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合流

「無事か!赤棒、青棒!」


 倒れている二人とそれを守る星の状況を見に、黒棒、ビクトリーと共に駆けつけ、声をかける。


「うん、あの後は何ともなく大丈夫だったよ!二人共目を覚ましたし、まずは一安心かな。赤棒はその後すぐに寝ちゃったけれど」

「ほっ、よかった……」

「見張りありがとうな星!おかげで存分に戦えたぜ!」

「うん!」


 三人共無事で何よりだ。


「この声は白棒、か……っ!?」


 青棒が声に反応してこっちを向いた瞬間、その顔が驚きの表情に変わった。


「ああこれか。ちょっと無茶し過ぎてしまっただけだ」

「ちょっとどころじゃ、ゲホゲホッ、ない……」

「うぉおい青棒、無理するな!あまり声出さない方がいいぞ!?」


 咳き込んで苦しそうだ。黒棒の言う通り、今はもう喋らせず安静にさせた方がいい。


「そう、だな……」

「青棒、口を開けてくれ」

「悪いなビクトリー、助かる……」


 ビクトリーが懐から回復薬を取り出し、赤棒と青棒の口元に注ぎ込む。すると、完全回復まではいかずとも、ある程度傷が治っていった。


「これでダメージは治ったが、しばらく安静にしていた方がいい」

「大丈夫だ、分かってる……」

「白棒、お前も飲んでくれ」

「ああそうか、俺もボロボロなんだった」


 ビクトリーから回復薬を受け取り、飲み干す。直後、痛みが治まり、さっきの戦いで負った傷が治っていった。


「ふう……」

「白棒、あと二言だけいいか?」

「ん、二言?」

「助かった……それと、お前を信じる……」

「困った時はお互いさ……えっ?」


 確かに聞こえたぞ。俺を、信じるって。


「今、信じるって……」


 青棒はもう声を出すのがしんどいのか、頭を僅かに縦に振って反応。


「お、おお……!!」

「すげぇな白棒!あの警戒心が強い青棒に信頼してもらえたぞ!!」

「……うるさい」

「あっ、悪い、口塞いどく」


 素直に嬉しい、すごく嬉しい。ようやく青棒に信じてもらえた。これで心置きなく仲間呼びが出来る。


「あれ?お前たち、じゃないのか?」

「あ、確かに。単に言い間違えたとかかな?」

「もしくは信じる対象がまだ白棒だけなのか……一体どっちなんだ?」

「言い間違えじゃないな」


 ビクトリーが会話に割って入ってきた。


「ビクトリー、断言できるって事は何か理由があるのか?」

「ああ。青棒は人を信頼する基準を一つ明確に決めている。関われば死ぬような状況でも命がけで戦ってくれる人かどうかだ」


 なるほど。いざと言う時に逃げてしまう奴なんて信用できないという事か。


「でもそれなら黒棒も当てはまるんじゃないのか?」

「星から聞いたが、青棒はこの戦いでずっと気絶している状態だったのだろう」

「ああ」

「なら、戦いの一部始終を見ていない以上、黒棒が無傷の状態なら戦ってくれていたかどうか確証が持てない事になる」

「なんだよそりゃ!?そこまで疑り深いのかよ!?」

「青棒曰く、『二度と失敗出来ないから』らしい」

「ああー、そっか……」


 二度と、か。さっきも同じ言葉をあいつから聞いたな。これは相当重い事情を抱えていそうだ。


「……そこまでだ」


 青棒が両手の指でバツ印を作り、ビクトリーに示す。


「大丈夫だ青棒、必要以上に話したりはしない」


 ビクトリーもこう言ってるし、あまり深追いしない方がいいな。


「ところで、さっきXの奴と色々話してたけど、いくつか質問していいか?」

「ああ。いつか話そうと考えていた事だ」

「Vはもう一つの名前なのか?」

「そう、俺が元々持っていた名前だ。途中からビクトリーと名乗るようになった」

「何故名前を変えたんだ?」

