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124. 因縁との決着

 不意打ちで放った雷光抜刀撃だったがボロボロのウロボロスにはかなりのダメージを与えた。よろめきながら立ち上がるウロボロスとコナミは静かに対峙し合う中、アイリは一緒に戦おうと前に出てくるがコナミは振り払った。


 「アイツは俺を孤高にさせようと仲間を殺すのが目的だ。だからアイリは出来るなら逃げてくれ、頼む」


 「でも今のウロボロスなら一緒なら絶対勝てるデスよ……」


 ウロボロスが望む計画の全てを理解したと思っているだけでまだ裏があるかもしれない。だがアイリを殺そうとしている事だけは間違いないだろう。スイレンに挑発した事、踏み付けにしてアイリを(けしか)けた事。行動の全てがコナミ以外を殺す事に繋がってくる。


 アイリの言う通り一緒に戦えば勝てるかもしれない。それでもまだこの瀕死のウロボロスから溢れ出る不気味な悪い予感を拭い去る事が出来なかった。


 「これ以上誰にも死んでほしくないんだ!!アイリ、お前が死んだら……俺にはもう何も残らない!!」


 「そんなのワタシだって同じデスよ。コナミさんが死んだら何も残らないデス……」


 泣き出しそうなアイリの頭を撫でて「頼む」とだけ言った。アイリはコナミにとって最後の砦だ。アークフィリアで生きてきた証とでも言える存在。アイリは少し離れた位置で見守った。


 「別れの挨拶はもういいのか?」


 「聞かせろ。お前の目的は次元時空とウラノスの能力を使って新世界を築く事だろうがお断りだ。俺はアイリとこの世界を生きる。仲間の死を乗り越えてでも俺はこの世界で生きるんだ!!」


 「それは不可能だ。神の存在がこの世にまだ存在する以上、お前は必ず同じ過ちを繰り返し同じ運命の道を辿る。繰り返される絶望を断ち切るにはコナミを孤独にし孤高にしなければならないんだ!」


 突っ込んできたウロボロスとコナミの剣が交わるが明らかにウロボロスの剣にキレが無くなっているのを感じた。【英雄】の能力を使っているコナミと現在のボロボロのウロボロスでは力の差がある事は歴然だ。


 「守る者がある方が強いんだぜウロボロス!」


 「いいや、お前は孤高となり世界を変える為の理由が必要なんだ!」


 剣撃や手数はコナミが優勢。なのにウロボロスのこの意思の強さがどうしても超えられない壁を作り出していた。優勢なはずなのに圧倒的な気迫に心が押し負けていたのだ。


 「世界を元に戻す必要がある!私は全てを理解したが故にこの世界を終わらせる必要がある!だが私にはそれが叶わぬのだ」


 「この世界は間違っちゃいない!」


 ガギィン!!


 ウロボロスの攻撃を弾き返すとコナミは勢いに乗せたままウロボロスの身体ごと弾き飛ばした。それでも立ち上がるウロボロスは剣を持ち、戦う意思を見せる。コナミは雷光抜刀撃を繰り出すがそれさえも受け止め反撃を繰り出す。この力は一体どこから湧いてくるんだ。


 「闇の使者は生きてはいけない存在だ。この世にあってはならない存在。私もアイリッシュも同義だ。それをこの世界から全て消し去る必要がある。そうすれば世界は元に戻るんだ。それを可能に出来るのは私とお前なんだ!コナミ!」


 「闇の使者は確かにこの世界じゃ異質だ。ウラノスもこの世界から闇の使者を無くす為に動いていた。だけどもうアイリと一緒にこの世界で生きていたいって決めたんだよ俺は!!アイリだけは失いたくはないんだ!!」


 コナミの剣を受け止める度にウロボロスの身体中から血が吹き飛ぶ。もう、もう終わりにしよう。


 「ウロボロォォォォス!!」


 「お前は世界を取り戻す【英雄】になるはずなんだコナミ!!この世界は間違っている!私という存在が!!間違っているんだ!!」


 「だったら今その間違いを終わらせてやる!!」


 ウロボロスの剣を持っていた腕をついにはじき返した。その時に見たウロボロスの顔は絶望した表情を見せている。これでいいんだ。これで――――!!!


 「私、は―――――!!」


 「終わりだああああ!!!雷光抜刀撃!!!」


 ズギャアアアアアアアアアアアアア!!!!


 雷が横に落ちる様に放たれた一撃はウロボロスの身体を半分に切り裂いた。マナを使い過ぎたせいかコナミは息切れを起こして膝を付いた。


 終わった。全ての戦いが終わった。


 ウロボロスの魂を仮に回収できたとしてもウラノスがそれを阻止してくれるだろう。シャックスなら確実にコナミの体力を削りに来て身体を奪いに来るはずだ。とにかく急いで息を整える必要がある。


 大きく深呼吸するがどうにも心臓の鼓動が早い。能力を酷使したせいなのだろうか、それともシャックスの事が気になっているせいなのか、どうにも落ち着かないからだろうか。その答えは今のコナミには分からなかった。


 その時声が聞こえた。


 『コナミくん!!今すぐ逃げるんだ!!どこか遠くに!!』

 どこか遠くでレイテが叫んでいる声が聞こえる。


 『早く!!逃げ、これは全て計画……ガボッ!!』

 「レイテ!?どうしたレイテ!!」


 急に糸が切れた様に声が聞こえなくなった途端、コナミの頭が割れる様に痛み始める。心臓も大きく鼓動が鳴り始め、締め付ける様な痛みが襲い掛かる。


 「カハッ……一体何が、これは―――――!!」


 『お前の魂、もらった!!!』


 「シャック―――――――」


※※※※※※※※※※※※



 『全ては完成に向かう』

 遠ざかる意識の奥底でウラノスの声が遠くで聞こえる。



※※※※※※※※※※※※



 『ウラノスは全ての清算の為にここにいる。悪いなコナミ』

 クロノスの声もどこかで聞こえた気がした。



※※※※※※※※※※※※



 『さあ、始めよう。開闢の時だ』



※※※パチン!!※※※※



 ウラノスが指を弾くと閉じていた目が開くが、燃える火が激しく先程までいた場所とは明らかに違っていた。頭も痛い、吐き気もする。


 何が起きているかも分からない状況だったが、意識が緩やかに取り戻し始めると剣を握っている事が分かってきた。だが重い。


 何かを――――突き刺しているような―――。


 「え?」


 コナミの剣はアイリの心臓を貫いていた。


 小さな身体から溢れんばかりの血が滴り落ちている。生命としての活動が完全に止まってしまった後だとハッキリ分かるくらいにアイリの身体はだらりと動かなかった。


 「ああ……!!ああああ……!!!嘘だ。噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ嘘だ噓だああああ!!そんな……嫌だ。頼む、アイリ!!!目覚めてくれ。俺を独りにしないでくれ。はぁはぁ……頼むアイリ。くそっ、嫌だ」


 ザッザッ。


 少し離れた所から歩いてきたのはシャックスだった。


 「よお、コナミ。このくだらない戦いもそろそろ終わりにしよう」


 その時コナミの殺意は限界を超えて無に還る。

 全ての仲間を失ったコナミは孤独であり孤高としての完璧な【英雄】が完成した。

 全ては神の意志のままに。

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