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主に忠を尽くす者


 こっちには俺と黒棒に師匠、敵側には茶棒とトドウフ。3vs2の状況だ。ビクトリーの救援が間に合えば更に一人増えて4vs2になる。


「さあどうするつもりじゃ。言っておくが、ワシの弟子達に手は出させんぞ」

「うーん……撤退、はするつもりないけど一つ提案してもいいかな?」

「提案?」


 茶棒が刀を横に向けてそこから赤いワープゾーンを生み出した。その先には師匠の家が……まさか脅しているのか?


「こっちでやり合おうよ、1対1でさ」

「脅しのつもりかお主」

「そんなつもりないんだけどなぁ。まあ君が乗らないなら代わりにこの家の人達で快楽を満たすだけだし」


 やはり仲間の存在に気付いていたか。つくづく恐ろしくて憎い相手だ。


「……よかろう、とことん相手してやる」

「よし交渉成立。ごめんねトドウフ、このジジイの相手するから手伝えそうにないや。この際トドメも君に任せるよ」

「いえ、大丈夫です主様。私一人で命令を果たします」

「じゃあ頼むね」


 そう言うと茶棒は素早くワープゲートの中に入って行った。


「っと白棒よ、エネルギーが枯渇しておるようじゃな。少しワシのを分けておこう」

「ありがとうございます師匠!」

「それと黒棒にもじゃな」

「助かるぜ師匠!」


 師匠からエネルギーを貰う事が出来た。それも少しどころかほぼ満タンになるまで。ライフエネルギーではないからダメージの受け過ぎには気を付けないといけないが、これでまた存分に戦える。


「ワシは奴を食い止める。トドウフの相手は任せたぞ」


 師匠がワープゲートの中に入り、それは閉じた。


「茶棒に続いての連戦になるけどいけるか黒棒?」

「おうよ、大丈夫だ!」


 茶棒と師匠がこの場から離脱し、残るは俺と黒棒、そしてトドウフだけ。人数差はあるが、有利とは言えない状況だ。


「でもさ、ビームを防がれちまったし相当硬いぞあいつ」


 そう、奴の厄介な点はエネルギービームを真っ向から防ぐ程の耐久力だ。破る事が出来なければ、この戦いに勝てない。ビーム以上の威力を出す方法が何か無いだろうか。


「まあ悩んでたって仕方ねえか」


 現状いい考えは思いつかないな。


「話は終わったか?」

「ああ、今終わった所だ」

「ならば主様の命令に従い排除する」


 トドウフが構えるのに合わせ、俺たちも戦闘の構えを取る。さあ、どう仕掛けてくる?


「ぬんっ!」

「うおっ何だ!?」


 奴が力むと同時に緑色でドーム状のバリアがそこから広がっていく。それと同時に奴が身体に持っているエネルギーの量が結構減少したように感じ取れた。なるほど、奴が使うエネルギーは緑色か。特徴はまだ分からないが。


「ってすり抜けた……?」


 俺たちがそれに当たって吹っ飛んでいくかと思いきやそのまますり抜け、最終的に俺たちと奴を囲むぐらいの大きさで拡大が止まった。


「絶対に逃さないって事か」

「察しがいいな、その通りだ。因みに私が死ぬまで解除されない」

「へっ、バリアなんて破壊すりゃいいじゃねえか!」


 そう言って黒棒がエネルギーの弾をぶつけたり殴ったりしたがびくともしない。それどころか殴った黒棒が痛がる始末だ。


「痛ぇえ〜っ!?なんて硬さだよこのバリア」

「当然だ、その程度の攻撃など痛くも痒くもない」

「あーもう、外も中も硬いのばっかりでやんなっちゃうぜ……」


 バリアも奴も硬さはだいたい同じぐらいだと想定した方が良さそうだ。


「なんてな、エネルギーバースト!」

「ん?」


 っと、まだその技があったな。バリアを構成しているエネルギー自体を爆破して無くしてしまえば硬さなんて関係ないがーー


「よし、穴が開いて……ねえぞあれぇ!?」

「何をしたかは知らんが、無駄だったな」

「この技の仕組み的に防がれるも何もあったもんじゃねえはずだけどなぁ……」


 それでもダメだったか。エネルギーを爆破する技で爆破は出来たが通用しないという事は……どういう事なんだ?ひとまずバリアに使われているエネルギーを感じ取ってみるか……なるほど、合点がいった。


