圧縮修行と新たな世界と
ワープゲートを通り、森世界に到着。師匠が出迎えてくれる。
「おお、待ってお……なんじゃその身体!?」
そりゃビックリもするよな、戻ってきた俺の見た目が半透明になってたら。
「えーっと、ちょっと無茶しちゃいまして……」
「……おおよそ察しはつく。命をライフエネルギーに変換したじゃろう」
「ギクっ」
一瞬で勘付かれた。流石師匠。
「ワシとしてはその戦法はおススメできん。
最悪死を招く……いや、それどころか消滅してしまうからな」
「あ……!」
もしかしたらと思っていたが、やはり死ぬ可能性があったのか。
「やむを得ない状況でも使うな、とまでは言わん。じゃが、普段は封印すべきじゃ」
「はい……分かりました」
少なくとも多用は出来ないな。もし使うならいざという時だけにしよう。できるだけ。
「ひとまず、その状態は時間が経てば自然と治る。戦いの後じゃし、今日はワシの家で休んでいくといい」
「助かります」
お言葉に甘えて休ませてもらおう。
「白棒、黒棒、ちょっといいか?」
「お、どうしたんだビクトリー?」
「トドウフについて一つ確認したい事がある」
この前撃破した敵の事だ。このタイミングで一体何を気にしているんだろうか。
「確認したい事って?」
「奴がお前達の所に現れた目的は分かるか?」
ああなるほど目的か。
「目的……というか茶棒を庇って俺達を排除しようとしてたな」
「ああ。それにあいつ、茶棒の事を主様って呼んでたぜ」
思い返してみると、忠誠心の塊のような奴だったな。
「茶棒を!?そうか……となると、茶棒と棒人間狩りに繋がりがある事になるな」
「えっ?」
「なんで今の話でそういう解釈になるんだ?」
棒人間狩りは今の話の中で一度も出してなかったはずだ。
「おっとすまない、話が飛んだ。そう解釈した理由があるんだ。それは奴が棒人間狩りの一員だからだ」
「えっ!?」
「そうなのか!?」
初耳だ。俺たちの前に現れた時はそんな事言ってなかったのに。
「奴自身がそう名乗った訳ではないが、Xが通信機で棒人間狩りのリーダーらしき人物とやり取りをし、その直後に『主様の命令によりXの救援に参った』という台詞と共に奴が現れたんだ、間違いない。まさかその主様が茶棒だとは思わなかったが」
「ちょっと待て、Xとも戦ってたのかお前達」
「ああ。俺と青棒、トドウフとXの2vs2……の構図だったな」
俺たちが茶棒と戦っている間にビクトリー側ではそんな状況になってたのか。ん、待てよ。Xが棒人間狩りのリーダーとやりとりをして、主様の命令でトドウフが来たって事は……
「もしかして、主様……茶棒と棒人間狩りのリーダーって同一人物じゃないか?」
「俺もその可能性は考えた。だが、声が違ったんだ」
「それなら違うか……」
声が違うならその可能性は無さそうか。ただ少なくとも、茶棒が棒人間狩りと関わりがあるのは間違いない。となると……棒人間狩りの一員であるXが危ないな。
「この繋がり、Xに伝えた方がいいんじゃないか?」
「俺も同じ事を考えていた。次会った時にでも警告しておこう」
次に会った時、か。いつになる事やら。
「そういや、トドウフの奴突然消えたんだよな?戦いの最中に突然姿を消したって事か?」
「そうだ。『主様からの救援命令だ、迅速に向かわねば』そう言い残して奴はワープゲートで姿を消した。その後Xは退散し、俺は師匠からの通信を受け、お前達の救援に向かったんだ」
「へえ、そういう流れだったんだな」
戦闘の真っ最中でも茶棒からの命令が来たら即優先か。本当に忠誠心の塊な奴だったんだな。
「念の為尋ねておいてよかった。まさか茶棒と棒人間狩りに繋がりがあるとは……よし、そろそろ俺は一度エネルギー世界に向かって青棒と合流する。もし何かあったら呼んでくれ」
「分かったビクトリー。さっきの救援、本当に助かったぞ」
ビクトリーとは一旦ここで別行動か。
「ちょーっと待った!」
「え、どうした黒棒?」
黒棒がストップをかけた。休む前に何かやっておきたい事でもあるのか?
