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棒人間を狩る者

「大丈夫か青棒!?」


 赤棒について行き、青棒の居場所へ。近くにはどデカいドーム状のバリアが複数の建物を囲むように張られている様子が見える。


「ぐ……っ」

「青棒っ!!」

「棒人間が増えたか。それと…妙な生物だな」

「妙な生物ってなんだ!僕は星だよ!」


 そこには、地面に倒れ伏す青棒と、マントを羽織って顔にXが刻まれている男の姿があった。


「青棒、仇は取ってやる!火力ーー」

「遅い!」

「なっ、どこいったんだ!?」


 赤棒が火力砲を放とうとした時、男は姿を消した。


「Xスラッシュ!!」

「があっ!?」


 次の瞬間、赤棒がX字に斬られてその場に倒れ伏し、その背後に男が現れた。


「な、なんて速さだ……!」

「赤棒っ!!」


 斬られたという事は何か武器を……いや違う、一瞬だが両手にエネルギーの刃を纏わせているのが見えた。


「棒人間は全員狩り尽くす!!」


 間を置くことなく手をX字に交差させ、更にこっちに向かって突撃して来る。相当なスピードだ。一瞬で判断しなければ。


「アーマー!」


 ひとまず俺と黒棒、星にアーマーを装着。その上でバリアをーー


「死ねぇええっ!!」

「ぐぅうっ!?」

「白棒っ!」


 くそっ、バリアが間に合わなかったか……!しかもアーマーごと斬られたぞ!?なんて貫通力だ……!


「黒棒、星、大丈夫か!?」

「うん、ギリギリ当たらずに済んだよ!」

「ああ、なんとか避けたぜ!というかそっちこそ大丈夫なのか!?」

「ダメージこそ受けたが、大した事はなさそうだ。それよりも赤棒が……!」


 赤棒はさっき倒れてからまだ起き上がってこない状態だ。気絶か瀕死か、とにかく早急に助けなければ。それにしても……


「あの野郎、よくも仲間を……!!」


 もう決して失いたくない。だから、仲間を傷付けたり殺そうとしたりする奴を絶対に許す訳にはいかない。なのに……この体たらく。


「情けねえ、不甲斐ねえ……!」


 仲間を守れていない自分に腹が立つ。これじゃ、あの時みたいにまた失ってしまう。


「ちくしょう……っ」


 もっと、もっと力があれば……


「白棒っ!」

「……ハッ!?」


 そうだった、今は戦いの真っ最中。考え事をして突っ立っていればいい的だ。


「大丈夫か?暴走しかけてたぞ?」

「暴走……そうか。悪いな黒棒、助かった」

「今の白棒、怖かったよ……」

「すまない星、怖がらせてしまったな」


 レイジエネルギーの事だ。恐らく、今の怒りによって大量に溢れ出して暴走しそうになっていたのだろう。黒棒の声かけがなければ、取り返しのつかない事態になっていた。


「えーと、さっき話してたのって仲間救助の事だよな」

「ああ、そうだったな」

「助けるのはそうだが、先にX野郎をなんとかしねえと俺たちも倒されるぞ」

「それもそうか……」

「というかどこ行ったんだ?さっきから姿が見えねえぞ?」


 そういえばそうだ、俺たちに斬りかかって来てから姿が見えない。一体どこに……


「スプレッド!」

「っ!」


 奴の声!聞こえた方向からしてーー


「上か!」


 奴が右手を大きく振り、小さいエネルギーの弾を大量にばら撒いている。


「アーマー!」


 さっき割られた自身の分のアーマーを再装着。これで自分へのダメージは防げるが……


「バリア!」


 青棒と赤棒がただでは済まないので、それぞれにバリアを張って守る。


「邪魔をするな!」


 奴がバリアを粉砕しようと突撃。まずい、俺のスピードだと追いつけない……!


