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白黒コンビネーション

「「身体強化!」」


 何も無い世界での茶棒との戦い。俺と黒棒はまずエネルギーを消費して身体を強化。アーマー……はいいか。焼け石に水だ。


「早速エネルギー使ってるけど大丈夫なの?時間経過以外じゃ補給出来ないよ?」


 茶棒の鋭い指摘が刺さる。だが、最低限こうしないと特にスピードが足りずに今まで通り蹂躙されるだけだ。


「まあいいや。一瞬で終わらせちゃうから覚悟しててね」


 そう言うと茶棒が刀を構えて高速でこっちに接近し、姿を消した。この感じは……あの技か!


「離れろ黒棒っ!」

「おうよ!」


 黒棒共々その場を急いで離れる。


「レッドミキサー!」


 やはりそうだ。無数の赤い斬撃が超高速でその場を駆け回る技。X戦の時に決め打ちで判断して失敗した事もあって少し不安だったが、この判断方法が必ずしも悪い結果を生み出す訳ではない事が分かって一安心だ。


「今まで技名なんて口にしてなかったじゃねえか。どういう風の吹き回しだ?」

「なあに、ようやく殺せると思うと興奮してきちゃってね」

「変態」

「酷い事言うね君……まあいいや、まだまだいくよ」


 その場でとどまっていた斬撃が外に向かって飛び出した。当然俺たちの方向にも。


「こんなもん、似たような技で予習済みなんだよ!」


 俺と黒棒は上下左右に動きながら軽々と斬撃を避けていく。師匠との実戦やX戦の時に大量の弾が飛んでくる技を経験したのが活きたな。しばらくすると斬撃が放たれていた地点から茶棒が現れた。


「そろそろ俺たちにも攻撃させてくれよ」

「やだね」


 赤い刀を二回振り、俺と黒棒それぞれに斬撃を一つずつ飛ばしてきた。


「さっきに比べりゃ簡単だな」


 当然難なく回避。しかし嫌な気配が消えない。振り返ってみるとーー


「どわっ!?」

「うおおっ!!」


 今避けた斬撃がこっちに戻ってきていた。横に移動し、もう一度回避。だが、斬撃がUターンしてまた向かって来た。


「くそっ、追尾するのかこいつ!」

「そうそう。そんなに避けたいなら永遠にやってればいいんたよ」


 避け続けてもキリがない……ならば。


「黒棒、俺の所に近付いて待機だ!」

「了解!」


 俺と黒棒が同じ位置で待機して二つの斬撃が近付くのを待ちーー


「今だ飛べ!」

「おうよ!」


 至近距離まで近付いた所でその場をジャンプで離れ、斬撃同士をぶつけて相殺させればいい。


「よし、成功だ!」


 作戦通り、斬撃がぶつかり合って消滅。


「今度はこっちからいくぞ!」

「いくぜっ!」

「「スプレッド!」」


 さっきから攻撃されっぱなしだったが、今度は俺たちが攻める番だ。まずは二人で牽制がわりに小さなエネルギーの弾を大量に飛び散らせる。


「こんなものが効くと思うかい?」


 茶棒がそれに反応して刀を振り、弾のほとんどを切り裂く。更に一歩後方に下がり、姿を消した。


「追いかけてくれ黒棒!俺も奴の場所を探して支援する!」

「よーし任された!逃がさねえぜ茶棒!」


 黒棒が追跡役、俺がその支援役と役割分担を行った所で、目を閉じてエネルギーを感じ取ろうとする。


「ん、早いな」


 早速反応があった。赤色だ。さて、場所はーー


「え?」


 目の……前?


「はっ!?」

「いいねその顔」


 茶棒だ、茶棒が目の前に……!!まずい、回避や防御が間に合わない!


「く……っ!」


 なら一か八かだ。エネルギー弾の早撃ちで奴に攻撃される前に爆発を起こし、その反動で距離を取る!


「このおっ!!」

「おわっと!?」

 

 エネルギー弾が奴の身体に着弾してその場で爆発。その反動で俺は吹っ飛ばされて着地した。流石に無傷とはいかなかったが、奴に斬られるのに比べれば軽傷だ。これならまだまだライフエネルギーは持ちそうだ……そういえば黒棒との手合わせの時も似たような事してたな。


「あちゃー、ドッキリ失敗かぁ」

「少しも痛がらないんだな」

「ま、このぐらいなら普段の殺し合いでも受けるダメージだしね」


 茶棒は平気そうな表情だ。両手で身体についた埃を払っている……ん?


「お前、刀はどうしたんだ?」

「ああ、それなら……」


 なんだ、猛烈に嫌な予感がーー




「がぁあっ!!」


 突然、後ろ側の頭から足まで一直線に激痛が走った。


「丁度君の後ろに落ちた所だよ」

「が……ぁ……」


 そうか、俺の真後ろに…….何故気付けなかった?見逃していたとしても、落下する時の音で気付かないはずがない。もしかして、奴は音を消す技が使えるのか?