「黒棒、原因が分かったぞ。このバリアにはエネルギーが大量に使われているんだ」

「ああそっか、だからだ!」


 エネルギーバーストは一回で爆破できるエネルギーの量に限界がある。その量よりもバリアに使われているエネルギーの量の方が多かったから爆破しきれなかったという訳だ。


「じゃあ連打すればいいんじゃねえか?別に俺のエネルギーを消費する技じゃねえし」

「すぐに張り直された上に対策されるのがオチだ。今は止めておいた方がいい」


 いざという時の逃げの手段になるかもしれないからな。今は本体を撃破する方法を考えよう。


「諦めて砕け散れ」


 トドウフが黒棒に接近し右手で殴りかかる。


「そんな大振り、簡単にかわせるぜ!」

「それはどうかな?」


 それに対して黒棒が動こうとしたタイミングで奴が左手から小さなエネルギーを複数放出。黒棒の両腕と両足にへばり付いた。


「なんだこりゃ、動けねえぞ!?」

「一度へばり付くと動かなくなるエネルギー弾だ、これで回避はできまい」

「拘束技か……」


 厄介な性質を持っているなあのエネルギーは。それよりもこのままだと黒棒が殴られてしまう……だけどそうはさせない!


「バリア!」

「無駄だ」

「嘘だろっ!?」


 黒棒の周りにドーム状のバリアを張るも、そのまま殴り壊されてしまった。


「くそっ、なら俺の身体で!」

「しつこい!」

「がっ!?」


 今度は黒棒の前に立ち塞がろうとするも、衝撃波を放たれて吹っ飛ばされてしまった。まずい、もう間に合わない……!


「ぐぁあああっ!!」

「黒棒っ!!」


 トドウフの拳が黒棒の顔面にめり込み、その勢いのまま地面に叩きつけられクレーターを作り出した。バリアを簡単に粉砕する所といい、相当な怪力だ。黒棒を拘束していたエネルギーは殴られた瞬間に消滅した。


「さて」

「く……っ」


 トドウフがこっちを向き近付いて来た。同じようにぶん殴ってくるのだろうか。それなら上等だ、俺だってやってやる。身体強化……は普段通りだと奴の力を上回る事が出来ない。ならどうするか。


「身体強化!よし!」


 より多くのエネルギーを消費する。思いつきでやってみたが成功したようだ。力がみなぎってくる。


「身体を強化する技か、面白い。なら力比べといこう!」


 奴がさっきと同じように接近しながら殴りかかって来た。俺もそれに対応して拳を構える。


「「はぁあっ!!」」


 拳と拳がぶつかり合い、その衝撃が地面や空間を揺らした。奴の拳の重みが全身に伝わってくる。


「やるな、力には自信があったのだが……!」

「ぐぐ……!ううっ……!!」


 押しも押されもせず互角。だが長引けば長引くほど身体強化の効果が切れる分こっちの方が不利になる。ここから更に行動を起こさなければ。


「そこだっ!」

「おっと危ない」

「くっ!」


 奴の腹辺りをもう片方の手でぶん殴ろうとするも、奴のもう片方の手に掴まれて止められてしまった。後はどんな手段が残ってたか。エネルギーをぶつけても意味がなさそうだしな……よし、あの手でいこう。


「すうぅぅーっ……」

「今度は何をす」

「だぁああああああっ!!」


 エネルギー世界でのXとの戦いでとっさに放った大声。あの時は怯ませる事が出来たが、今回はどうだ?


「ぐうっ!?」


 よし、成功だ。一瞬だが奴の力が弱まった。これなら押し切れるぞ。


「うらあっ!」

「貴様っ!」


 奴の拳を弾き、掴まれていた手も振りほどき、隙を晒した奴の身体にーー


「くらぇええええっ!!」


 両方の拳で怒涛の連続パンチを叩き込む!


「フィニッシュだ!!」


 そして最後は渾身のアッパーカットで上空に吹っ飛ばす!


「はあっ、はあっ」


 吹っ飛ばされた奴はそのまま落下して地面に倒れ伏せた。ただ、声を上げなかったという事は大したダメージが入ってなさそうだ。


「ふうっ……」


 今の身体強化だけでかなりエネルギーを消費してしまった。この世界みたいにエネルギーの補給が難しい場所で今回の身体強化を行うなら全身ではなく腕や足の一部分だけに絞った方が良さそうだ……はっ、そうだ黒棒は!


