1.私主人公だよね? こんな死に方酷すぎる
私、青柳律子は、伊豆の温泉旅館で一人旅を満喫していた。OLの忙しい日々を抜け出し、有給をバンバン使って、この日の為に貯めたお金を一気に費やしていた。大好きな恋愛小説、恋愛漫画を読み漁りまくりながら、温泉で体を癒し美味しい食事で満たされる。それに、お酒。この日本酒はお刺身のお供に最高だ。
やはり日本酒はお勧めを聞くのが1番である。
勿論時間なんて気にしない。いつ寝るか、何時に起きるかなんて関係ない。だって一人旅、誰にも気にせず、全てが自分の時間。
「あぁーなんて幸せ。サイッコーの時間」
おっと、思いの外大きな声の独り言が出てしまった。一人だからこそ響く自分の声に少し恥ずかしくなる。
ちょっとお酒を飲みすぎてしまったかもしれない。私は目の前に置いてあった水を一気に飲み干しながら、なんとなく付けたままにしていた、テレビにふと、目を止める。
決まった時刻に流れるニュースからは淡々とした声に合わせて、私の知っている場所の映像が流れた。
「あれ? ここ私の地元じゃん。えぇー悲惨な事件? いやいや、今はそんな暗い話聞きたくないし。私の幸せタイムだもんねー」
リモコンを手に取りテレビを消して、そのまま仰向けに転がる。
あぁ、気持ちいい。でも、このままだと寝てしまいそうだ。それは勿体ない。
一度お風呂に入って少しアルコールを抜くのもアリかもしれない。せっかくの旅館、お風呂も楽しまなきゃ損だ。あ、でもその前に……。
視線を時計にやると、いつも楽しみにしている時間の数分前。
そろそろ、あの恋愛小説の更新時間だわ。あの斬新な展開の続きが気になってたのよねぇ。
私はごそごそと、スマホを取り出すとブックマークしている小説サイトを開いた。
「おぉっ、更新されてる♪ されてる♪」
手慣れた操作で、読み進め、片手で刺身を食べながら、またお酒を飲みはじめる。お行儀なんてどうでもいい。チラリと横目で残りの刺身を確認すると、残りはアワビだけだった。
私はアワビをお箸で全部すくうと、そのまま一気に口に運んだ。恋愛小説の展開が気になって視線をすぐにスマホに戻す。
「って、う…うそでしょ? そんなっ……こんな、こんな急にテンプレ展開にしやがって!!」
あまりの衝撃と絶望感に、私は思わずアワビを一気に飲み込もうとした。
が、しかし、いつも通りに喉を通っていく感覚がしない。
ってあれ……アワビが喉の奥に詰まった?
ちょっ、待って。コレ全然、飲み込めない。あれ……もしかして苦しい?
ヤバイ、絶対喉に詰まってる!
待って待って、何かで流し込んで…あぁ、でも、さっきグラスのお水もお酒も全部飲んじゃったんだ。咄嗟に伸ばした酒ビンはゴトリと音を立てて倒れ、中身が目の前でトプトプと川のように流れていく。
なんて勿体無い!
いや、それどころじゃない!
どうしよう。どうしよう。
苦しい。
ダメだ目の前が暗くなってきた。
苦しい。
え?
もしかしてコレ、私このまま死んじゃうの?
ウソでしょ? 嘘!
そんなの絶対嫌。まだ、読んでない恋愛小説も漫画も山のように残ってる。続きが気になって仕方ないのだって沢山有りまくるのに、それなのに。
しかも、よりによってアワビを喉に詰まらせて死ぬなんて、ダサいし、カッコ悪い!!
発見された時の恥さらし感半端ない。きっと末代まで言われ続けてしまうに違いない。
嫌よ。
そんなの絶対嫌。
いやぁぁぁぁぁーーーーーーー!!
脳内で上げた大絶叫を最後に、私の意識は失われた。体の動きもパタリと止まり、やがて心臓の鼓動は弾むことをやめてしまった。
アワビ……アワビ……。
許すまじアワビィィィ!
そして、私は一人、豪勢な海鮮御前と美味しいお酒、大好きな恋愛物の本の山を前に、活動を停止。死んでしまったのだった。
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