「ぐ……うう……!」

「死角からの不意打ちだし、なかなか重いダメージ入ったんじゃないかな」


 今のダメージを肩代わりしてライフエネルギーが大分消費されてしまった。だが、ここでまだ倒れる訳にはいかない。


「ちょっと手間取ったけど、トドメを刺させてもらうよ」


 茶棒が歩いて近付いて来る。恐らく刀を拾い直して俺を殺すつもりだ。


「そうはさせるか!」

「遅いよ」


 茶棒の身体を掴んで歩みを止めようとするも、軽い身のこなしであっさりと避けられ、刀を拾われた。


「白棒ーっ!!」


 黒棒が戻って来てくれた。


「邪魔される訳にはいかないし、分断させてもらうよ」


 茶棒が刀を下から振り上げると同時に、俺と黒棒を分断するように超巨大な赤い壁がこの世界にそびえ立った。


「どわっ!?なんだこりゃ!?」

「君はこいつが死ぬまで大人しく見てなよ」

「ふざけんなこの!いだっ!?」


 黒棒が壁をぶん殴るも、ヒビ一つ入らず、殴った方が痛がる始末。相当頑丈だな……


「悪い白棒、俺がこれをぶち破るまでの間耐えててくれ!」


 いや、それだとダメだ。普通に壁を破ったとしてもまた張り直されてやり直しになるだけだ。


「待て黒棒、ビームを溜めておいてくれないか?」

「えっ、壁は割らなくていいのか?」

「そのままで大丈夫だ」

「よーし分かった、遠慮なく溜めさせてもらうぜ!」


 壁を放置して黒棒にビームの準備させ、茶棒に二択を迫る。そのままビームを溜めさせるか、壁を解除してさっきのように俺たち二人を相手にするか。前者はビームが当たらなければ意味が無いが、その点に関しては作戦がある。


「ふーん、ワンチャンに賭けてるみたいだし、その前に何としても君を殺さないといけないね!」


 茶棒は前者を選んだみたいだな。心なしか少し目が本気になったように見える。これでビームが溜め終わるまでに俺は茶棒の攻撃に耐えなければならないのだが、俺のバリアやシールドなどの守る技にはまだ奴の攻撃を防ぎ切るだけの耐久力がない。簡単に叩き割られてしまうだろう。ならば一か八かだ。


「身体強化!」

「よっと!あれ?」


 身体強化で速度を上げて回避に賭け、万が一直撃したとしてもそのダメージをライフエネルギーで肩代わりすればいい。もう身体にそこまで多くは残っていないが。


「君のエネルギーは残り僅か。殺されるのも時間の問題だね」

「いいや、まだまだこれからだ」

「その強がり、いつまで続くかな?」


 ここから俺はひたすらに時間を稼いだ。茶棒が突撃してきたら距離を離し、追いつかれそうになれば横回避。斬撃を大量に繰り出してきたなら一発一発丁寧に避けていった。しかし、逃げ続けている内に身体強化の効果が切れてしまいーー


「よし、捕まえた」

「くっ、まずい!」


 茶棒に腕を掴まれてしまった。


「大分手こずったけど、これで逃げられないね」


 刀が振り下ろされる。これは避けられないーー


「うっ!?」

「おわっ!?」


 と思いきや、突然目の前で黒い爆発が起こり、俺と茶棒はそれぞれ離れるように吹っ飛ばされた。今の爆発って……?


「へへっ、大成功!」

「黒棒、もしかしてお前が?」

「ああ。一発勝負ではあったけどな」


 黒棒による攻撃だったのか。だけど壁は割られていない。一体どんな方法を使ったんだ?


「……ふーん。もしかしなくてもさ君、僕のエネルギーを直接爆破したよね」

「その通り!壁が邪魔だから直接お前のいる場所を攻撃できないかと思って試したのさ。上手くいって良かったぜ!」

「はーあ、これじゃ壁を張った意味が無いよ」


 特定の位置にあるエネルギーを直接爆発させる技か、そんな攻撃方法があったんだな。


「うおっと!?」

「っと、会話中にやれば当たるかと思ったんだけどね」


 話し込んでる最中にいきなり頭に向かって刀が飛んで来た。とっさに頭を傾けて避けたが、本当に気を抜けない相手だ。刀が落下して地面に突き刺さるのを確認した後、茶棒のいる方向に向き直る。


