19、伯爵家三男鑑定士と嫁
「稀に祝福があとから与えられていることもあると教会から連絡がきたが、レアケースらしいよ。ああ、その教会だが、リーリアを鑑定してくれた鑑定士が奥様とうちに来ることが決まった。リーリアに鑑定してほしいそうだよ」
お父様は王城でマイクス兄様の話を国と教会へ報告したようです。鑑定士、あの妻との入浴が趣味のトリーナス伯爵家のグリース様ですね。
「あそこの奥様は妙齢の女性たちの中でカリスマ的に憧れの存在よ。彼女を味方につけたら、ありがたい後ろ盾となるはずよ」
今日はお母様と私でお父様、ブルー兄様を出迎えます。最近お姉様は追っかけなるものをして、女子と仲良くなり、帰宅が少し遅くなっているようです。完全にプリンスに夢中な仲間達と盛り上がっているようです。まあ、余計な恨みを買って事件になるよりは平和ですわね。
後ろ盾を想像して、にやりと笑うお母様。鑑定士の結果を知っているからか、陰謀巡らす顔をしていらっしゃいますわ。怖いです。さすがオーキッド伯爵家の裏番長ね。
「かしこまりました。ただ、お母様、鑑定の時はご夫婦お二人のみにさせていただきますわ。とても個人的なことになるかもしれませんもの」
「わかったわ。後で教えていただける?」
「・・・お母様の特記事項もあちらにお伝えしていいのであれば。にゃん?」
「考えておきますわ」
一瞬ためらいましたよね?もう一緒のお風呂は経験済でしょうか?そして、目を逸らすお父様が面白いですわ。ブルー兄様、にゃんに反応しないでくださいませ。
さすがにプライベートがただ漏れは嫌だと思うのです。
忍ぶ恋心など、人に知られたくないことも表示されてしまうので、簡単に人を傷つけてしまったり、弱味を握られてしまうと思ったりされるかもしれません。気をつけなければなりません。
☆☆☆☆☆
「思ったより早く会うことができて嬉しいよ」
教会で会った時とは雰囲気が違います。あ、教会はローブですね。仕事着なんでしょう。
「お久しぶりです。グリース様。そして、奥様はじめまして。リーリアと申します」
ペコリとお辞儀をしたあとまさかの私のお腹がぐうとなりました。
お母様に後で叱られますわ。今も睨んでおりますもの。淑女たる者腹筋でお腹の音も制御せよと言われておりますのに。まだまだですわ。
グリース様の奥様は緑の髪をハーフアップにして黄色いドレスが爽やかな雰囲気に仕上げているようです。私の腹の音にクスッと笑って、慌てて
「お腹すきましたよね?私、今日のおでかけが楽しみで、昼食を少し少なめにしたのです」
なんと、私のフォローをしてくださるではないですか!!
私がお腹が鳴ったのに!!おやつが楽しみでお昼少なめにしたのは私なのに!