「させるかあっ!!」

「くっ!」


 黒棒が持ち前のスピードで奴に追いついてその前に立ち塞がり、突撃を食い止めた。


「僕も行……わわっ!?」

「おっと、大丈夫か?」

「いてて、こけちゃった……」


 星も向かおうとするが、つまづいてその場に倒れてしまう。


「邪魔をするなぁあ……!!」

「うぎぎぎ…なんつーパワーだ……!!」


 っと、黒棒が押されているな。俺も加勢しなければ。身体強化でパワーとスピードを補って……


「あれ?できないぞ?」


 もしかしてエネルギー切れか?ボマーと戦ってから今までずっと新しいのを空気中から取り込んでないし、時間もそこまで経ってないから自然回復量も少ないし……黒棒と奴が取っ組み合ってる今だけなら、隙があるか。


「すうぅぅー…….」


 今のうちに、ありったけ取り込んでおかなければ……よし、溜まってきたな。


「身体強化!いくぞっ!」


 エネルギーを消費して身体を強化し、いざ突撃!


「くらぇえっ!!」

「がばふっ!?」


 奴に向かって全身での体当たり。無事直撃し、吹っ飛んでいく。


「ナイス突撃だぜ白棒!」

「ああ!」


 ひとまず、バリアの破壊は防げたか。


「チッ、やり損ねたか」

「何故そんなに棒人間を敵視するんだ?」

「あ?」


 さっきから気になっていた。こいつが棒人間をここまで狙う理由が。棒人間を狩り尽くすという言葉からして、少なくとも憎んでいるのは間違いなさそうだ。


「簡単さ。棒人間は危険な種族だからだ」

「危険な種族?」

「ああそうさ。平気で裏切り、世界を瞬く間に滅ぼし、種族を根絶やしにする。野放しにできる訳がないだろう」

「なんだそりゃ!?そんな物騒な種族じゃねえぞ棒人間は!」

「誰が信じるものか!殺してやる、狩り尽くしてやる……!!」

「ダメだ、まるで話が通じねえ」

「今の会話で俺もそう確信した」


 話し合いでの解決は無理だ。戦って大人しくさせるしかないな。


「黒棒、多分だが奴は突撃が得意だ。距離を離して戦うぞ」

「おうよ!俺もなんとなくあいつは突撃癖があるなと思ってたんだ!」


 ここまでの戦いで、少し分析した。予想では、奴の得意戦法は突撃によるぶった斬り。距離を取る事を意識して、遠くからの攻撃を中心にして戦えば、有利な展開に持ち込む事ができるはずだ。


