爆発の呪い
「呪われたってどういう事なんだよ?」
赤棒から突然発された、『呪われた』という言葉。一体何があったんだ?
「わりぃ、もうちょっと分かりやすく言う。呪いというかボムエネルギーが俺の体内にまとわりついてんだよ」
「ボムエネルギーって、確か以前戦ったボマーが持ってたエネルギーだよな?」
「ああ。アイツが自爆する際に付けやがったらしいんだよな。そのせいで、こうしてぶっ放そうとしても……」
赤棒が両手を前に突き出す。得意技である火力砲の構えだ。
「どわっ!」
「うおっ!?」
そのまま放とうとした瞬間、両手が爆発した。
「いちち……このザマだ。あーちくしょうあの野郎!とんだ置き土産を残してくれやがって!」
悔しげな表情で両手を強く握りしめ、地面に叩きつける赤棒。
「む……なるほど、ボムエネルギーが身体の外に出る瞬間に爆発してるんじゃな」
「そうなんだよ!青棒もそう言ってたんだ!『このままだと一切エネルギーが発射できない』とまで言い切られちまったんだぜ?俺の生き甲斐があぁぁ……」
そして地面にへたり込んだ。
「赤棒……」
エネルギーを放出する時の赤棒は本当に生き生きしていた。突然出来なくなれば、ここまで意気消沈するのも当たり前だ。なんとかして復活させる方法が思い付ければいいのだが。
「とまあ、俺の頭じゃ何も良い考えが思いつかないしお手上げなんだけどさ、今、青棒が対策を考えてくれてるんだ」
「対策?」
「内容はまだ分からねえけどよ、色々知ってる青棒ならきっと良い対策を見つけ出すぜ」
「青棒の対策っていうと、やっぱり発明品なのか?」
「ああそうさ!あいつらしいだろ?」
確かに。完全にそんなイメージがあるな。
「赤棒よ、少しエネルギーを分けてもらっても良いか?」
「おっ、師匠!いいぜいくらでも!」
赤棒が手を差し出し、師匠がそれを握る。赤棒のエネルギーが手と手を伝って師匠の身体へと流れていく。
「よし、このぐらいでよいか」
ある程度流れ込んだところで師匠が手を離した。貰ったエネルギーで何かするつもりなのだろうか。
「むう、なるほど……一度外に出てもよいか?」
「あっ、はい!」
師匠に言われるがままバトルボックスの外へ。
「っと、忘れずに回収しておかないとな」
バトルボックスに対して『小さくなれ』と念を送って手乗りサイズまで小さくし、手で拾って回収。
「よし、早速じゃが一つ対策を思いついたぞ」
「おお!頼りになるぜ師匠!」
師匠が片手を上に構え、エネルギーを集中させる。そのまま放ったら赤棒と同じように即爆発しそうだが……?
「ぬん!」
「うおっ!?」
案の定爆発。しかしーー
「ってあれ?」
爆発した場所は手ではなく、遥か上空だった。
「すげえ、あんな遠くで……でもなんでだ?俺は何度ぶっ放してもダメだったってのに」
「エネルギーが身体の外に出てから爆発するまでに僅かじゃが時間がある。ほんの一瞬じゃがな。じゃからその間にできるだけ遠くに飛ばせるよう、弾速を速めたんじゃ」
「弾速って、俺あんなに速いの撃てねえぞ?」
「それは……とにかく修行あるのみじゃな」
「そうかぁ……」
うーん、一瞬で空に辿り着くぐらい速い弾速か。修行でなんとかするにしてもかなり時間が掛かりそうだ。
「……ううむ、微妙な反応。別の方法を考えた方が良さそうじゃな」
「なぁ、別の方法なら一つ思いついたから俺言ってもいいか!?」
師匠も黒棒も思いつくのが早いな。俺なんてまだ悩んでて一つも思いつけてない状態だ。
「ボムエネルギーが身体の外に出ちまうからいけないんだろ?なら、そいつは体内に残したまま元々お前が持ってるエネルギーだけを放つようにすればいいんじゃねえのか?」
「黒棒、その方法は出来なさそうじゃ」
「えっ、どうしてだよ師匠!ってそういやさっきから敬語忘れまくってるな俺、いけないいけない……どうしてですか師匠!」
「実際に見た方が早いじゃろう」
師匠が右の手のひらを上向きにして前に突き出し、そこからエネルギーを取り出……えっ!?
