17、長兄の婚約者
本日午前中にもアップしてしまいました。ご注意下さい。
「今日は私の婚約者に会わせるよ。鑑定表示楽しみだなぁ」
王宮呼び出しから二日後、ブルー兄様の婚約者になるメーロ様がやってきます。
私はおもてなしとして前世で得意料理だったりんごパイを作ることにしました。
りんごのコンポートを作りながら前世を思い出します。毎年大量に送られてきたりんごで作りました。甥っ子姪っ子がりんごが届くとせびるのでこだわり、いつのまにか得意料理となりました。私のアップルパイはあっさりしていてシナモンが苦手な人も甘いのが苦手な人も食べられる工夫をしています。
パイ生地は分量を伝えてプロにお任せです。
「シナモンシュガーなしで大丈夫なんですね」
「ええ、シナモンが好きではない人もいるじゃない?」
まさに前世の甥っ子姪っ子が苦手でした。
1つずつ四角のパイ生地にできる限りきつく詰めていきます。
「リーリアお嬢様、そろそろご準備を」
ジーナが声をかけて、約束の時間まであと少しと気づきました。
「後は焼くだけよね!頼みます!」
「お任せください!」
厨房で妙な連帯感を感じながら立ち去り、慌ててお客様を迎えられる服へ着替えます。
「ただいま、いい匂いするね」
着替えるだけだったのでお菓子の匂いは着いたままだったようです。
「ブルー兄様、おかえりなさい。婚約者様も」
「はじめまして、メーロ・クロークスと申します」
頭を思いきり上下に振ったので紫の髪の縦ロールが勢いよく揺れています。そして、緊張したまま、動きません。
「これで全員顔合わせもできたからほっとした。もうすぐ婚約式だからね。末の妹リーリアにも会いたいって言ってたんだ」
「私もメーロお義姉様に会いたかったですわ」
イケメンのお兄様の心を射止めた方ですもの。気になりますわ。
「ほんとう?」
と、顔を上げたらバッサバッサのまつげ、プリッとした唇、ブルー兄様、めちゃくちゃかわいい系美女なんですね。
さらに、ふるふると見つめる姿は耳としっぽが見えるような気がします。あの愛玩犬のような…。気の所為でしょう。
「ふふふ。はい。お二人のために、今日はりんごパイを料理してました」
「リーリアからの甘い匂いはりんごパイだったんだね」
「お腹、空きませんか?」
「うん」
「ええ、お腹空きましたわ」
何故かクスクス笑い出す二人です。理由を尋ねると、王宮での私のスコーン事件を思い出したからだそうです。
「あれは、仕方なかったのです。同じ立場になったら、きっとメーロお義姉様もスコーンくらいペロっと食べちゃいますわ」
「クスクス、そうね、あのスコーンは確かに美味しかったわ」
さあ、りんごパイも負けません。焼き立てを持ってきてもらいましょう。
サクサクのりんごパイは中がまだ熱々で、サクッとジュワ~が味わえました。冷めたりんごパイもしっとりとしていいですが、焼き立てはまた違いますね。
「そうだ。コロール様から、やっぱり妊娠していたって、ありがとうってリーリアに伝えてくれって言われたよ。何?予言したの?鑑定、私も気になっているんだ。いいかな?」
私はメーロ様も鑑定し、一緒に表示します。
【ブルーナス・オーキッド・クリサンセマム(男)18歳、参謀スキル、経理スキル、王国次期宰相(仮)、弟妹を愛する者、尻フェチだが、まだ触らせてもらえない不満継続中】
【メーロ・クロークス(女)18歳、風スキル、王妃宮侍女(仮)、声フェチ、婚約者ブルーナスに耳元で囁いてほしいのを我慢中】
ええ、ブルーナス兄様はかなり学生言葉でいうとかなりイケてるボイスですからね。風スキルとは風を吹かせることができるのかしら。
二人は顔を合わせて恥ずかしがります。美女美男子の照れ、ご馳走さまです。
「ブルー兄様、メーロお義姉様、お二人の気持ちを叶える方法があります」
尻フェチと声フェチ、組み合わせならこれでしょう。
私はとてとてとドアを閉めにいきます。かっちりと。これで私と護衛以外には見られません。え?護衛と私は役得ですわ。ドアから振り返り、
「ブルー兄様、お膝抱っこしてください。それで、お姉様はあーんで食べさせてあげてください」
メーロお義姉様は恥ずかしそうにしていますが、ニコニコのブルー兄様の「おいで」という声に負けて近づきます。私は護衛のルマと仲良くニヤニヤしております。
「リーリアお嬢様、さすがですね。俺、甘すぎて胸焼けしそうです」
足にお尻を乗せ、存分に味わうことのできるブルー兄様の惚けた姿、すでに手の動きが怪しいです。お義姉様はあの近さで囁かれたら腰が砕けているかもしれませんね。尻フェチと声フェチの組み合わせならあの体勢は最高でしょう。
「女神様達の祝福のおかげでしょう」
正式な婚約者になったらお膝抱っこが定着するかもしれませんね。
「サンレーに何か啓示してやってくださいよ。サンレーあれでバレてないと思ってるんですかね」
気づいていたんですね。では、一肌脱ぎましょう。私はお互いしか見えていない二人の前を通り、りんごパイを2つ手に取り、また入口まで戻ります。1つをルマへ渡します。
「先ずはりんごパイを一緒に食べながら作戦会議ですわ」
甘すぎる二人にはちょうど良い、甘さ控えめのりんごパイです。2つ目のりんごパイはりんごのシャリッとがありました。ホールタイプでないからこその楽しみと美味しさです。隣ではサクッと聞こえてきたあと、
「…うまっ」
と呟きがありました。嬉しい限りです。
お読みいただきましてありがとうございました。
あらすじ回収までまだまだ先ですが、のんびりまったり進んでおります。