幼女にもお優しい淑女の姿。惚れてしまいそうです。女性が憧れるのもわかります。
「お初にお目にかかります。イポメア・フォンナンスと申します」
お母様と私に挨拶される姿も素敵です。
「お噂はかねがね。リーリアの母、カナーですわ。よろしくね。今日はおもてなしとして料理スキルのリーリアが発案しましたお菓子を用意しましたの」
「料理スキルレベルは低いけれど、創造神の加護で、思いつく料理が多いのか、それとも、料理スキルは上がっていくのか?稀にレベルが上がることもあるが、また鑑定させてもらおうか。研究対象として、まぁ」
グリース様がボソボソ呟いております。
「鑑定士でありますが、見ての通りスキル研究家でもありまして。今日は研究の一貫として、私もご一緒させていただきました」
グリース様のフォローをしつつ、今日の目的をお話しされております。詳しくは話していらっしゃらないのですね。怒られるのはグリース様だけであってほしいですわ。
「今日はドーナツとタピオカドリンクを準備しました」
前世で好んで飲んでおりました。軽食にもなりますからね。ここはクッキーやパイなどはありますが、洋菓子でもあまり知られていないものは見当たらないようです。
タピオカミルクティーは素材を知っていたので全てざっくりお任せ発注です。苦手な方もいるかもしれませんので、シンプルに紅茶も用意しました。ドーナツはフレンチクルーラーも一緒です。私は某ドーナツ店のエンゼルフレンチが大好きです。まさか、暇を持て余して表現しようと料理した経験がこんなところで活かされるとは人生わからないものです。
あっさりとしたクリームも甘めのチョコレートも完璧です。
タピオカミルクティーは初めてですので、皆様手が出ないようですね。
「グリース様、こちらの飲み物、鑑定表示してくださいます?」
グリース様の表示はどのようにでるのかしら。
【タピオカミルクティー:甘さ10、しっとり10、苦味1、後味6、喉越し8】
数値化されました。
「なるほど。私の表示はこれです」
【タピオカミルクティー:4つ、リーリア指示で料理人味見済、ストロー特注済、万人受けはしないだろうと料理長は判断している】
「飲んでみましょう。合わなければ紅茶もございますわ」
タピオカミルクティーをグリース様と奥様へお勧めします。
毒の有無については基本表示されないのでしょうか。毒入りにあまり出会わないから気にしないと表示されないのかもしれませんね。
「グリース様は毒入りの食べ物だったら、毒もレベル?数値化されて表示されますの?」
「ゴホッ、ゴホッ!」
お母様、そんな咳き込まないでいただけますか?タピオカ詰まらせますわよ。淑女としてあるまじき姿ですわ。イポメア様も固まっておりますわ。
「毒入りは鑑定したことがないかな、あ、そういえば王家からの鑑定士募集で厨房勤務含むとかの応募が出てたね。なるほど。毒見役の前に鑑定か。どれほど正確かわからないところがあるね」
【紅茶:甘み3、苦味2、酸味1、喉越し10、後味1、爽味10、毒味0】
「毒の有無を確認しようとするとこんな風に表示されるね。まあ鑑定スキルを持つ人は表示に差はあれども鑑定できると思うが」
「私も毒なしという表記が出ました。ただ意識しないと出ないようです」
「毎日、毒の有無の鑑定って、結構しんどいよね」
「陰謀渦巻く家族の裏側をガッツリ見る感じですよね。サスペンスホラー的な」
私達二人の会話に若干引いています。
「すみません、うちのリーリアが」
謝るお母様。
「こちらこそ申し訳ございません、毒味0なんて」
「「・・・・」」
初対面のお茶会でする話題ではなかったです。どうやら反省するのは鑑定した私達のようです。
誤魔化すようにドーナツを手に取ります。
フレンチクルーラーはしっとり、波状の柔らかな甘い生地に予想通り仕上がっています。クリームが絡んでとても美味しいです。これだけ甘いとスッキリとした紅茶が合いますね。
タピオカミルクティーは単体でもよかったかもしれません。合わせるのは難しいですね。欲張りました。
タピオカミルクティー自体が思った以上に食べごたえがあります。弾力があるので噛んで飲み込むことが必須となりますね。このもちもちが癖になりそうです。飲み物として流し込むとミルクティーの甘さがちょうどいいのです。止まりませんね。お昼を少なめにしたかいがありました。
「さて、私の鑑定に関してグリース様より奥様であるイポメア様も一緒にとのことでしたので、一緒に鑑定させていただきますわ。とても個人的な表記がございますので、本人と親しい人だけにしていただいたほうがよろしいのですが」
「私、カナー様もご一緒で構いませんわ」
おお!懐が広いですね。知りませんわよ。
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鑑定士の奥様の表示はいかに。15歳以上を守ってお読みくださいませ〜




