FC 天地を喰らう2 と思い出
FCのマイナーゲームをやってみた感想文です。
昔、私も所属していた地元のリトルリーグでピッチャーをやっていた友人との思い出です。
その友人は同級生の中では一番背が高くて、痩せていて、とにかくイケメンでした。
当時、私たちのリトルリーグは地元ではとにかく強くて、全国大会の常連でした。
それは小学校6年の時だったので多分、1992年の事だと思います。どういう経緯があったのか分かりませんが、春頃にいきなりベネズエラの少年野球チームが私たちの小学校に来て、私たちのチームと試合をする事になりました。試合当日は校庭に新聞記者やテレビカメラなども来ていたので、何かの企画だったのかもしれませんが、当時の私たち子どもには何も知らされないまま、私たちはただ試合をしていました。試合は私たちの圧勝。20点差以上ついて5回コールド勝ちだったのを覚えています。ただ、この日の試合の事よりも、その後、このピッチャーだった友人との思い出の方が未だにハッキリと覚えていて、それが『天地を喰らう2』の思い出となります。
当時、田舎とはいえ私たちの学校でもファミコンは男子なら誰もが持っているようなマストアイテムでした。みんな休み時間には『ドラクエ4』や『くにおくんの時代劇だよ全員集合』の裏ワザ話ばかり。火曜日の放課後にはジャンプを買って誰かの家に集まってみんなでファミコンに興じるのが当たり前の生活になっていました。
そん中、私の家は厳しくて『ゲームなんかやってる暇があったら壁とキャッチボールでもやってろ』とか『ゲーム繋いだらテレビが燃える』とか言われてファミコンは買ってもらえず。ピッチャーをやっていた友人はリアルに貧しくて家に車も無かった程なのでファミコンを持っておらず。私たち二人は放課後にひたすら二人野球をしていました。
しかし、あのベネズエラ戦の後、友人は突然ファミコンを買ってもらったというのです。やはり、あの試合はテレビ番組の国際交流企画か何かで親達にはギャラが入っていたのかもしれません。当時は子どもながらに『海外チームに圧勝したご褒美でファミコン買ってもらったのかな?』くらいにしか思っていませんでしたが。
30年以上経った今でも変わりませんが、当時から友人の家は非常にボロい平屋で、田んぼの中にポツンとあるので目立っていて有名でした。なので、友人は今まで誰も自分の家に呼ばず、その家がどんな感じなのか知る同級生もいませんでした。
しかし、友人はファミコンを買ってもらったという事で、その事を私に報告し、ファミコンをやりに家に遊びに来ないかと私を誘ってくれたのです。そんな友人の誘いを断る理由はありません。その日の放課後、私は友人の家に遊びに行きました。
友人の家は確かにボロかったですが、廊下も階段もツヤツヤに磨かれていて、そんなに悪い感じではなく、それに当時はさほど珍しくもない木枠の大きなテレビがあって、テレビの下にある観音開きの扉の付いたタンスみたいな棚の中にファミコンが収められていました。そして、そのファミコン本体に挿されていたソフトが『天地を喰らう2』でした。ソフトはこの一本のみ。当時、私は始めて見たソフトでしたし、唯一のソフトに天地を喰らう2を選ぶって、『こいつスゲーのかも』って思いました。
ただ、友人もこれまでファミコンに触れた事が殆ど無く、私も実際にコントローラを持ってプレイした事があるのは『燃えろ!!プロ野球』くらいしかなかったので、その時は二人とも天地を喰らう2のゲームのシステムが全く分からず、とにかくタイトル画面の『字がスゲー上手だよな』とか、『どれ押すとジャンプなのか分かんねぇ』とかつぶやきながら15分ほどでおもむろにファミコンを棚に収めたのを覚えています。
そんな私たちに友人の母がカルピスを持ってきてくれたのですが、コップになみなみと注がれたそのカルピスは、まさかの原液。友人の母は『カルピスってたまに親戚とかから貰うんだけど、甘すぎてウチじゃ誰も飲まないのよ。もし好きならいっぱいあるから好きなだけ飲んでって。』と言いました。
とりあえず出された分だけ、コップ一杯の原液は飲み干しましたが、喉が焼けるようなカルピスの味、淡々とファミコンを片付けた時の友人の家の中の光景、春の夕暮れ時など、『天地を喰らう2』のタイトル画面を見ると思わず涙が溢れそうになる思い出深い一本です。
今になって本作をプレイしてみると、結構ダルい作品だと思いました。
いや、三国志ベースのストーリーとしては凄く良いんですよ。関羽と曹操が非常にハードボイルドな駆け引きを展開したり、赤壁の戦いや三願の礼などのイベントもドット絵のプログラムでよくこれほど端的で的確に表現しきったものだと思わずニヤけてしまうくらい。戦闘も陣形によって連携技が変化するなど、ロマサガ3の原型みたいなシステムが既にこの時点で出来ているし、倒した敵がランダムで仲間になることがあって、育成してパーティーに加える事が出来るというドラクエ5的な要素もあったりと、後にSFC世代で名作といわれるようなRPGのシステムの基礎が既にここにふんだんに盛り込まれているオーパーツ的な作品でもあります。戦闘やストーリー、登場人物のキャラクター性などは非常に優れています。名作といっても良いような出来なのですが、何がいけないのかといえば、それはフィールド画面の構成なのではないでしょうか。
中国が舞台なだけあってか、とにかく陸地が広い。『ちょっと隣町の爺さんに相談してきて』みたいなおつかいが結構多いのですが、隣町に行くだけでも野を越え山を越え、洞窟を越え関所を越え、長旅です。戻って報告するまでにかなりの敵が仲間になってゴチャゴチャで既になんの旅だか分からないような状態になっていたり、途中で関羽が本隊を離れて曹操と戦っていても『それどこでやってんの?』ってくらい遠い場所での出来事ですし、主人公の劉備が途中で離脱して王様になった城もラスボスのいる地域から遥かに遠くて、指示や助言を聞きに戻る事は二度と無いような状態になってしまったり。
まあ、三国志ベースというストーリーの特性上、空を飛ぶ乗り物が無いというのが一番の悩みどころというか、これでドラクエやFFみたいに空飛ぶ乗り物があったら全く問題無いフィールドの広さだったのでしょうが、それを登場させられない以上、中国を徒歩で移動して都市を廻るっていう設定自体、幾ら簡略化してもダレが解消できなかった要因なのかと思います。
ちなみに、このゲームは『天地を喰らう2』であって、『天地を喰らう』も発売されていますが、ドット絵のクオリティなどは全く同じ。2で新たに採用されたのは戦闘時の陣形システムだけであり、逆に仲間に出来る敵の数や兵士数(HP)、必殺技など1よりも大幅に削られており、2は1のイージータイプ、酷くは『劣化版』と云われる事もあります。
ストーリーも端的で1より分かりやすくなっており、戦闘も戦略が立てやすく、わりとサクッと終わるようになった事で万人受けに遊びやすくなっていると思うので、私的には1より2をお勧めします。
戦闘システムとストーリーは良いゲームですが…