「というか白棒、身体強化してるんだな」

「ああ。防御も速度も全く足りてないからな。黒棒は強化しないのか?」

「心配いらねえよ!今のスピードでもあいつに十分張り合えるしな!ま、いざって時には使うけど」

「そうか、分かった」


 さっき俺のアーマーが破られてたから、赤棒や青棒に張ってるバリアも恐らく強度が足りなくて万全の防御とは言えないな。もっと技を磨かないといけないか。


「死ねっ、棒人間!」


 考えている内にX字の奴がまたもこっちに突撃。距離を取……れないな。まだ倒れてる二人の近くにいるんだった。迎撃しないとーー


「目を瞑って!」

「っ!?」


 星による突然の大声指示。戸惑いながらも従って目を閉じる。


「スターフラッシュ!」

「がっ、目がぁあ……っ!!」


 星が技名を発し、その直後に苦痛な声を上げるX字の奴。一瞬だけ眩しく感じたから、光による目眩しか。そんな技を持ってたんだな。


「もう目を開けて大丈夫だよ!」

「ん……」


 目を開くと、両手で目を押さえながらもがくX字の奴の姿が。


「ありがとう星、助かった」

「気にしないで!それよりも早く倒してしまおうよ!」

「そうだな。だが、俺たちが攻撃している隙に倒れてる二人が狙われたらひとたまりも……」

「僕が見張りをやるよ!だからガンガン攻めていこう!」

「気持ちはありがたいが、いけるのか?」

「うん!目眩し以外にも色々作戦はあるから!」

「分かった、頼むぞ!」


 そうと決まれば、攻めに集中だ。ひとまず二人からX字の奴の距離を離そう。


「はぁ、はぁ……」

「赤棒と青棒の二人を倒したいなら、まず俺たちを倒してからにしろ!」

「てめぇらは万全だろ。早く狩れる棒人間から優先するんだ俺は」


 倒せる敵から倒す思考か。ならーー


「早いって本当にそうなのか?手負いの二人を攻撃しようとするなら、万全な状態の俺たち三人は徹底して邪魔をする。早く倒せそうなのはどっちなんだろうな?」


 正直、奴の本気がどのぐらい強いか分からない以上、確証はないが、この挑発に乗ってくれるかどうか……


「……チッ、そんなに早く死にたいか!」


 なんとか乗ってくれたようだ。一安心……いや、そんな暇は無いか。さっきと同じような突撃だが、怒らせたせいか、速度が上がっている。だけど、直線的な攻撃なら慣れれば簡単に回避できる。


「そう簡単に避けられると思うな!」

「なっ!?」


 姿が消えた!?一体どこに……いや、どこから攻撃を仕掛けるつもりなんだ?目で見えないなら、別の方法だ。


「ん……」


 目を閉じてエネルギーを感じ取る。俺の周りを高速で駆け回るエネルギーが一つ。


「よし、捉えた」


 これは無闇に避けようとすると逆に当たってしまうパターンだ。奴が攻撃する瞬間を待ってから避けた方がいい。


「……来たか!」

「らぁあああっ!!」


 エネルギーが近付いたのを確認し、目を開ける。間近にまで奴が迫って来ていた。


「当たるか!」

「チイッ!」


 手筈通り、ギリギリまで引きつけて横にスライドして回避。


「くらえ!」

「こんなもの!」


 左手を奴の方に構え、エネルギー弾をまっすぐ放ちながら後方へ移動して距離を離す。奴は右手を振って弾をその辺の地面に弾き飛ばす。


「X!」


 間髪入れず奴が両腕でXの構えを組む。またあの突撃する技か。直線的だし何度も見たし、流石に慣れたから避けられるな。


「その技はもう通」

「シュート!」

「らあっ!?」


 いや違う、飛び道具だ!腕からXの形をした弾を放ってきたぞ!?


「避けっ…どわぁあああっ!!」


 予想外かつ弾速の速い一撃に反応できず、俺の身体に直撃、弾ごと長い距離を飛ばされた後、地面に着弾し、大爆発が起こる。


「が……はっ」


 ライフエネルギーが枯渇し、アーマーを張っただけの状態では受け切る事ができず、大ダメージを受けてその場に倒れてしまう。同時に身体強化の効果も消えてしまったようだ。黒棒達との距離も離されたし、万事休すか……?


「戦闘でモノを言うのはエネルギーだ。突撃だけで戦う馬鹿がどこにいる」


 そうか、そうだった。打撃や武器よりもエネルギーの方が圧倒的に強い、以前に学んだ事だ。突撃癖、その違和感に気付けなかった結果が今の状況なのだ。


「ドレイン」

「うっ!?」


 X字の奴が左手をこっちに向け、そう発言すると、俺の身体からエネルギーが抜き取られ、その手に収まる。こんな技も隠し持ってたのか……!


「抵抗されても時間のロスだからな」

「ちくしょう……!」


 奴が右腕を上げ、刃を纏わせる。まずい、動かなければ真っ二つだ。動け俺の身体……動けよっ……!