「単にこの言葉が気に入ったからだ」


 改名する程に気に入った言葉か。相当思い入れがあるんだな。


「VとXで気になったんだけどさ、もしかして同じ種族なのかお前たち?」

「勘がいいな、その通りだ。俺とXの種族はアルファ族だ」

「という事は、Xも茶棒に襲われた被害者の一人という事か」

「ああ。他にも原因はあるが、主にそのせいで棒人間という種族自体を恨むようになった。そして棒人間狩りという集団に入り、棒人間を襲撃している」


 棒人間狩りの一員だったのか。正直、『狩る』という言葉を使っていて、やたら棒人間に執着している様子から予想はしていたが。


「お前が割り込んだ時、あいつは攻撃を止めて、最終的に立ち去ったよな?話で解決できたりしないのか?」

「無理だ、奴の意志は固い。死ぬか全ての棒人間を狩り尽くすまで止まらないだろう。それでも、俺は奴との戦いを極力避けたい。仮に避けられなくても、絶対に殺したくない。同族として、仲間として」

「そうか、そうだな。殺さずに済むならそれが一番だ。だが、話し合いが難しい以上、戦いは避けられない」


 殺意に溢れており、話も通用しない。そうなると、残る手段は戦いだけだ。


「だからそうなった時、俺たちに任せてくれないか?今はまだ実力が足りないが、通用するレベルにまで鍛えるつもりだ」


 今回の戦いで、実力不足を嫌と言うほど思い知らされた。これからの戦いは、もっと自身を鍛え上げないと通用しないだろう。


「……分かった。だけど、お前たちに任せっきりにするつもりは無い。戦いになった時は、出来る範囲で協力する」

「いいのか?あいつとの戦いは避けたいはずなんじゃ?」

「直接ダメージを与える以外にも方法はある。攻撃を庇ったり止めたりな」

「あっ、確かにそうだな」


 そうか、その手があった。というかその考え、真っ先に俺が思い付くべき手段だったな。


「Xの話は一旦ここまでにしておこう。狙われてるからな」

「へっ?」


 周りを見渡してみると、姿こそ見えないもののかすかに気配を感じる。いつの間にか囲まれている状態だ。


「ああー、そういやマスターから狙われるとか言われてたな俺たち」

「そう、暗黒物質は危険視されるんだ」

「それだけじゃないんだビクトリー。俺がライフエネルギーを持ってるのも原因なんだよ」

「ライフエネルギー!?そうか、どうりで囲んでる側の殺意が微妙に少ない訳だ」


 暗黒物質は危険だから抹殺しようと、ライフエネルギーはその珍しさから捕らえようとして狙われるんだったな。


「それと青棒が言うには、星もスターエネルギーを持ってるから狙われる対象になるらしいんだ」

「そうなんだよ!僕何も悪い事してな……そういえば白棒達一回吹っ飛ばしちゃってるんだった」


 さっきまで話に参加出来てなかった星が俺の側からひょっこりと飛び出して来た。


「スターエネルギーが狙われる理由は無いはずだが……後で青棒に確認してみるか。とにかく、今すぐお前たち三人をこの世界から避難させる。ワープゲート展開!」


 ビクトリーが俺たちの目の前にワープゲートを展開する。


「行き先は師匠のいる森世界だ。安心して入ってくれ」

「分かった、行くぞ黒棒!」

「おうよ!」

「俺はここに残って二人の様子を見ておく。これを渡しておくから何かあったら連絡してくれ」


 そう言ってビクトリーが腕輪を俺に渡す。恐らくは通信可能なやつを。


「わりぃなビクトリー、助かるぜ!」

「俺の方でも何か進展があれば連絡する」

「了解!」

「行ってきまーす!」


 ビクトリーに一時的に別れを告げ、黒棒、星と共にワープゲートの中に入って行く。二度目の森世界へ出発だ。

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