135. 魔王と勇者
勇者エンメイは魔王パーシヴァルに最後のとどめを刺す時、全てを消し去る最強闇魔法【覇魔羅魔眼】を受けてしまい消滅する。その際レイテの最後の力で身体を修復させるが間に合わずエンメイの魂のみが消え去った。
そしてアルテウスによってエンメイの空になった身体にパーシヴァルの消えゆくはずの魂を混ぜてしまう。それが過去幾度と無く繰り返してきた永遠のループ。これを取り除かない限り誰にも未来なんてないのだ。
『雷光』
バチッ
火花を散らす身体に薄く響く雷鳴。それに気付いたパーシヴァルは防御魔法を発動させる。だがコナミの身体から放出するマナは瞬間爆発的に増加した。
『抜刀撃』
ズギャアアアアアアアアア!!!
パーシヴァルの魔法壁を貫きながら繰り出される一撃は音速を超えている。それでもパーシヴァルは魔法壁を壊される前提だったのか剣で受け止めていた。魔法壁があった分少しは緩和されたが今のコナミの力はパーシヴァルが思う想定していた力を遥かに上回っている。
『これが、人間の力なのか……!!馬鹿な!!』
焦るパーシヴァルはマナの温存など考えている場合ではない事に気付き放出する力を増大させる。コナミが圧していたはずの剣の重みはゆっくりと平行線へもつれ込んだ。
『俺のマナルテシスは無限に等しい。この放出力を永遠に維持が可能だ。お前のその出力がどれだけ持つかは知らないがこの鍔迫り合いを見るにどうやら同程度といった所か!!つまり!!』
互いの剣が何度も混じり合い火花を散らす。コナミは攻撃主体、パーシヴァルは防御主体の戦い方のせいかなかなかにお互いにダメージが入る事は無い。
『マナルテシス総量で言えば俺の勝ちだ!時間の問題だぞ、人間!』
『……てめぇ!!』
剣と剣が交わりかけるその瞬間、ウラノスの力でコナミは背後へと回り込んでいた。瞬間移動をした事に気付いたパーシヴァルは一瞬反応速度が遅れたが、剣の持ち手に付いている杖が異様なマナの色を見せる。
その時はコナミが剣を振り下ろし確実に背後を取っていた。しかしパーシヴァルの身体はまるで闇で出来た霧になって消え、その直後コナミの背後で小さく声が聞こえる。
『お前の負けだ人間』
ドスッ
背中から心臓を通って胸から飛び出る剣は容赦なくコナミの身体をそのまま横へ切り裂いた。
『さらばだ、小さき勇者よ』
『え……【英雄】』
発動したレイテの力はコナミの身体を高速で修復して行く。だが痛みが多く伴う上に治ったはずの心臓はバクバクと大きな音を立てて魂が擦り減って行くのを感じた。
『な、なんだその力は!!なぜ身体が!!貴様は一体……!』
『俺はこの世界のプレイヤーなのさ。残機は決まっている様だが何度でもコンティニューは可能だ。もう一回遊べるドンってな』
『何を言ってるんだお前は。コン……ティニュー?再生能力だと……?俺のマナルテシスがいくら無限だとしても再生がある限り終わりはないという事なのか。それはもう神に匹敵する力になるぞ……』
『さぁな。考えてみれば魔王を殺す為に手に入れた力みたいなもんなんだから要するにお前の天敵みたいなもんだ』
会話で時間を繋ぎながら心臓がゆっくりと心音を大人しくさせた。パーシヴァルを討つには英雄の他に瞬間移動、未来視に未来改変のフルパワーを使わないと一撃は与えられないだろう。
だがそれ以上にどのタイミングで覇魔羅魔眼が放たれるのかを常に警戒しなければならない。同じ未来を繰り返さない為に。
『どうやら本当に天敵のようだな。では俺の本気の力を見せる必要がある。全てを掻き消し無へと還る闇の力を見るがいい』
『覇魔羅魔眼……!!』
『ほう、知っているとは驚きだ。知っている方がよりこの力の本当の恐ろしさを実感しているだろう。では行くぞ!!』
闇の煙へと姿を消しパーシヴァルはその場から居なくなった。コナミは急いで未来視を発動させると直後映った映像には背後から切り裂かれてコナミの身体が真っ二つになっている。
『うおおおおお!!!』
背後に剣を出すと本当にパーシヴァルがそこに立っていた。音も気配も殺気すら感じずにこの距離まで近付いてきていたのだ。コナミは剣の重みを受け止めきれずに吹き飛ばされて態勢を崩した
『素晴らしい反応速度だ。まるで未来でも見えているかの様に俺の剣を止めに入るとはな。だがもう遅い!!』
パーシヴァルの頭上に目が現れる。今まで見てきた覇魔羅魔眼より何倍も速度が速い。これは当たる――――!!
