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22. 緊急事態

 この戦争の終着地は何処なのだろうか。


 一都市が全ての国を滅ぼしたら勝ち。魔絶の書を得るか、禁魔目録を多く保有して圧倒的な力を見せつけられれば勝ち。もはや平和を知らないククリにとっては何をゴールと定めていいのかも分からなかった。


 だがそのゴールを王都は見つけていて、ゴールに向かう為の道筋を既に計画として練り込んでいる。その為に騎士があり任務があり、そして隠し事があるとするならば。


 「騎士って一体なんなんだよ……。使い捨ての駒なのか?」


 「深く考えすぎるのも言葉にするのも気を付けろ。全てを悟られて消される可能性もある。もしかすれば今回の任務、ロキ達が味方なのか敵なのか立場は知らぬが何か王都で揺れ動いているのかもしれんな」


 考えうる最悪の展開を考えた所でどのルートにも鍵となるのはルナだった。記憶を抹消して騎士として使い続ける事も出来る、ルナ自身は任務に忠実である事から裏切ったりはしない。そもそも裏切る行為すらどうすればいいか知らないのかもしれない。


 「まだキャッチボールの途中だったが俺はルナの所に行かなきゃならない!悪いなルメイヤ!」


 「待て」


 椅子から立ち上がったルメイヤはマナが回復したのか身体から生気が漲っている。またここで戦闘したとしても【ラース】の殺意を抑えられる事は出来ない。


 「警戒するな。ほれこれを付けろ」


 ルメイヤは指輪を投げつけてきた。ただのリングだがそこにはマナで刻まれた刻印が大量に入っている。付けてみると透明になって見えなくなった。


 『聞こえるかの~~』

 「うわっ!?」


 どういう理屈か全く分からないがルメイヤの声が頭の中に響いている感覚がする。


 『これは通信機じゃ。指輪にマナを込めれば指に現れて通信魔法が発動する魔法道具じゃ。マナを放出しながら頭で念じるだけで話す事ができる。ちなみにこれはワシの友好の証として丁重に取り扱え』


 王都と魔法都市の友好関係ではなくルメイヤ本人との直接的な友好の証。心強い仲間が出来たのかそれともただの情報交換がしたいだけかは分からないがそれでも嬉しかった。


 「えーとマナを込めてっと……『ありがとうルメイヤ』


 「うひゃ!やめろ!囁く様に言うでない!さっさとゆけ!たわけ!」


 プリプリと怒る姿は見た目が少女そのものでとても老婆とは思えない。見た目って大事なんだな。


 「それと、コナミの情報が入ればお主には伝えよう。……爺さんに会えるとよいな」


 『ありがとうルメイヤ』


 「うひゃ!やめろといっておるだろ馬鹿者が!!」


 ククリは笑いながら魔法図書館を後にした。どうやら魔法図書館は城内の地下に作られた施設で図書館の入口には強い結界で仕切られている。これがなければ先程の戦闘で城は消し飛んでいただろう。


 城内を隠れて進むためには浮いて移動は危険過ぎると考えたククリは歩いて進む事にした。しかしチラホラと兵士やメイドが通る程度で人気自体は少なく感じる。


 「入った瞬間やられたしルメイヤが城全体を監視しているなこりゃ。あの強さなら不用心にもなるわ」


 ククリはとにかく城内でルナを探してみたがまるで見つからない。まだ王女様と話している可能性があるかと思ったが大階段を登った時点で扉の前にいる兵士に見つかってしまうだろう。こうなったら。


 『ルメイヤ、ルナがどこにいるのか教えてくれ』


 『すーぐ連絡が来ると思ったわい。どれどれ。ん?なんじゃ、これは。どうなっておる!』


 ルメイヤの声色が少し不安げを残す。


 『どうした?』


 『謁見の間を広く見渡しているが初めに見た時と映像が何も変わっておらん!何か変じゃ!!行くぞククリ!』


 ククリは見つかろうが関係なく大階段を突き進んだ。門の前に立つ男二人と目が合う。


 「なんだ貴様!」「侵入者か!!」

 「それどころじゃねぇんだよ!どけぇ!」


 扉を叩き切ろうと刀を振り上げると男二人はバリアにも近い結界を作り出した。その硬さは鉄壁ではなく触れる事が出来ない魔法となっていた。


 「俺たちのバリアは斥力を使った触れる事が出来ない結界魔法だ。侵入者がいくら強かろうとこの先へは進めんぞ!」


 「侵入者だー!兵士よ、オデ達が王女様を守るど!!」


 ドガアアアアアアアアアン!!!!


 王女の部屋から何か騒ぎが起き始めていた。恐らく先にワープして到着したルメイヤが戦っているのかもしれない。


 「貴様、王女様の部屋で何をしただ!!」


 「それを確認しに行く所だ!さっさと門を開けないと王女様が危ねぇぞ!!」


 男の一人が急いでドアを開くと、ドアノブを握っていた右腕は消し飛んだ。消し飛ぶという表現より散り散りとなり消えたと言った方が正しいかもしれない。


 「ぐおおああああ!!」

 「兄ちゃん!!」


 切り刻まれた箇所は肩まで達して出血が余りにも酷くこれは助かりそうもない。ラースの青い炎なら助かる可能性もあるが、今発動してしまえばルナがいない以上皆殺しになりかねない。


 室内に王女様は既にいない。怒り狂い怒髪天となり髪の毛が逆立っているルメイヤ。そしてこちらを睨むライボルグの姿があった。


 「おいおい僕様が如何にカッコいいからって客人が多すぎるだろ。それに新人騎士が一体何しにここに来た?馬鹿なのかな?」


 「馬鹿はお主じゃ!!死ねぇ!!」


 ルメイヤは魔法を放つも謎の結界に切り刻まれて掻き消されてしまう。マナすらも断ち切る性質を持っているのか。


 「ったく、ロキ君も酷いよね。僕様をいつも囮に使ってさぁ。でもそんなロキ君が素敵だから仕方ないよね。僕様はいつでも間違えないから!!」


 「そんな事はどうでもいい!マリア王女様をどこへやった!!」


 魔導を次々を放ち続けるがライボルグの周囲1メートルの範囲で消し飛ばして消え去っていく。ライボルグは頭をボリボリと搔いている様子を見るに自ら剣で切り裂いているわけではなさそうだ。もしかしたら禁魔目録の使い手の可能性もある。


 「あーあーあーあー。うるさいなぁ、もう。僕様が話しているっていうのにどうしてお前なんかにどうでもいいとか言われなきゃいけないんだ?愚痴を吐いているんだよこっちはさぁ!!」


 ライボルグは苛立ちながらルメイヤを睨んでいた。一方ククリ側は手を切り裂かれて出血多量で死んだ門兵とそれを悲しむもう一人の男の門兵がいた。


 「……オデはこいつの弟でずっとここの警護を任されてきただ。兄ちゃんが死んじまったらオデ、どうすりゃいいだ……」


 「一緒に戦おう。きっと王女様は生きてる」


 ククリの声に立ち上がった兵士は兜と鎧を脱ぎ捨てた。髪の毛を後ろで括った唇がぶ厚い大柄の男がその姿を見せる。


 「オデはカイデ。防壁魔法ならオデに任せてくれだ。あんたは?」


 「俺はククリ。まずは目の前のこいつから情報を聞き出さなきゃな」


 ライボルグはルメイヤを見ているが殺気をこちらにも向けているのをハッキリと感じる。王女様、ルナ、生きていてくれ!!

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