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23. 絶対防御


 ライボルグは欠伸を見せて余裕な素振りを見せているがその警戒心と殺気はまるで隠しきれていなかった。1m近くの範囲は無条件に切り裂いてくる結界、それ以外にカイデの兄を切り刻んだ時の謎の斬撃。どちらにしても安易に近付けばこちらが不利になる事に違いはない。


 「ところでさぁ、騎士のお前がなんで僕様に剣を向けてるわけ?お前何様なの?馬鹿なの?そんで斬りかかりにも来れないわけ?」


 ククリは黙ったまま慎重に間合いを測っていた。円形に範囲があるのなら足元も切り刻まれてもおかしくない以上ドーム型なのは間違いないだろう。そう思ってククリは足元に転がっていた小石を蹴り飛ばすとライボルグの周囲1mで切り刻まれて消えた。


 「お前、僕様の結界の範囲を見極めようとしているな?やっぱりお前さぁ」


 ライボルグはククリに向けて手を前にかざす。何かは分からないが何かヤバい気配を感じる。


 「馬鹿なの?」


 何も見えない、何が起きているのか分からない。ライボルグは手を前にかざしただけだ。


 「ククリ!!危ないど!!」


 ククリの前に立ったカイデは防御魔法を展開した。すると何か分からないが無数の斬撃音が聞こえてくる。見えていないのにカイデの足はズルズルと下がっていった。ククリはカイデの背中を抑えた。


 「ぐおおおおお!!」

 「耐えろカイデ!!」


 「大魔導士を無視するとは何事じゃ!!」


 ルメイヤが発動した魔導には雷属性が含まれているせいか速度は凄まじかった。通常ではライボルグの結界を打ち破れるわけがない。が、ライボルグは大きく飛んで横に避けたのだ。更に言えば魔導が襲い掛かる瞬間、カイデへの攻撃が無くなった。


 「あのライボルグが避けた?一体なぜだ?」


 『謎が解けたぞククリ。じゃが悟られてはならぬ』


 頭の中でルメイヤの声が聞こえた。指輪の魔道具にマナを込めてククリも話す準備をした。


 『奴の周囲には見えない斬撃性能を持ったスライムがおると仮定しろ。ククリに向けて伸ばしたスライムは直ぐに戻せずワシの魔導を避けたと考えるのが賢いじゃろうな。恐らく1mの範囲と小さいのは絶対的な防御が可能な範囲なのじゃろう。マナ出力を上げて伸ばし続けると斬撃が荒くなってしまう』


 『だけど絶対防御状態ならこいつに勝ち目ないじゃないか!どうすりゃいいってんだよ』


 『たわけ。まだ分からんのか。こいつには絶対勝てんが勝つ方法はある』


 勝てないのに勝てる?話がまるで見えてこないがルメイヤがそう言っているのであれば勝率は確実にあるのだろう。


 『俺はどうすればいい?』


 『ワシと全力で逃げるのじゃ』


 「は?」


 つい声が出てしまった。その瞬間ルメイヤは目の前に現れてククリとカイデを掴み空中へと向かった。更に屋根を突き破って空へと逃げると背後からライボルグが追い掛けてくる。


 「おいおいおいおい。何逃げてくれてんの、おい。僕様がここで囮として置いていかれたって言ったよね?意味わかってるかな?もしかして馬鹿なの?」


 「ふん。倒せん相手なら放置して王女を探すに決まっとるじゃろうが馬鹿め。どの道この都市全体がワシの索敵範囲である以上もうおらんのは分かっておる」


 ルメイヤは魔法都市の外まで出ると地上に降りてカイデの背中に捕まった。猛スピードで襲い来るライボルグに対してルメイヤは魔法を放つが弾き飛ばされてしまう。


 「僕様から目を逸らすんじゃないぞ!!!」


 ライボルグが伸ばした手に対してカイデは全力の防御魔法を込めて守り切った。


 「ここはワシらが抑えておく!ククリはこの先にある【眠れるオアシス】へと向かうんじゃ!真っ直ぐ走れば分かる!行け!」


 「どうして分かる!」


 「すまない……じゃが行けば分かる。ワシらがマナ切れになる前に王女様を頼んだぞ!」


 ルメイヤは更に反撃の意志を強めてライボルグへの魔導をより強く発した。ライボルグも何か焦っているのか先程の余裕そうな表情は一切なくなっていた。


 ククリは雷のマナを足に溜めて全力で駆け抜けると背中に向けた魔法都市はぐんぐんと小さくなっていった。ただの平和な平原に霧がかかってくる。


 「くそっ何も見えないけど真っ直ぐでいいんだよな」


 足元が先程までの草が生えていた感触ではなくなり砂漠の砂にも近い感触がある。そしていつの間にか霧だったものは砂埃へと変化していった。


 前も見えないし何が起きているのか分からないがそれでもククリは全力で駆け抜けていく。しかしいつまで走っても何も起きないし砂埃も消えてくれない。


 『どうなってんだ!何も見えないぞ!』


 指輪にマナを込めて話しても応答が無かった。死んだわけではないだろうと考えると遠隔過ぎるとマナが届きづらいのかもしれない。


 一度立ち止まり周りをよく見てみても砂嵐が起きていて何も見えない。しかしこれだけ激しい砂嵐が起きているのに砂が当たっている感触が全くなかった。


 「これは一体どういう事だ?もしかして真っ直ぐ行けば分かるってこれの事なのか?それとも通り過ぎちまった?引き返さなきゃ……あっ……」


 ククリの足は膝を付いていた。ここに来て今までの疲労が一気に来てしまったのだ。もう丸4日以上も眠っていないのもあってか身体は言う事を聞かなくなっていた。


 「ルナ……」


 ククリは眠りについた。ここがどこかも何が起きるのかも全く分からない危険なこの状況で。だがククリは知らず知らずのうちに【眠れるオアシス】に着いていたのだった。


  目を覚ますと砂嵐は消えていて目の前には海が見えている。そこには釣り竿が1本立っていて釣りをする男とその近くにもう一人男が見える。ククリはゆっくりと起き上がると釣りをする男がこちらを見るが逆光で顔が見えない。


 「っざけんなよ!!!」


 大きな怒声が広がった。声を上げた男こそがロキ・ステルスヴァインだった。剣を向けて釣りをする男に今にも斬りかかりそうになっているがまるで無視してこちらを見ている。


 「ようやく来たか、ククリ」


 太陽が少しだけ雲に差し掛かり釣りをする男の顔が見えてきた。短い黒髪にダサい恰好をしたアロハシャツを着た男。サングラスを上にあげると完全に頭の中で家に飾ってある写真と重なった。


 「爺、さん?」


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