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23、傘打ち合わせ

 

「ご無沙汰しております。カナー様。本日は商会へ来店いただくとのことで、私めがご案内役を務めさせていただきます。よろしくおねがいします」

「よろしくね」


 お母様がよく使っている商会なのかしら、貴族向けの商品も多く取り扱っている大きいところのようです。


「はじめまして。リーリア様。ハンカサイ商会のラックスと申します。この度マリーナ様から発注いただきました傘について職人からいくつか質問がありまして、お伺いいたしました。初めての王下街とのことですので、ぜひ私共がご案内いたしましょう」


 お昼のあとすぐに商会のラックスさんと出発となりました。歩くたびに髪がささやかにファッと靡きます。触角のようです。その分かわかりませんが立派な顎ひげをお持ちです。頭上が思うようにいかない分、ひげに集中しているのでしょうか。


「よろしくおねがいします」


「まずはハンカサイ商会へご案内いたします」



 私は王都へ向かう馬車の中でこっそり鑑定しました。


【ラックス・シュタイナー(男)67歳、ハンカサイ商会副会長、前会長の右腕、匂いフェチ、独身、会長の子供を孫のように溺愛中】


「我が商会で、揃わないものはないと自負しております。あの有名な洋裁専門店マリーナからお話をいただきまして、ぜひうちで商品化していただきたいと」


 商会で商品化、マリーナから売り出すということね。静かにうなずく私です。 


「リーリア様のスキルは創造神の加護と女神の祝福とお聞きしておりますから、今回の王下街見学で他の商品化も閃くこともあるかと。その時はぜひハンカサイへ」


 なるほど、私との顔合わせもかねているのかしら。


「リーリア様のご興味のあるものからご紹介いたしましょう。まずは王下街は商人の街と職人の街が中心としてありまして、宿屋を中心とした観光の街、冒険者が集まりやすい街など諸々の街が入り乱れております。これから商人の街の中心地へ参ります。周りに食の街、観光の街、服飾の街がございますのでぜひご案内いたしましょう」


「そうね。本屋は必ず行くとして、あとは雑貨の街、服飾の街と、美味しいお菓子を食べたいから食の街でおやつタイムにしたいわ!いいでしょう?お母様?」


「そうね。あまり遅くならないようにしましょうね。その前に商会で傘の打ち合わせよね?」


 お母様はクスクス笑いながら答えます。私が楽しみにしていることが目に見えてわかるのでしょう。


 貴族街から王下街へ入ったのでしょう。領地から通った道のように少しガタガタ揺れます。賑やかな声も聞こえてきました。


 警護はルマとサンレーが前後、側面に伯爵家の護衛隊長サナカラとエースのミーランが並んでいます。お母様の護衛も兼ねているので、今日のお出かけは仰々しい感じになっています。


「もうすぐ到着いたします。いい匂いがしてきましたね。この辺りはお菓子のお店が並んでます。ここが食の街と呼ばれるところです。有名なお店はー」


 説明を聞きながら窓の外を見ます。護衛の姿と、ん?あれはチュロスかしら?


 気になり窓辺へ乗り出した私を咳払いで注意するのはもちろんお母様。そんな私を見て孫を見るような優しい目で微笑むのはラックスさん。


「ふふふ。いや、失礼しました。会長の息子が貴方様と同じ年でしてね。自分の孫のように可愛がっているのですが、先日同じようなことがありましてね」



 鑑定にありますものね。


「会長の息子さんは私と同じ年なんですの?学園で一緒になるのかしら?」


 この世界のスキル持ちは学園へ通うことが決められていますので、スキル持ちであれば会えるかもしれませんわね。


「ええ、火のスキル持ちでして、料理や武術に精を出して頑張らせようとしております。もしよろしければ本日ご挨拶できれば嬉しゅうございます。さて、あと少しですね」


 食の街を抜けて、大きめのお店が増えてきました。その大きなお店に負けない噴水がある公園を通り過ぎたころ、青い3階建ての建物に馬車は停まりました。


「商会までご足労いただき、誠にありがとうございます。ハンカサイ商会長のリンスともうします。」



 出迎えました方はやはり会長でした。ただ、お母様より少し若い青年のような雰囲気の方です。



「お初にお目にかかります。オーキッド伯爵家が娘、リーリアと申します」


「ご丁寧なご挨拶ありがたく存じます。これからよしなに。早速ですが、傘の打ち合わせをいたしましょう。時は金なり。リーリアお嬢様も見学の時間がたっぷりある方がよいでしょうしね」



 小さな片眼鏡で会長としての雰囲気を醸し出そうとしているのかしら。これはこれでファンがいそうです。爽やかな笑みを浮かべてエスコートしてくださいます。

 この姿で私と同じ年の息子さんがいるということは奥様はよほどの美女か策略家というところでしょうか。ひとドラマありそうですね。ふふふ。


 そんな想像をしながら応接室へ案内され、職人の方らしき人と、私と同じ年くらいの少年がやってきました。


「ご案内いたします!家具職人のルルーセルさんと服飾職人のスパルナさんです!」


 大きな声で教えられたとおりに言ったのでしょう。後ろにはラックスさんが付いています。お母様もにこやかに微笑み、場の空気が和みました。おそらく先程話題に出ました会長の息子でしょう。


「この子も紹介します。倅のビオラです。商会の侍従見習いで今練習中のところです。リーリア様とは同じ年とお聞きしました。学園も一緒かと思います。よろしくお願いいたします」


 高位貴族の繋がりなら早い段階で合わせておくのが大切ですものね。こちらも前世にある便利グッズを作っていただかなければなりませんので、大歓迎です。

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現代物の軽い読み物です。恋愛なしでゆるっと1500字程度ですので、こちらもよかったらよろしくお願いします!
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