26、ふわふわ対さらさら
「夕方になる前に雑貨屋クロスト、服飾店スピアへ寄りましょう。すこし急ぎ足ですが」
クロストは貴族向けのお店で、値段が記載されておりません。前世では元庶民の感覚ではとても買い物ができませんでした。お母様には物の値段を知るためにも王都見学へまたいきましょうと言われました。はい。おっしゃる通りです。
服飾の街にはドレスを発注したマリーナもありました。先程行った書店に負けないほど大きな店構えです。
「洋裁マリーナはすでに伯爵家御用達とのことでしたので、最近若者に人気が出てきているスピアをご案内しますね」
マリーナも気になりますが、お母様はすでによく知っているそうです。
お店へ入ると中に腰部分で折り目の入ったドレープの重なりが素敵なワンピースが並んでおります。中にパニエが入っていないので、正装には向きませんが街の娘よりはドレープの膨らみが豪華で貴族向けという感じがします。
「学園での休日にデート服として流行っておりまして、何よりパニエがないのが動きやすいと好評であります」
緊張しながら話すのは店長のメントスさん。
お母様の威圧感に負けそうです。いや、若者向けのお店ですから、お母様にはなかなか難しそうです。
「お母様?部屋着として、こちらはいかがでしょうか?」
女子会、パジャマパーティーにお勧め!とポップアップ表示が可愛らしくてとても選べそうにないと思いましたが、よく見るとこちらの薄い水色のパジャマは絹のサラサラした生地が一枚で作られているワンピースタイプで、寝心地含めてかなり良い品だと感じます。
「こちらのモコモコパジャマはいかがでしょうか?可愛い猫耳フード付きのワンピースであります」
メントスさん、同じワンピースタイプのパジャマを手に取りお勧めしてきました。もこもこしている生地が暖かさを感じ、猫耳と腰回りは茶色で猫らしさを出しております。ただ、私の情報ではにゃんにゃんはすでに流行を逸しているはずです。今の流行は何でしょうか。ここで吹き出すわけにはいきませんね。
【犬耳尻尾首輪も付けたワン、SMプレイの深さを実感中】
「ブォッホン」
危ない。吹き出すのを誤魔化して変な咳が出てしまいました。神様、笑いの我慢大会はしなくてもいいと思います。私、速攻で脱落いたしますから。
怪訝な表情をされたお母様は両方を手に取り、真剣に買い物されるようです。サラサラした水色パジャマか、もこもこした猫耳かわいいパジャマか、どちらを購入されるのでしょうか。
「どちらも屋敷へ」
はーい。セレブのお返事いただきましたわ。そうよね。パジャマの金額を見ても学生が手を出せる値段のようですし、どちらが片方なんて選択は最初からございませんね。
「ありがとうございます」
私も子供用の服の中からコートを選んで購入しました。大きなリボンが首についた薄手のポンチョコートです。ロリータファッションのゴスロリ風に似合いそうです。
お店を出るとすでに夕方というより夜になっておりました。私のお腹もぐぅと鳴ります。そろそろ夕飯の時間でしょうか。思い出すのはあの屋台でのお肉の香り。お店の出来立てを食べ歩きできるかしら。今回はお母様も一緒でしたから屋台と言ってもそのまま歩きながら食べることはできなかったのですもの。
もしかしたら殿下は食べ慣れていらっしゃるかもしれないわね。悔しいわ。串焼きロン、覚えたわよ。まずはあの店へいきましょう。私も護衛術を学んでお忍びを堂々としますわ。美味しい屋台をめぐりましょう。
「楽しい時間をありがとう。またよろしくね」
お母様の挨拶の後に私も続きます。また行きますという気持ちを込めて挨拶です。ルマは頭をかいています。私達、お忍びで叱られないようにしましょうね。
かくして私の護衛術を学ぶ準備が始まりました。街娘風の服はスピアへ注文です。そういえばフィルリス殿下も下位貴族の息子風の服でしたわね。今度会ったら私もお忍びと伝えてやりましょう。
夕食はお肉のステーキでした。屋台ではないですが、私の気持ちが伝わっているようで嬉しく思いますわ。それにしても、洋食ばかりですので和食がそろそろ恋しくなってきますわね。
あの串焼きロンの香ばしい香りに期待してしまいますわ。種類のなかには醤油があるかもしれません。楽しみですわ。