『覇魔羅魔眼』
『雷光―――』
覇魔羅魔眼は目線の先全てを消し飛ばしたが、コナミは瞬間移動でパーシヴァルの背後へと回り込み未来視を発動。あれ程のマナを使ったにも関わらずパーシヴァルはまたしても闇の煙に紛れて攻撃は当たっていない未来が見えた。続いてコナミは未来改変の力を発動させる。
『抜刀撃!!!!』
『なっ!!』
ズギャアアアアアアアアア
闇の煙で逃げる間もなくパーシヴァルへと命中した雷光抜刀撃は確かな傷を負わせた。マントと鎧を切り裂いたがその双方に十分なマナの防御壁が付いている。更には肉体へもマナによる強化を行っていたせいかダメージは大きくは無かった。
『がはっ……!』
初めに膝を付いたのはコナミだった。眩暈と頭痛、吐き気が一気に襲い掛かる。爆発的に発動したマナが足りなくなってきた上に魂が大きく擦り減っている。たった数分にも満たない戦いでこれ程までに疲労してしまっていた。
『は、ハハハ!俺に傷を負わせるなど、数十年ぶりではないかな。雷獣バリストン以来ではないか、フフフハハハ!久しく忘れていたが戦いとはこうでなくてはな、勇者よ!!』
マントを引き千切りながらパーシヴァルは大声で笑っていた。心臓を抑えながら息を整えるがマナ不足で意識が朦朧としている。
「どうすりゃいい。どうすりゃいいんだ畜生……」
倒す為には秘剣・神龍閃を当てる必要があるがそんなマナを貯めている隙を奴は与えてくれないだろう。仮に当てたとしてもそれで意識を失えば覇魔羅魔眼を食らって未来は変わらない可能性の方が大きい。だからこその雷光抜刀撃だったがマナのガードが固すぎて大したダメージにはならない。
闇の煙に隠れられた場合未来視で見ないと次の瞬間には死んでいる。受け止めたとしても覇魔羅魔眼を使われて瞬間移動で背後に回っても闇の煙で避けられる。
「待て。なんでパーシヴァルは瞬間移動を察知できる」
2度目以降ならまだしも初めて見せた瞬間移動の先がバレる事なんてあり得るのだろうか。それはない。なら何故パーシヴァルは気付いたんだろうか。
『ククク、どうした疲れているのか?面白くなってきたというのにもうお終いなのか?フハハもう一度行くぞ!!』
考えろ。今までのアークフィリアで生きてきた全ての魔法を思い出すんだ。メサイア、俺に力を貸してくれ―――!!
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シガレット一向が旅をする中で一度たりとも突如とした襲撃に合う事はなかった。イレイザーが寝込みを襲ってきたとしても全てメサイアが祓ってしまうからだ。
「メサイアが仲間にいてくれて助かってるよホント。じゃなきゃ俺達もう魔物どもの腹の中だぜ」
「フィルスは寝過ぎなのよ。いっつも魔物みたいな声していびきかいてるし」
焚火を囲いながらフィルスとイヴは笑いながら話している中、メサイアは少し嬉しそうな顔をして照れていた。
「これは結界か何かなのですか?魔法による探知とか」
「ちょっと違う……けど、半分正解……。私の周りで……常に働くセンサーを……より大きくしたもの……。中に入った者は……肌に触れられる様に……全て分かる……」
「すげぇじゃん!でも急速な魔法とか飛んで来たらどう対処するんだ?」
「この結界内に対して……殺気のある者が近付けば……自動撃退魔法が発動する……。魔法も攻撃とみなす……」
おおー!と歓声が上がるとメサイアは照れすぎて体育座りの中に顔を埋めてしまった。
イレイザーがこの魔法結界に入ろうものならすかさずメサイアの撃退魔法が飛んでくる仕組みには驚いた。だから夜中の森で平気な顔して焚火をして飲んで騒いでしていても敵は来ない。
「仮に敵が同じものを使ってたとしてメサイアがこの結界を破って敵を攻撃しようとするならどうやって戦うんだ?最強過ぎて思いつかないぜ」
「この結界も……万能ではない……。自動迎撃魔法で止められない攻撃……空間を切り取っての攻撃……あとは殺気がない敵が……侵入した時とか……」
「殺気が無いのに敵ですか。それじゃあ透明人間か何かになりますよ」
「実は……殺気は、簡単に消せる魔法がある……」
「そんな魔法が。そんなもん背後に回られたらお終いだわ。何か対処法はあるの?」
「姿も殺気も消された時は……光で照らせば影は見える……。瞬間移動の魔法はないから……見えなくなったら……影を追えばいい……視認できない……だけだから……」
※※※※※※※※※※※※※※
闇の煙に消えたパーシヴァルだがこの空間は小さな月明かりが入ってくる程度の暗い空間。この中で影を探す事は出来ない。だがもうコナミには魔王パーシヴァルを倒す作戦を思いついていた。
「ありがとうメサイア。必ず助けてやるからな」
コナミは光のマナを急速に集めた。まばゆい光は部屋全体を明るく照らし始めると黒い影がこちらへ向かっているのが見て取れる。
光のマナに気付いた魔王の影は立ち止まり警戒していた。攻略法である影に気付いているのか、それとも攻撃を仕掛けたと同時に光のマナで反撃に転じる為なのかと。
どの道パーシヴァルは消えて無くなったのではなく、見えなくなってしまっただけなのだ。そこに必ずいるのは間違いない。この秘剣・神龍閃をぶち込んで未来視と改変の力を使って覇魔羅魔眼を避ければ必ず勝てる。
そう、思っていた。