「なあなあ白棒、お前もビクトリーの圧縮見ておかねえか?俺はさっき見たけど凄え参考になったぜ!」
「え?ああ、そうだな」
「む、お主、圧縮が出来るようになっておったのか」
「はい!とは言っても、少し前に習得したばかりではありますが」
そういえばさっきの戦いでビクトリーが圧縮を使える事を知ったんだった。もしかしたら参考になるかもしれない。
「いいだろビクトリー?」
「ああ、構わない。ただ、身体の中で圧縮するから見るというか感じ取る、だな」
「ああそっか」
ビクトリーの身体の中にあるエネルギー……この赤いのだな。よし、感じ取った。
「今から圧縮する、よーく覚えてくれ」
「おお、これは……」
ビクトリーの体全体にあったエネルギーが少しずつ真ん中一点に集中していく。赤棒の時とは違う位置だ。
「よし、これで取り出して完了だ」
「ほほう、これぞ圧縮じゃ。完全に成功しておるぞ」
やがて一つの塊になり、身体から飛び出てビクトリーの手の中に収まった。
「ちなみに威力は……よっと」
それを近くにあった大きな岩に放り投げると岩を砕いて爆発が発生し、煙を立てながら消え去った。
「うぉおっ!?」
「見ての通りだ。圧縮無しなら完全には破壊できなかっただろう」
これが圧縮の力……こうして目にすると習得したいという気持ちがますます高まってきた。
「今のでだいたいやり方は分かったか?」
「ああ。ありがとうビクトリー」
「簡単そうに見えるが、慣れるまでが大変だ。俺も圧縮を知ってから習得するまでに随分かかってしまったからな。ひたすら練習あるのみだ」
「ああ、分かった」
ビクトリーがワープゲートを開き、その中に入っていった。
「よーし、じゃあ早速練習し」
「黒棒?」
「冗談だって白棒!流石に今日は休まねえとな」
「うむ、疲れたまま修行しても成果は得られん」
「あはは……」
今日は休んで、明日から圧縮の修行を始めよう。
「そういや、星と赤棒はまだ家で寝てるんか?」
おっとそうだ。二人の様子を見ておかないとな。確か家の中にいるはずだ。もう元気になっているだろうか。
「おお、あの二人なら……」
「いやっほぉおーっ!!」
「おーい、白棒!黒棒!」
「あの通りじゃ。ワシと茶棒が戦ってる時の音や衝撃がうるさくて起こしてしまったんじゃろうな」
森の中から星と赤棒が飛び出して来た。元気そうで良かった。
「赤棒!星!」
「おっ、復活早いじゃねえか赤棒!もう大丈夫なのか?」
「おうよ!そりゃもうバッチリだ!って事で、ここらで一発ぶちかま」
「またやる気か!?さっきみたいに吹っ飛ぶぞ!?」
「懲りてないのう赤棒。ちょっとこっちに来い、力加減の修行じゃ」
「ぁあいででで引っ張らないでくれええぇぇぇ……」
赤棒が一発放とうとした所を師匠に止められ、森の中へと連れて行かれた。
「ささっ、こっちこっち」
「おっと」
「うわっとと」
俺と黒棒も星に手を引っ張られて師匠の家の中へと連れて行かれる。
「はい、マスターがこれ飲んで、って!」
「お、回復薬か。ゴクリ」
「んぐ、んぐ……プハー!」
家の中で星が俺たちに回復薬を手渡してくれた。早速飲み干すと、みるみるうちに傷が消えて無くなった。これで今晩休めば明日敵が襲ってきても戦えるな。
「ふわあぁ〜……」
一安心した所で眠気が襲ってきた。もう寝るとしようか。
「ぐがー……」
「寝るの早っ!?」
黒棒はもう横になって寝てた。判断が早い。
「白棒もさ、休んで休んで」
「ああ、そうだな……ぐぅ」
「おやすみなさーい」
横になって目を閉じ、そのまま深い眠りに落ちていった……
〜翌日〜
「昨日はよく眠れたか?」
「ああ。おかげで元気全快だぜ!」
「はい、バッチリです。回復薬もありがとうございました」
「うむ、なによりじゃ。身体の薄さも元に戻ったようで安心したわい」
睡眠と回復薬のおかげですっかり回復できた。身体の薄さもすっかり元通りに。
「それと白棒、前にへばり付いている星は外しておくんじゃぞ」
「はい」
「うわー」
そう、起きてからずっと腹に違和感を感じていたのだ。星に張り付かれているとすぐに分かったが、特に理由もなくそのままにしていた。師匠に指摘されたのですぐ外した。つまむ時にちょっと柔らかい感触がした。
「何やってんのさ星」
「えへへ、あまりにも無防備だったからつい」
