まずは一休み
「よっと」
俺と黒棒、星の三人は、自身を狙う刺客から逃れる為、ワープゲートに入って森世界へと避難して来た。
「わあっ、木がいっぱいある!」
「ここは森世界。見ての通り、木で埋め尽くされている世界だ」
まあ、目の前のまっさらな地面と木造の一軒家のように、木の生えていない場所もあるのだが。おっと、家の裏から人影が。
「む、また会ったな白棒、黒棒」
師匠だ。思ったよりも早い再会になった。
「師匠!」
「えーと、諸事情でここに戻ってくる流れになったもので……」
「そうか。詳しい事は後で尋ねるとして……見ない顔じゃなお主」
「えっ、僕?」
「ああそうか、初対面だったな星は」
「そうだ、名乗らないと。僕は星だよ!」
「ワシはマスターじゃ。こんなジジイでよければよろしく頼む」
「うん!よろしく!」
二人が握手を交わす。師匠は若干腰を曲げながら、星は背伸びしながら。
「さて、諸事情とは何があったんじゃ?」
「エネルギー世界で俺たちのエネルギーを狙って囲まれている状況だったんです。それでこの世界に逃げて来ました」
「そうか、ワシの危惧した通りの状況になってしまったのう。あの世界はエネルギーの研究が盛んじゃから、できれば近寄らん事をオススメする」
「はい、そのつもりです」
エネルギー世界の人達が俺たちを捕らえる為にどんな手を使うか分からない以上、それが賢明な判断だろう。通信手段があるとはいえ、青棒と直接対面できないのは少し心残りだが……
「ごほん、話は変わるが疲れてはおらんか?」
「それはもうとても。何しろこの世界を出た途端に茶棒と爆弾魔と棒人間狩りの三連戦だったもので、相当消耗してる状態です。特に白棒が大ダメージを受けてさっき回復薬を使ったばかりの状況です」
「三連戦……それは、災難じゃったのう」
ちょっと引いてるな師匠。俺もそう思う。
「とにかく、それなら丁度良かった。ワシの家でよければ、一休みしていかんか?」
「えっ、いいんですか!?助かります!」
連戦でかなり消耗している中で、一晩の休憩時間は本当にありがたい。この厚意に甘えさせてもらおう。
「ちなみに、これからどうするつもりなんじゃ?」
「あの三連戦で、茶棒と棒人間狩りに俺たち…..いや、少なくとも俺はいいようにやられてしまいました。なので、もう一度自分で修行をやり直すつもりです」
「俺も同じ意見です。もっと強くならないとって」
「そうか、分かった。もし修行でワシに協力出来る事があれば声をかけてくれ。力を貸そう」
「ありがとうございます!」
こうして、明日の予定を決め、師匠の家で一晩を明かす事になった。その夜の事ーー
「……なあ白棒」
寝る直前のタイミング、黒棒が小声で語りかける。
「ん、どうしたんだ?」
「そういえば俺たち、修行の時にした手合わせの約束、まだ果たしてないよな」
「あっ」
そういえば、すっかり忘れてた……よし、明日は手合わせだな。
「明日やろうぜ」
「ああ、望むところだ」
ひとまず今晩は大人しく眠って三連戦の疲れとダメージを取り除こう。おやすみなさい。