「あれ?」


 茶棒の姿が消えた。ならエネルギーを感じ取って場所を探る。


「……よし、いた!」


 俺の周りを赤色のエネルギーが飛び回っている。これで間違いない……赤色?いや、気にしている場合じゃない。


「よっこら」

「うおっ!」


 茶棒がこっちに飛びかかって来たタイミングで移動し、辛うじて回避。


「うーん、流石にこれは当たらなくなってきかぁ」

「こっちは散々経験してきたもんでな」


 こいつだけじゃない、黒棒やXからも同じような攻撃を仕掛けられた事がある。何回も何回も受けていれば慣れてくるというものだ。身体強化が切れているせいか、今回はギリギリだったが。


「それにしてはギリギリだったよね?」

「く……」


 案の定見抜かれてる。時間稼ぎはこの辺りが限界か。黒棒のビームの溜まり具合は……よし、充分だ。後は動きの速い茶棒にどう当てるかだが、そこは作戦がある。


「さあ、これで本当に終わりだよ!」


 茶棒がこっちに突っ込んで来た。


「があっ!!」

「なっ、白棒っ!!」


 俺はこの攻撃を避けずに身体で受け止めーー


「ぐっ、大人しくしろ!」


 茶棒の身体に覆い被さって動きを封じた。


「うえっ!?何のつもりなの君!?」


まさか拘束してくるとは思わなかったのか、ここ一番の驚きを見せる茶棒。


「白棒、お前まさか……!」


 悪い黒棒、そのまさかだ。


「今だ黒棒、俺ごと撃つんだ!」

「よせ白棒!ただでさえ手負いなんだぞ!?いくらタフなお前でもただじゃ済まねえ!」

「心配するな、このぐらい耐えてやる!」


 ビームが避けられてしまえば茶棒はもう溜め直す隙を与えてはくれないだろう。状況を打開するにはもうこの方法しかない。自分一人が犠牲になって仲間が助かるなら安い物だ。


「く……っそぉおおおおっ!!」


 黒棒が両手に溜めていたエネルギーを前に突き出し、全力のビームを解き放った。まっすぐに進んで壁を難なくぶち破り、俺と茶棒の元に迫る。


「くっ、このっ、離せっ!!」

「ダメだ、絶対に離さねえっ!!」

「くそっ!があっ!!っはぁ……」


 茶棒が必死にもがこうとするのでもっと力強く拘束。やがて無駄だと分かったのか抵抗を止め大人しくなった。やけに潔いな……何か作戦があるのか?


「しょうがない、奥の手一つ使うかぁ……」


 奥の手……やっぱり何かあるみたいだな。この状況から一体何を仕掛けるつもりだ?



「頼むよ」






「なっ!?」

「防がれた!?」


 突如茶棒の前に何かが現れ、ビームが防がれてしまった。


「大丈夫ですか主様」

「ふう、助かったよトドウフ」


 初めて見る姿だ。緑色で人型、身体全体に黒いヒビ……名前はトドウフか。大きさは俺たち棒人間よりも僅かに大きい。会話の内容からして茶棒の仲間だな。それもかなり忠誠心の高い。


「白棒、こりゃかなりマズイんじゃねえか?」

「ああ……」


 渾身の一撃が防がれ、敵がもう一体。正直……最悪の状況だ。奥の手一つでここまで状況をひっくり返されてしまった。


「じゃあ次の命令。この二人を瀕死に追い込んで。僕も手伝うけどトドメだけは譲ってね」

「お任せ下さい主様」

「奥の手を一つ切る事になったんだ、絶対に生きて帰さないよ君達は」


 せめて、せめて俺が囮になって黒棒だけでも……いや、諦めるな。まだ手はあるはずだ。何か考えろ……!


「さっさと死にゃあっ!?」


 茶棒が突撃ーーしたと思ったら唐突に現れた青い壁に激突した。


「壁?っていうかあれエネルギーでできてるぞ」


 青いエネルギーで作られた壁……青といえば世界中に存在する普通のエネルギーだ。だけどこの世界自体にはエネルギーが無いはず。という事は……


「もしかして……」

  






「なんとか間に合ったようじゃの」


「「師匠!!」」


 師匠だ、師匠が助けに来てくれた!


「あの時ワシが爆発に気を取られていたばかりに……申し訳が立たんわい」

「いえいえ大丈夫です!ちょうど絶望的な状況だったので師匠が来て下さって助かりました!」

「うむ。お主らも茶棒相手によくここまで耐え抜いてくれた」


 俺たちが耐えに耐えたからこそ師匠の救援が間に合ったと考えると、この時間稼ぎもムダじゃなかったのだと思える。


「ビクトリーには連絡済みじゃ。もうすぐ救援に来るじゃろう」


 おお、師匠だけじゃなくビクトリーも駆け付けて来てくれるのか。大盤振る舞いだ。


「あぁー、時間切れだよもう。絶好のチャンスだったのに」


 さて、まだ油断はできない。師匠、トドウフがそれぞれの陣営に駆け付けたこの状況。撤退か戦闘続行か、それとも予想外の一手か。今が一番読めないタイミングだ。茶棒はどう動くつもりなんだ……?

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