「いでで……」

「黒棒、大丈夫か!?」

「ちょっと顔がヒリヒリするけどまだいけるぜ」


 黒棒が顔を押さえながら立ち上がった。気絶はしてなさそうで一安心。


「まさかこの私が力負けするとはな」


 奴も立ち上がったか。やはり平気そうだ……ん?さっきよりもエネルギーが更に減っているな。何か技を使ったようには見えなかったが。もしかしてーー


「トドウフ、お前のエネルギーは動きを止める他にダメージを肩代わりする能力があるんじゃないのか?」

「ほう、よく勘付いたな。正解だ」


 やはりそうか。動きを止めて、ダメージを食い止める……仮に名付けるならストップエネルギーといったところか。


「ごまかさなくていいのか?」

「遅かれ早かれバレる事だ」


 それなら話は簡単だ。攻撃を仕掛けまくって奴のエネルギーを空っぽにしてやればいい。


「それにバレたとしても、貴様達がこれ以上私の身体に攻撃を当てる事は不可能だからな」


 トドウフが自身の周りに球状のバリアを張った。そう簡単には攻撃させてもらえないか。


「そりゃあその状態なら守れるだろうけどよ、攻撃できないんじゃねえか?」

「問題ない」


 黒棒の疑問にトドウフが答え、そのままバリアごと突進してきた。


「うおっと!?」

「押し潰せばいい話だ」


 黒棒は十分に引きつけた後に横に転がって回避。トドウフは急停止して振り返り、再度突進。


「拘束されなきゃお前の動きなんて余裕で避けられるぜ!」


 黒棒が上に飛び上がり、バリアを踏みつけて更に上にジャンプ。


「ほーら食らえ食らえ!」


 そこからエネルギーの弾を数発発射。そのままトドウフに全弾命中し、バリアを破壊した。


「くっ」

「へえ、それは案外脆かったんだな」


 これで本体に直接攻撃できるようになった。しかし、相手からも攻撃が可能になり、拘束技が飛んでくる危険もあるので気を付けなければ。


「黒棒!さっきの拘束技に気を付けろ!」

「おうよ!来ると分かってりゃなんとかなるぜ!」


 黒棒がトドウフの所に飛び込み、奴の身体を殴り込み始めた。奴はガードもせず棒立ちの状態だ。


「オラオラオラァ!!」


 トドウフが右手を構え、殴り込み中の黒棒にエネルギーを発射。


「おっと危ねえ!」


 黒棒はすぐさま後方に下がって回避し、またトドウフの目の前に戻って殴り込みを再開。奴のエネルギーが凄い勢いで減少し続けている。


「このまま終わらせてやるぜ!」


 この調子で殴り続ければトドウフのエネルギーが尽き、ダメージが蓄積してあっという間に撃破の流れだ。


「ふんっ!」

「どわあっ!?」


 トドウフが力んで周りに衝撃波を放ち、黒棒を吹っ飛ばした。流石にこのまま撃破とはならなかったが、奴のエネルギーはこの攻撃によりほぼ枯渇した。


「へっ、ほぼほぼ削っちまったぜお前のエネルギー。降参した方がいいんじゃねえか?」

「降参?私が主様の命令を果たさず撤退する訳がない」


 奴の戦う姿勢は変わらずか。強がりにも見えないし、何か作戦か技があると考えた方が良さそうだ。



「ん?」



 何か聞こえた。これは……ワープゲートの開く音だ。どこからだ?



「白棒!黒棒!」


 バリアの外か!それにこの声は……!


「「ビクトリー!!」」


 ビクトリーの救援が来た!


「大丈ぶえっ!?」

「あ……」


 直後にバリアに真っ正面から衝突し、そのままずり落ちていった。そりゃあバリアの目の前でワープゲートが開いたらそうなるよな。ちなみにそのワープゲートはもう消えた。


「ビクトリー……」

「やめろそんな目で見ないでくれ」


 黒棒が少し心配そうな目でビクトリーを見ている。


「さっきぶりだな。随分と情けない登場の仕方じゃないか」

「トドウフ!?突然姿を消したと思ったら何故ここに……?というかあの登場の事はもうほっといてくれ!」


 トドウフにも弄られてるな。それはそうと、会話の内容からして知り合いなのか?


「奴を知っているのかビクトリー?」

「ああ。知ってるも何も、さっきまで俺が戦っていた敵なんだ」

「マジか!?それなら弱点とか分かるのか?」

「いや、そこまでは分からなかった。弱点ではないが、守りが得意という事ぐらいだな」

「あーそうか……」


 うーむ、守りが得意なのは今戦ってる俺たちでも分かってた特徴だし、新しい情報は得られないか。


「ビクトリー、話は変わるがこのバリアを破壊できるか?硬すぎて俺たちじゃ破壊できないんだ」


 正直黒棒のエネルギーバースト連打なら可能性はあるかもしれないが。


「分かった。今叩き割ってやる!」


 ビクトリーが立ち上がって両手を上げ、バリアに向かってVの字を描くように振り下ろした。


「ビクトリースラ……っ!?」


 しかし、バリアに穴が開き、その一撃はバリアを割る事なく穴を通過して地面に叩きつけられた。


「穴!?」

「私の作ったバリアだから、私の好きなようにできる。当たり前の話だ」


 穴が閉じ、ビクトリーがバリアの中に閉じ込められた。まさか三人を一気に相手するつもりなのか?


「くっ、俺を閉じ込めたのか。だけどこんな狭い中で3対1なんて流石に無茶が過ぎるんじゃないか?」

「問題無い。一気に倒す手段がある」

「なっ……!」


 やはりまだ奴には何か手があるようだ。ビクトリーが参戦した事でかなり有利状況にはなったがこの戦い、まだまだ油断はできなさそうだ。

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