「死ね」

「動けぇえっ!!」


 な、なんとか身体を転がして振り下ろされる寸前で回避できたか……だけど、完全に力を使い果たしてしまった。


「チッ、まだそんな力が残ってたか」

「ぜえっ、ぜえっ……」

「まあいい。手間が一回増えただけだ」


 再び上げられる右腕。何か、何か考えろ……!力もエネルギーも無くなったなら、後は何が残って……


「死ねっ!!」


 もう猶予が無い、こうなったらーー


「っだぁああああああああっ!!!」

「うっ!?」


 大声だ。我ながら意外な発想。今までの人生の中で一番大きく、空も大地もまとめて震わせるようなイメージで響かせた。


「があっ、耳が……っ!!」


 今の内だ。空気中のエネルギーを取り込んで、身体強化をし直す。ボロボロの身体でも、これで多少は動ける。そしてひとまず奴から距離を取る。


「白棒っ、大丈夫か!?」


 黒棒が駆け付けて来てくれた。


「悪い、ボロボロにされてしまったが、まだなんとか戦える」

「いやいや、本当に大丈夫なのかそりゃ!?」

「ああ。ここで引いて倒れた状態の二人に任せる訳にはいかないだろ?」

「あいつらならついさっき目を覚ましたぜ」

「なっ、本当か!?」

「ああもちろんだ。ただ、戦える状態では無いけどな」

「生きてるって分かっただけでも一安心だ」


 もし死んでしまっていたとしたら、間違いなく二回目の暴走を引き起こしていただろう。


「ん、この気配は……アイツか」

「ああ。さっき大声で怯ませたから、余計ブチギレてると思うぞ」


 奴が来る。


「まだ抵抗するか棒人間……!」


 これは……相当キレてるな。微かに赤いエネルギーが漏れ出しているような気がする。


「いい加減俺に狩らせろ!!」


 そしてはたまた突撃。いつになったらこの戦いは終わるんだ…..?


「そこまでだX!」

「なっ!?」

「この声は……!」


 今の声……間違い無い、あの人だ。


「ビクトリー!!」

「悪い、待たせてしまったな」


 いやいや、まさしく救世主のようなタイミングだったからむしろ丁度いい。


「あの後大丈夫だったのか!?」

「ああ。長期戦にはなってしまったが、辛うじて生還する事ができたぞ。ただ、かなり傷を負ってしまったから合間に治療を挟んでからこの世界に来たという訳だ」


 あれほどの速度と殺傷力を誇る茶棒相手に生還するとは、俺たちよりも相当な実力者なんだな。


「V!まだ棒人間に味方しているのか!」

「ああ。俺たちの復讐相手はあくまで茶棒だけだ。棒人間そのものは関係ない」


 V?俺たち?気になる言葉が続々と出てくる。


「違う!棒人間そのものが危険な種族だ!滅ぼさなければいつ俺たちアルファ族が滅ぼされるか分からないんだぞ!?」

「棒人間は危険な種族ではない!危険なのは茶棒や一部の棒人間だけだ!優しい棒人間だっている!」

「偽物の優しさに騙されたんだぞ俺たちは!?奴らの演技にまだ騙されてるのか!?」

「演技ではない。少なくとも、騙す為に命を捨ててまで仲間を守り抜く者はいない」

「命を捨てて、だと?」

「ああ。現に、灰棒は自身の命と引き換えに茶棒の魔の手から仲間を守り抜いた」

「灰棒……」

「昔、俺たちと共に戦っていた棒人間。よく覚えているはずだ」

「……だが、死んだ。もう棒人間にまともな奴はいない。全て狩らないといけないんだ。そこをどいてくれV」

「どかない。俺は棒人間を守りたいんだ」

「……チッ、まあいい。お前と争う気はない」


 そう言うと奴は後ろを振り返り、その場から姿を消した。危機は去った…..か。あ、気を抜いたら身体がふらついてーー


「おいおいおい倒れるな白棒!?」


 倒れる前に黒棒に支えられる。危うく地面に顔面が直撃するところだった。


「悪いな黒棒……しばらくこのままで頼む」

「ボロボロなんだからあまり無理するなよ?」

「ああ、気をつける」


 流石にこの状態で派手に動くつもりはない……はず。仲間が危機に陥らない限りは。


「それにしても、今の会話で色々と気になる事があったんだが、聞いてもいいか?」

「ああ、えっと……先に青棒と合流してからでもいいか?」

「ん、知り合いなのか?」

「そうさ。昔からのな」

「へえ、そうなんだな」


 昔からの知り合いか。俺たちがビクトリーと協力関係にあると知ったら、もう少し仲良くなれるかもしれないな。ひとまず、合流か。

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