1、お母様
ミルクのあと、ミールさんと侍女長の話を聞きます。
「それにしても、空前絶後のベビーブームよね。2ヶ月前の王太子の誕生で、今は多くの王妃候補、側近候補が生まれているんですもの」
「ミルクも高騰していると聞いてますわ。リーリア様が爵位的に王太子の婚約者候補筆頭なんですよね」
「そうよ。奥様は後々に禍根を残さないよう、ご自身でお産みになったのです。王弟殿下の娘さんは他国へのお輿入れもあるでしょうし、うちが筆頭として見られるわ。ミール、しっかりお世話するのですよ。あと、まだ幼く狙われやすいので護衛の手配を執事長が整えているはずだから、紹介するわね」
え、いきなり狙われているの?
転生後すぐに死ぬのは嫌です。ただ、赤ちゃんだと、自衛もできません。護衛よろしくですね。
「あら、眠そうよ」
そう言うと侍女長は抱っこを替わります。
確かに眠くなっております。が、現状把握したいので頑張って起きておきたいのです。
「ふぇーん、えーん、(眠たくないよー!起きてるよー!)」
「こうやって一定の速度でこれくらいの振り幅で揺らして上げるとすぐに眠るわよ。そうそう、お世話係は貴方がメインで、護衛もできるエネミル、後はジーナがサポートするわ。男がいないのが王妃候補として徹底しているのかしら。あとは、、」
続けて警備や護衛について話してますが、私は満腹から睡眠欲に勝てず。
目が覚めたころにはまた天井です。むぅ。天井でなくて抱っこでいろんなところがみたいのですが。
「あうあう、あー!(抱っこして)」
「ミール、起きたわよ」
知らない人の声がします。さっき話していた、護衛の二人のどちらかでしょう
「リーリア様、お目覚めですねー。あ、おむつを替えましょうね」
☆☆☆☆☆
こうして何日か過ごした後、ミールに抱っこされて、侍女長を先頭に初めて部屋を出ることになったようです。
「リーリア様、お母様に会いにいきましょうね」
お部屋の天井にも飽きていたので、廊下も楽しいです。白い漆喰の壁に腰くらいの高さで木張りがある廊下を進みます。
いよいよお母様と対面です。
コンコン「奥様。お連れしました」
侍女長が呼びかけると、奥から「どうぞ」という声が。
なんだか緊張します。
カチャリと侍女がドアを開けると、そこには赤い髪色を片方に寄せ、にこやかに微笑む人がおりました。
「やっと会えました」
満面の笑みで私に声掛けしました。
ちなみに優雅にベッドで佇む姿を真似したいほどに素敵です。
侍女長はベッドへ近づきお母様へ私を抱かせます。
「おめでとうございます」
侍女長はすこし涙声です。
「ありがとう」
お母様は私をギュッと抱きしめます。
「リーリア、なんて、可愛いのでしょう。私が産んだ最後の子になるでしょうね。ああ、愛おしいわ、瞳は私にそっくりね、鼻はおじい様かしら?」
お母様は私の顔に優しく触れます。温かい手が気持ちいいです。
「あなたのお兄様、お姉様たちも楽しみにしていたのですよ。次の長期休暇には帰ってくるわ」
ふふふと微笑むその姿は聖母のようです。お母様の瞳は澄んだ琥珀色をしています。私の瞳もきっと琥珀色なのでしょう。
「王妃教育のスタートは3歳ごろかしら?立派な王妃となるために、貴方にはたくさんの試練があるはずです。それらを乗り越える時、正妻の私が産んだことで貴方の負担が少しでも軽くなればいいと思うわ」
生まれたばかりなのに、王妃になるのは決定なのでしょうか。
「奥様のおっしゃる通り、他の名門の家柄では、愛人を設けたり、遠縁を養子にしたところもあると聞いておりますわ。実子でお産みになったことは、少なくとも枷になることはないはずですからね」
「自分でお腹を痛めて産んだからかしら。何より我が子が可愛くて。年を取った分、より強く感じるのよ」
「あうー。あ、あ、あう、あ、あー。(王妃?生まれたら決められているの?試練があるの?)」
そもそも王様は一夫多妻?側室の上に王妃はひとり?第1王妃、第2王妃とかいるのかしら?たくさんの疑問がでてきました。
「おしゃべりが上手ねー。そう、私がお母様。リーリア、貴方の名前はリーリアよ」
違います。聞いているのです。ただ、話せないので、まずは練習することが第一ですね。
話す特訓を始めましょう。