とまあ、イタズラの話はここで区切るとして、圧縮の修行だ。昨日見たビクトリーの手本を参考にして完成させよう。
「すぅ……」
「む、圧縮にチャレンジするんじゃな」
目を閉じ、身体の中にあるエネルギーに意識を向ける。ゆっくり、じっくり、静かに、確実に……エネルギーを一点に集中させていく。
「……よし」
そして身体の中から取り出す。
「ほほう、一発で成功させるとはのう」
「一発ってすっげえじゃねえか白棒!」
てっきり時間がかかると思っていたが、まさか一発で完成するとは思わなかった。
「俺も負けてられねえな、いくぜ!」
黒棒が目を閉じてじっとする。
「お……よーし、上手くいったぜ!」
数秒の後に黒棒が身体の中から圧縮されたエネルギー、もとい暗黒物質を取り出した。
「二人共一発成功とは……やはりお主らにはエネルギーの才能があるようじゃのう」
「えっへへ、そうだろ?」
「よし、もう一回やるぞ黒棒」
「おっとそうだな、今のがまぐれって可能性もあるもんな」
ただ一回出来ただけだ。スピードも師匠に比べてまだ遅い。成功率を上げ、動作を素早くし、実戦で使えるように鍛えていかないといけない。
「「ふぬぐぐぐ……」」
圧縮の修行は続いていく。
「そうだ黒棒、せっかくだし身体も鍛え直すぞ」
「いいぜ乗った!ついでだし他にも色々試そうぜ!」
「賛成!」
こうして圧縮に慣れる為の修行と筋トレとその他諸々の修行を始めてから数日が立った後の事……
「む?」
ふと、師匠の腕輪が鳴り出した。
「こちらマスターじゃ」
『こちら青棒、白棒と黒棒、赤棒を呼んでくれ』
「すぐ近くにおるぞ」
「ああ、ここにいる。どうしたんだ青棒」
青棒からの通信か。
「青棒だ、やっほー」
「よう青棒!」
『星もいるのか。まあいい、用件を伝える。まずは赤棒、こっちの世界に来てくれ。爆発の呪いの対処法ができた』
「おっ、さっすが青棒だぜ!……だけどわりぃな。この前白棒からバッチリな対策教えてもらってさ、とっくに解決しちまったんだよな」
「そうか……白棒、感謝する」
「いやいや、青棒の対策の方がバッチリだと思うしお礼なんて」
「対策は多いに越した事はない。さあ赤棒、今から転送するぞ」
「了解!赤棒、いっくぜーっ!」
その言葉と同時に赤棒が青い光に包まれ、そのまま消失した。
『そして白棒、黒棒、お前達に頼み事がある』
「僕は違うの?」
『そうだ星、お前は森世界で待機だ』
「はーい」
『さて内容だが、ビクトリーと共に風世界に向かってほしい』
おっと新しい世界の名前が出た。
「風世界?」
『地面が無く強風が吹き荒ぶ世界だ』
「地面が無い!?どうやって動くんだ?」
『風の流れに乗って空中を飛び回り続けるしかないな』
「うーん……」
空を飛ぶ経験は無いな。ぶっつけ本番で慣れていくしかないか。
『最近茶棒によって住人達が壊滅させられたとの情報が入っている』
最近茶棒に襲われた世界か……あいつの事だから皆殺しにしているだろうな。
『その世界で茶棒を探し、そして見つかり次第追跡装置を付けてほしい』
「追跡装置ってどんなんだ?」
『超小型の……例えるなら米粒程度の大きさの発明品だ。身体のどこかにぶつければ勝手に張り付き、以降俺にそいつの位置情報が伝わるようになる』
「へぇ〜」
茶棒の位置が常に分かるようになるのか。奇襲の対策になり……なんならこっちから奇襲を仕掛ける事もできるようにもなるな。
「分かった青棒、とりあえずその装置を何個か転送してくれ」
『ああ、それなら…..』
俺たちのすぐ横に赤いワープゲートが出現。
『既にビクトリーに渡してある』
「数日ぶりだな白棒、黒棒」
「「ビクトリー!」」
そこからビクトリーが現れた。そうか、装置はビクトリーの手にあるのか。
「青棒から装置貰ってるんだろ?」
「追跡装置の事か。この通り、三個貰っている」
ビクトリーが片手を開くと、そこには三個の追跡装置が。小さすぎる、まるで豆粒のようだ。
「俺たち三人で一個ずつ持っておこう。誰が見つけても張り付けられるようにな」
「そうだな」
「いっただき!」
俺たち三人で一個ずつ分け合った。無くさないように気をつけないとな。
『よし、揃ったな。早速だが向かってくれ』
「分かった。二人共、俺について来てくれ。ワープゲートを開く」
「ああ」
「おうよ!」
ビクトリーがもう一つのワープゲートを開き、三人で飛び込んで行った。さあ、風世界へ出発だ。




