22、偲ぶ恋心の行方2
「私気づかれてたんです。確かにハムラの結婚はショックで、すぐには立ち直れなかったかもしれなくて、ごまかすのは必死でしたけど。だからこそ、ルマに気遣われていることに気づいて、もしかして知ってたのかって、帰り道ルマを問い詰めたんです。んで、自暴自棄になっちゃいました。わざと場を作って、報告じみたことして、私をからかっているんだと怒ったんです。それを否定するかのようにキスされました。慰めて、忘れさせてよって。弱気なことも言った気がします。お酒も入ってました」
一気に話し出すサンレー。ああ、話したかったんですね。本日は温かいミルクココアを用意してもらいました。サンレーと二人分です。
「初めてだったの?」
こくんと恥ずかしそうにうなずくサンレー。まあ、この反応をみるに大切にされたようですわね。
「ルマは優しいからたぶんあの夜のことはなかったことにするかもしれません。私自身、戸惑ってます。何でこんな事になったのかって。でも、ただ、後悔はしてません。優しくされて、愛されてるって勘違いさせてくれて、あの夜は切ないけれど、ちょっと、幸せみたいな思い出にします」
はにかむように笑うサンレーがきれいで可愛くて思わず頭を撫でました。
【ハムラへの恋心戸惑い、ルマへの興味度爆上がり中】
爆上がりって。まぁ、互いに気になっているからそうなることもあるわよね。そもそもサンレーがハムラを好きって気づいている時点でルマにとってはサンレーが気になる特別な存在だったのかもしれませんし。
「ふふふ。リーリア様は幼いのに、大人のお姉様とお話ししているようですわ。身体の関係についても、堂々としているから、違和感がなさすぎて。すみません」
「…加護と祝福のおかげかもしれませんね。鑑定にたくさんの情報があって、耳年増になっていますわ」
そして、前世の記憶もたっぷり残す、転生者だからです。
「私の鑑定、どうなってます?」
なんだか表示するのをためらいました。身体の関係になった結果だとルマへの気持ちにストップがかかりそうです。
「まだ今は混乱しているでしょう?見せられないですわ。一旦、ルマとのことは置いておいて、ハムラへの恋心をご自身で見つめ直してみてはいかがかしら?ハムラへの想い、変化しているんじゃなくて?」
戸惑いを自覚させてみようと思います。サンレーはハッとした表情をして、その後、考え込むように下を向きました。
「私の中で、親しい男性がハムラだったんです。同期の仲でも特別で、やっぱりあいつが結婚するってショックです。ハムラが好きなことは変わらない、です」
うーん。もしかしたら恋に恋しちゃうパターン?初恋にありがちな流れもあるのでしょうか。
少し意地悪な質問をしてみましょう。
「で?ルマと致したわけだけど、ハムラとも同じようにするのを想像したことあります?」
あ、今顔を真っ赤にして、想像しましたね。どちらをどうでしょうか。
「今、思い出しました?それでハムラになりました?」
「…なりませんでした。ルマの指が、やっぱりルマです。初めてであまり覚えていないんですけど、えっと」
いや、それ以上は言う必要はないですわ。あなたの指フェチは知ってますから。
「でも、ハムラのことは好きなんでしょう?」
「はい」
「これからも隠せる?」
「…わかりません。ハムラには既にバレちゃったかもしれないです。ショックだったんですけど、今は偽善でも愛されているって、感じさせてくれたルマが気になって」
「失恋の処方箋は新しい恋ですか。それにしても刺激が強すぎでしょう」
思わずぼやいてしまいます。恋に恋しているというより、ハムラへの恋心は同期という友情の延長線上にあるのかもしれませんね。私があえて言うことはありません。ぬるくなったミルクココアをコクっと飲みます。甘くてほっとする味です。
男友達は恋人になり得るか、という疑問の特集記事を読んだことがありますが、結論は人次第となんとも残念な読み物でしたわ。
「好きならハムラへ告白して、きちんと気持ちに整理をつけてルマへの気持ちに向き合ってみるのがいいのかしら」
「…告白」
「無理にはしなくてもいいのです。ハムラが好きなら、ハムラに愛されたいと思っちゃうのも自然なことですから」
「…ハムラに愛される。想像できません」
「ハムラは特別な友人で、大切で、親しい人で、大好きな人?」
「…はい」
少し間が空きましたが、肯定の言葉が返ってきました。
親友を婚約者にとられた嫉妬から恋と思ったのかしら。
「告白、しません。確かに好きな人ですけど、男の人と言うより友人、家族的な意味合いもある好きな人に思えてきました。おかしいですね」
「確かにおかしいわね。ルマのおかげかしら」
思わず互いにクスッと笑ってしまいました。
【ハムラへの友人愛、ルマへの恋愛興味度爆上がり中】
表示された鑑定結果が、幸せな方へ向かうといいなぁと感じました。




