいのです。


「リリー?愛称かしら?貴方の6歳の誕生日で正式に発表されます。誕生会まであと2か月。ホスト側の作法を復習しましょうね」


 まるで猛禽類が獲物を狙う鋭い目です。お母様が釘を刺しました。私の誕生日まで、あと2ヶ月、お忍びで抜け出せるのかしら。それから個人的に何かプレゼントしたいわ。さっきのお詫びも兼ねて。


「はい。お母様」


 でも先にフィルリス殿下へお手紙を書きますわ。ありがとうを伝えないとね。夕食前に書いて出せたら今日中に届くのかしら。


 私が急ぎ部屋に戻ろうとするとお母様とお姉様の気になる会話がありました。


「ねえ、お母様、リーリアは小学部の試験が夏休み明けにあるのよね。お誕生日会の後領地には戻るの?」


「そうねえ、まだ未定ですけれど、殿下達が夏に領地に遊びにくるかもしれないのよ。準備もありますし、リーリアがいないわけにはいかないでしょうから」


 試験?夏領地に殿下?


「試験?お母様、私、最近は行儀マナーしかしてませんけれど」


「先生からの課題は?手紙でしているでしょう?」


「戻れないので本を領地へ送ってからは手紙でやり取りはしてますけれど、特には」


「え?傘の発注がありそうだから商会運営の流れをざっと教えてもらっているはずよね。あとは王都の歴史について手紙でやりとりしていると報告もらっているけれど」


「はい。ですが、試験があることは聞いていなかったので」


 ほら、試験前はちゃんと復習したほうがいいじゃないですか。やはり、試験に臨む心意気が大切ですよね。


「ああ、試験は読み書き計算の基本よ。あなたには復習も必要ないと思うけれど。ほとんどの貴族は小学部試験を受けて、いわゆる飛び級制度を使用するのよ、中等部から学園へ入るわ。要は基礎学力はありますから、小学部は通いません。という試験よ。ルーカス先生、飛び級制度の説明抜けはわざとかしらね。伸びる生徒にはとことん厳しいんだから」


「私、四則計算が苦手で、その夏は大変でしたわ」


 思い出を語るお姉様は哀愁漂います。


「ああ、お前と弟は心配したが、リーリアは大丈夫だろう」


 ブルー兄様はお父様と同じように私の頭を撫でます。


 何せ前世の記憶がありますからね。知識は十分ですが常識が心配です。確かルーカス先生に我が国の教育の歴史で学んだのは小学部は国民全員、中等部は希望者、高等部は国に1つだけで、スキルを高めたい、あとは貴族間の交流としての役割がある話でしたわね。


 貴族とスキル持ちは王都の中等部へ行って、そのまま貴族は高等部へ行くのよね。学園、楽しみですわ。

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現代物の軽い読み物です。恋愛なしでゆるっと1500字程度ですので、こちらもよかったらよろしくお願いします!
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