「師匠!?外に出したら爆発するのでは!?」
「落ち着け大丈夫じゃ。ワシのエネルギーで包んであるから問題ない」
そうか、別のエネルギーに包まれていても爆発を防げるんだな。
「この二つのエネルギーじゃが、強固な力でくっついておる。ワシの力でも分離させる事は不可能じゃな」
「そうですか……」
師匠でできないなら俺たちでもダメだな。黒棒の案でも解決出来ずか。これ以外にいい方法はあるのだろうか……待てよ?
「師匠」
「なんじゃ?」
「ボムエネルギーをパワーエネルギーのど真ん中に寄せられますか?」
「む、やってみよう」
そう言って師匠が手に持っているエネルギーに向かって何かを念じると、中で動き始めてーー
「これは……」
「なるほどのう」
ボムエネルギーの周りをパワーエネルギーで包んだ状態のエネルギーが完成した。
「分離はできぬが中で位置を調整する事は出来たのじゃな。さて問題は、これを赤棒が出来るかどうかじゃが……」
「ああ!あんましやった事はねえけど、さっきの弾速に比べりゃ頑張ればいけそうな気がするぜ!」
「やる気のようじゃな」
「おうよ!」
赤棒がやる気をみなぎらせたところで、特訓が始まった。
「どりゃぁぁああああーっ!!」
と思ったら一発で成功。両腕を合わせて上に突き出し、全身のエネルギーをそこに集中。そこからボムエネルギーを包んだ状態にし、満を持して極太の光線が手から上空へ解き放たれた。こうして発射の瞬間を間近で目の当たりにすると、本当に大迫力だな。
「おわぁあっ!?」
「爆発でっか!?」
「む」
もう一つ大迫力の光景があった。発射されてから数秒後、遥か上空の大爆発だ。恐らくボムエネルギーの影響だろう。
「ふにゃあ〜」
「おっと大丈夫か?」
そして案の定赤棒はふにゃふにゃになってその場に倒れた。師匠が手を掴み、さっき貰っていたエネルギーを渡す。
「まさか一発で成功させるとはのう」
「へへ、体内でエネルギーを好き勝手動かすのには自信があるのさ」
「えっ、そうなのか!?」
「意外だろ?」
正直、意外なギャップだ。大変失礼だが、脳筋思考でそういう細かい技術には目を向けない性格だと思っていた。
「ボムエネルギーのせいで火力砲を放つまでの過程にそれの包み込みが加わったわけじゃが、今のように一瞬で済ませられるなら問題はなさそうじゃな」
「ああ!火力砲、完全復活だぜ!」
赤棒が力強い笑顔で片手をグーにして親指を上に立てる。
「あっそうだ!技名変えていいか!?」
「ん?」
「いきなりどうしたんだ?」
「さっきの爆発を見て、思いついたんだよ!そう……爆砲だ!!」
爆砲か。火力砲といい、赤棒らしさを感じるネーミングだ。
「よーし!またぶっ放せるようになったんだ、もういっちょいくぜぇえっ!!」
「赤棒!!それ前!前っ!!」
「よすんじゃ赤ぼーー
その後、今度は前に向かって放たれた火力砲改め爆砲が目の前の木に直撃し、俺たちを巻き込んで大爆発。周辺の木が丸ごと消滅し、どデカいクレーターが完成した。し、死ぬかと思った……